五輪放送で感染者が減少?

様々な仮説ある感染者急減の要因「2回接種が大きな役割」…[検証コロナ 第5波の教訓]<3>
読売新聞 2021/10/09 07:30

「夏休みや東京五輪パラリンピックで、(首都圏から)他の地域に感染を拡大させる懸念がある」

 第5波の入り口に差しかかった7月7日。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、衆院厚生労働委員会で、強い危機感を示した。

 尾身会長らは6月半ばに発表した提言でも、感染力の強いデルタ株が広がる中、五輪に伴う人出の増加が感染爆発につながりかねないと訴えた。8月4日の厚生労働省助言機関会合で、この状況が続けば、8月中旬には東京の新規感染者数が1万1000人を超えるとの試算も示された。


 だが、蓋を開ければ様相は異なった。

 東京の新規感染者数は、8月13日に過去最多の5773人を記録したが、これをピークに急激な減少を見せた。

 減少の兆候は、振り返ってみれば、既に開会式前にあった。1人が何人にうつすかを示す「実効再生産数」は、五輪の開会式2日前にあたる7月21日の「1・4」をピークに減少した。8月中旬には「1」を下回り、新規感染者数の減少を裏付けた。

 なぜ、急激に減少したのか。専門家は、要因として〈1〉夜間の人出が減少〈2〉マスク着用など感染対策が定着〈3〉医療逼迫などの情報で感染リスクが高い行動を回避――などを挙げたが、いずれも仮説にとどまる。

 ただ、「ワクチン接種の進展が、大きな役割を果たしたことは間違いない」と、国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は強調する。

 ワクチンの2回接種を終えたのは、五輪前の7月20日時点では人口の24・6%だったが、2か月半で約2・5倍に増加。10月7日時点で63・1%に達した。特に、先行して接種した65歳以上では、顕著な効果がみられた。7月末までに8割が2回接種を済ませており、7~8月だけで新規感染者を10万人以上、死者を8000人以上抑制した可能性があるとの国の試算もある。
(以下略)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211008-OYT1T50365/

 


この先、ネット上では一般公開されていない記事(紙面では当然読める)もありますが、その部分を含めて、「普通に考えれば予想できる仮説」が扱われていません。
その「普通に考えれば予想できる仮説」とは、
「オリンピックの放送を見るために人出が減少した」
です。

読売の記事中にある「東京都の実効再生産数と新規感染者数」の図を加工してみました。
青色の文字の部分が私の書き込みです。
(読売新聞の図自体が国立感染所の資料を基に作成されていますが、私は読売新聞の記事についての批評も目的としていますし、著作権法上、問題のない加工と考えています。なお、著作権法上の取扱いに限らず、本ブログに対する読売側からの意見等は歓迎です。)

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つまり、7月21日というのは、東京五輪ソフトボール予選が始まった日で、この日の日本チームは対豪州戦でした。
翌22日は、ソフトボール(対メキシコ戦)のほかに、男子サッカー予選の南アフリカ戦もありました。
幸いにして、これら3試合はいずれも日本の勝利。録画、ハイライトなどを含めて、相当の時間、テレビを占拠しました。

 

読売記事中の、

〈2〉マスク着用など感染対策が定着
〈3〉医療逼迫などの情報で感染リスクが高い行動を回避

のみでは、図のように7月21日を頂点として鋭角に実効再生産数が減少に転じていることが説明できません。
「ワクチン接種の進展」も、大きな役割を果たしたのは記事のとおりと思いますが、それだけでは、やはり鋭角状の減少にはならず、緩やかなカーブになるのではないでしょうか。


〈1〉夜間の人出が減少
これも有力ですが、ではなぜ夜間の人出が減少したか、という理由が読売記事では不明確です。
この五輪開会直前の(というより、実質的に始まっている)時期にのみ存在している要因としては、「オリンピックを家のテレビで見よう」ということしか私には考えられません。

 

もちろん、これも仮説です。


しかし、この素人でも思いつきそうな仮説を、読売新聞の記者などのスタッフが思いつかなかったのは、開会式前に競技が開始にされていることを失念したか、「五輪開催が感染を広げるおそれがある」という先入観があったか、デスクなど上司が(固定観念で)ブレーキをかけたか、どうしてなのでしょうね。