世銀、中国の順位を不正に上げたか

世銀、事業環境報告の発刊停止 中国の順位巡り上層部が圧力
ロイター 9/17(金) 3:28配信

[ワシントン 16日 ロイター] - 世界銀行は16日、ビジネス環境の国別ランキングを示し注目度の高い年次報告書「ビジネス環境の現状(Doing Business)」の発刊を取りやめると発表した。2017年発行の報告書で、当時のゲオルギエワ最高経営責任者(CEO)ら上層部が中国のランクを引き上げるよう職員に「不当な圧力」をかけていたことが外部調査で判明した。

調査は世銀倫理委員会の委託で法律事務所ウィルマーヘイルが実施。世銀での中国の影響力や、現国際通貨基金IMF)専務理事のゲオルギエワ氏および当時世銀総裁だったジム・ヨン・キム氏らの判断に懸念を生じさせる結果となった。

世銀は声明を発表し、内部監査と外部調査で「元理事や現・元職員の行動に倫理的問題」が指摘されたため、今回の決定に至ったとした。

ゲオルギエワ氏は、調査結果と解釈に根本的に同意できないと反論し、IMF理事会に説明を行ったことを明らかにした。

世銀とIMFへの出資を管理する米財務省は、調査報告書で指摘された「重大な結果」について分析していると述べた。

報告書では、当時のキム総裁の周辺から中国のスコアを上げるために報告書の方法を変更するよう「直接的および間接的な圧力」があり、これはキム氏の指示によるものだった可能性が高いと指摘した。

キム氏はコメントの要請に応じていない。

報告書によると、ゲオルギエワ氏らからも、中国のデータに具体的な変更を加えてランキングを上げるよう圧力がかかったという。

これは、世銀が中国に対し大規模な増資への支援を求めていた時期と重なる。

17年10月に発行された年次報告書における中国の順位は、データ手法の変更後、草稿に比べて7位上昇し78位となっていた。

報告書では、世銀幹部が当時、予想より低い順位に対する中国の失望と大規模な増資を巡る交渉に奔走していたと指摘。

ゲオルギエワ氏はウィルマーヘイルの調査担当者に対し、「多国間主義が懸かっていた。目標を達成できなければ世銀は深刻な問題に陥っていた」と説明したという。

世銀は18年に130億ドルの増資を発表。増資後、国際復興開発銀行(IBRD)における中国の投票権は4.68%から6.01%に上昇した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bff2ac3edb50ce6706994f1115c9eeb63c3c2cfd

 


ゲオルギエワ氏は「自白を拒んでいる」状況ではありますが、中国のWHOなど国際機関への「影響力の行使の仕方」からすると、事実であってもおかしくはないな、というのが私の印象です。

ところで、世界銀行の当時の総裁・キム氏は、任期途中の2019年に突然辞任しています。

 


キム世銀総裁が辞任 2期目途中、米政権と確執か
日経新聞 2019年1月8日 3:00

【ワシントン=河浪武史】世界銀行は7日、キム総裁が2月1日付で辞任すると発表した。キム氏は2016年に再選され、2期目の任期が22年まで3年間残っていた。世銀は18年4月に8年ぶりの増資を決めるなど、キム体制下で財務体質の改善に力を入れていた。次期総裁の人選にはトランプ米政権の意向が色濃く反映されることになり、中国向け融資の扱いなどが再び焦点となる。

キム氏の辞任後は、ブルガリア出身のクリスタリナ・ゲオルギエワ最高経営責任者(CEO)が暫定的に総裁職を代行する。次期総裁の選任時期などは未定だ。キム氏は7日に「貧困対策などに従事する世銀総裁職を務めたことは、大変光栄なことだった」などとする声明を発表した。

キム氏は韓国生まれの米国人で、12年にオバマ米前政権が世銀に送り込んだ。世界最大の国際金融機関である世銀は、伝統的に最大出資国の米国が総裁ポストを独占している。キム氏はトランプ政権が発足する前の16年秋に続投が決まり、17年7月から5年の任期で2期目の総裁職を務めていた。

キム氏の突然の辞任は、トランプ政権との確執が要因との見方がある。世銀は18年4月に増資を決めたものの、米財務当局が増資の条件として対中融資の大幅縮小を要求した。キム氏は中国の出資比率を引き上げる一方で、対中案件を縮小する融資ルールの改善を約束し、ぎりぎりで増資を取りまとめた経緯がある。

ただ、世銀は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)と協調融資を手掛けるなど、資金の安定運用で中国との連携が欠かせないとの立場だ。最大出資国として国際機関へ影響力を行使したいトランプ政権との溝は深まっており、キム氏の任期途中での辞任につながったとみられる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39738970Y9A100C1000000/

 


当時、辞任理由が明確ではなかったので、トランプ政権との確執を疑う見方があったのですが、今回明らかになったランキング不正(の疑い)が関係したということが十分に考えられるところです。