別姓の家族の例

選択別姓制度に対する反対意見の中で、「家族としての一体感がなくなる」とか「家族の秩序が維持できない」というものがあります。

 

実は、現在の日本でも、同居家族の中に複数の姓がある(別姓の家族がいる)例はあります。

 

以下の図では、実線囲みの黄色が子から見た同姓家族、点線囲みの水色が別姓家族を表しています。

図1は、夫の姓を名乗ることにした夫婦と、妻の両親が同居している例です。「サザエさん」「コボちゃん」などの連載マンガで見られますが、別姓の祖父母と子(祖父母から見た孫)との微笑ましい関係は、読者から見ても特に違和感はありません。実際、このケースで「別姓のせいで一体感がない」というケースは考えにくいところでしょう。

 

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図2は、夫と死別、又は離別した後、母子が妻の実家で同居した例です。妻は前夫の姓を名乗ったままですが、これまた特に違和感がない、一体型の5人家族といってよいでしょう。

 

図3は、災害や事故等で夫婦とも死亡し、妻の両親が子を引き取った例です。妻の両親と子とが養子縁組をすれば同姓にはなれますが、そこまでしなくても、祖父母と子どもたちでひとつの家族として生きていけるでしょう。子どもたちのメンタルケアとか祖父母の健康維持などの課題はありますが。

 

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図4は、離婚後、妻が親権をもち、子2人と生活している例です。ただし、妻は婚姻前の姓に復し、子2人は学校等の関係もあって前夫(父)の姓を名乗り続けています。こういうケースはけっこうありますが、親子が別姓だから家族の一体感に問題が生じる、というわけではありません(状況により経済上の問題などが生じる可能性はありますが)。

 

図5は、日本人女性が外国籍の男性と結婚した例です。男性が帰化するなど同姓にもっていく手段はありますが、そういう手続きをしない場合は、別姓になるのが原則です。出生地主義の国で出産した場合は国籍留保など手続きが必要な場合がありますが、日本国内で生活している場合は図5のような形が多いと思われます。このケースで、もしも家族の一体感や秩序に問題が生じたとしても、それは別姓のせいではなく、文化その他の違いが原因になるものと推測されます。

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図6は、夫婦同姓を強要されることを拒否して、事実婚をしている例です。国際結婚なら図5のように別姓を選択できるのに、日本人同士なら選択できないのは法の下の平等に反する、という主張もあるようですが、それは置いといて・・・こういう事実婚の家族では父(内縁の夫)だけが姓が異なる、ということになりますが、もともと夫婦に信念がある、というか、子どもたちにも理解力に応じて説明を行っているためか、「別姓であるがゆえに家族としての一体感に問題がある」というケースはなさそうです。事実婚であるがために法律上の保護を受けない(相続等)という問題は、もちろんありますが。

 

以上、6例から見れば、別姓のために(同姓でないがために)家族の一体感などに問題が生じるという主張は無理があるように、私は思います。