自分ばっかり責めるんじゃないよ

もし混合ジャンプで、日本がカナダを逆転して3位に入ったりしたら、カナダチームとしても驚愕だったでしょう。
「ええい、連邦軍モビルスーツは化け物か!」(by シャア・アズナブル)みたいな感じで。(わからない方、スルーしてください。)

 

さて、世の中には運不運、理不尽と思えるようなことは山ほどあります。
北京冬季五輪の日本選手に限定しても、
フィギュアスケート羽生結弦選手が氷上の穴で4回転ジャンプがすっぽ抜けたり、
スピードスケート1500mの高木菜那選手が優先(アウトコースからインに入る側)だったのに同走の中国選手が譲らなかったり、
逆に高木美帆選手は同走の選手が先行する(風除けになる)はずの箇所で美帆さんより遅かったがために美帆さんが風抵抗を受ける羽目になったり、
スノーボードパラレル大回転の竹内智香選手は納得できない「途中棄権」判定で敗退したり・・・

 

中でも、スキーのジャンプ競技は、仮に人為的なトラブル要因がなかったとしても、ウインドファクターにより運不運が生じやすい性質をもっています。
それを補うために、有利な向かい風ならマイナス、不利な追い風ならプラスの風補正がありますが、たとえば前記事の表を見ても、それだけでは補正しきれない(やっぱり向かい風の有利さは残る)印象が強いです。

だから、そのシーズンを通したポイント制でチャンピオンを決めるワールドカップの方が合理的、という考え方もあります。
まあ、競技にもよりますが、世界選手権の方がオリンピックよりも実質的に重視される場合はけっこうありますし、日本ほどはオリンピックが特別視されていない国もあります。

とはいえ、日本人である高梨沙羅さんがオリンピックを、特にメダルを重視するのもわかるのですが・・・

 

高梨沙羅・主な戦績(個人戦のみ)】
2011世界選手権NH6位
W杯2011-12総合2位
W杯2012-13総合1位、2013世界選手権NH2位
W杯2013-14総合1位、2014ソチ五輪NH4位
W杯2014-15総合2位、2015世界選手権NH4位
W杯2015-16総合1位
W杯2016-17総合1位、2017世界選手権NH3位
W杯2017-18総合3位、2018平昌五輪3位
2019世界選手権NH6位
W杯2020-21総合2位、2021世界選手権NH3位、2021世界選手権LH2位
2022北京五輪NH4位
(W杯:ワールドカップ  NH:ノーマルヒル  LHラージヒル

10年以上世界で戦い、その多くの期間でナンバーワンか、それを争い得る位置にいるというのは、本当にすごいことです。
たしかに、オリンピックや世界選手権での金メダルにはめぐり合っていませんが、デビューが早かったこともあり、まだ25歳。

 

【主なライバルと個人成績】(敬称略)
〇サラ・ヘンドリクソン(米):2013世界選手権NH金、2011-12W杯総合1位 他
 高梨より2歳上、2013年以降ケガもあり、2021年引退
〇カリーナ・フォークト(独):2014ソチ五輪NH金、2015・2017世界選手権NH1位、2013-14W杯総合2位 他
 高梨より4歳(5学年)上、2019年のケガ以降ふるわず
〇マーレン・ルンビ(ノルウェー):2018平昌五輪NH金、2019NH・2021LH世界選手権金、2017-18~2019-20W杯総合1位 他
 高梨より2歳上、減量に悩み北京五輪不参加との情報あり
〇カタリナ・アルトハウス(独):2018平昌五輪NH銀、2022北京五輪NH銀、2019世界選手権NH2位、2017-18~2018-19W杯総合2位
 高梨と同年齢、今回の「失格仲間」
〇マリタ・クラマー(オーストリア(オランダ生まれ)):2021-22W杯総合1位(たぶん今のところ)
 高梨より5歳下、新型コロナで北京五輪欠場

今季最強の感があるスロベニア勢も北京五輪で活躍しましたが省略。

 

このライバルたちは、もちろん立派な成績ですが、彼女たちよりも高梨選手の方が運や栄光に恵まれていない、とは私には思えません。

 

それから。
もし、失格になったのが、高梨選手ではなく他のメンバーだったとしたら、高梨選手はその人をけっして責めたりしないでしょう。
(そもそも、今回の件では失格になった選手を責める必要はありませんが・・・おそらく4チームとも。)
だから、自分自身も責める必要はないと思います。
他罰的ではなく自罰的、自省的だからこそ努力し続けて、ここまでの活躍があったのかもしれませんが。

 

いろいろあって大変だったけど、胸を張って帰っておいで、沙羅ちゃん。