「同姓は合憲」判決・雑感

こちらの記事で紹介した「夫婦同姓は合憲」判決について。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/34409446.html

現時点で思うことを書いてみます。なお、便宜上、番号を付けましたが、重要な順というわけではありません。

1 多数意見が「合憲」となったこと


ある程度、予想はしていました。

民法の規定は、夫婦がどちらの名字にするか当事者の話し合いに委ねていて、性別に基づく差別的な取り扱いを定めているわけではなく、規定自体に不平等があるわけではない」
ということで、形式的には差別がないということで。

また、「アイデンティティーの喪失感」というような、やや抽象的な損害よりも、むしろ、「職場やその関係先が旧姓使用を認めない」とか、「国家資格などが事実上使用できなくなった」というような具体的損害の方が勝訴の確率が高くなったかもしれません。

2 裁判官の3分の1が違憲と判断したこと


15名の裁判官の判断が分かれることは予想どおりです。
国民の意識が分かれるような問題では、たとえば「婚外子相続格差の違憲判断」が全員一致だったことよりも、ある意味、健全な印象です。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32411456.html

ただ、先の記事にも書きましたが、女性裁判官が全員「違憲」としたことについては、私を含めた世の男性は、重く受け止めるべきとは思います。

3 政界の反応


誤解を恐れず、大まかにいえば、公明党とそれより左側に位置するのではないかと思われる政党は、選択別姓に積極的、あるいは好意的のようです。

自民党の中でも、
「合憲だからこれでいいというのではない。抜本的に議論すべきだ」との声が出た(17日の党法務部会)※
とのことで、こういう意見が出るところは、好感が持てます。
ただ、「親子別姓になる。家族制度を守るためにも別姓導入に反対だ」「夫婦別姓は家族制度の崩壊につながるという心配がある」※という意見も、やはり根強いようです。

※印は、以下の記事より。
夫婦別姓」機運乏しく=議論国会へ、自民は慎重(時事ドットコム 2015/12/19-14:37)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2015121900168

なお、別姓が家族制度の崩壊に云々という意見については、別記事で扱う予定です。


4 マイノリティの問題として


各種アンケートなどを見ると、夫婦選択別姓を容認してもよいという意見は、国民の中でも増えてきてはいるようです。
一方、自分自身が別姓を選択するか、というと、同姓を選択する、という回答が多いようです。
別姓を選択しようとする人は、少数派(マイノリティ)なのでしょう、少なくとも現時点では。
ですが、それは選択別姓制度を設ける意味がない、ということを意味しません。
「夫婦同姓」か「夫婦別姓」か、という制度選択なら、多数意見が勝ってもおかしくありませんが、ことは「選択別姓」ですから。

生物としてはマイノリティである同性愛、あるいはLGBTでも、(少なくともある程度は)許容されようとしている時代です。
それなのに、(異性愛の)夫婦別姓が許容されないのは、バランスが悪いように思います。

5 今後どうするか


いずれにせよ、国会で議論することについては、各党とも全面的には反対しにくいのではないかと思います。
ただ、現実的には、自民党党議拘束を外さない限りは、次期国会で民法を改正して選択別姓を実現することは難しいのではないでしょうか。

それで、選択別姓については議論を継続しながら、当面、旧姓の通称使用を大幅に拡大する、という選択肢もあるように思います。
仮に選択別姓制度が実現したとしても、同姓を選択して改姓した人(たぶん女性が多数)の不利益は解消しないのですから。
具体的には、職場での旧姓使用容認の法制化、国家資格などでの旧姓使用の全面的容認などが考えられます。
それがすぐにできないのなら、少なくとも、看護師免許などの改姓届出時の手数料をただちに無料にすべきです。