予防給付の回数の根拠(その2)~予防通所サービス

では、予防通所サービスについてです。

こちらも、まず報酬告示から。
(ここでは予防通所介護について見ていきますが、この定額制については通所リハビリも同じ考え方で制度構築されています。)

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6 介護予防通所介護費(1月につき)
 イ 介護予防通所介護
 (1)要支援1 2,226単位
 (2)要支援2 4,353単位

注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た指定介護予防通所介護事業所(指定介護予防サービス基準第97条第1項に規定する指定介護予防通所介護事業所をいう。以下同じ。)において、指定介護予防通所介護(指定介護予防サービス基準第96条に規定する指定介護予防通所介護をいう。以下同じ。)を行った場合に、利用者の要支援状態区分に応じて、それぞれ所定単位数を算定する。(以下略)
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予防訪問介護と異なり、報酬は要支援度で区分されています。
ですが、要支援度によりサービス提供回数を決定するよう規定されているわけではありません。

ただ、予防訪問介護のように、留意事項通知の中でサービス提供の頻度を決定する方法が示されているわけでもありません。

手がかりは、運営基準にあります。
(平成18年厚生労働省令第35号「指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準」)

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(指定介護予防通所介護の具体的取扱方針)
第109条 指定介護予防通所介護の方針は、第96条に規定する基本方針及び前条に規定する基本取扱方針に基づき、次に掲げるところによるものとする。
 一 指定介護予防通所介護の提供に当たっては、主治の医師又は歯科医師からの情報伝達やサービス担当者会議を通じる等の適切な方法により、利用者の心身の状況、その置かれている環境等利用者の日常生活全般の状況の的確な把握を行うものとする。
 二 指定介護予防通所介護事業所の管理者は、前号に規定する利用者の日常生活全般の状況及び希望を踏まえて、指定介護予防通所介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容、サービスの提供を行う期間等を記載した介護予防通所介護計画を作成するものとする。
(以下略)
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予防通所介護事業所の管理者は、利用者の状況及び希望を踏まえて、介護予防通所介護計画を作成する
わけですが、その計画には、予防通所介護の目標に加え、目標を達成するための
具体的なサービスの内容、サービスの提供を行う期間等
を記載しなければなりません。

さらに、基準の解釈通知を見ていきます。
(平成11年老企第25号「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」)

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第4 介護予防サービス
6 介護予防通所介護
(2)指定介護予防通所介護の具体的取扱方針
 ①予防基準第109条第1号及び第2号は、管理者は、介護予防通所介護計画を作成しなければならないこととしたものである。介護予防通所介護計画の作成に当たっては、主治医又は主治の歯科医師からの情報伝達やサービス担当者会議を通じる等の適切な方法により、利用者の状況を把握・分析し、介護予防通所介護の提供によって解決すべき問題状況を明らかにし(アセスメント)、これに基づき、支援の方向性や目標を明確にし、提供するサービスの具体的内容、所要時間、日程等を明らかにするものとする。
(以下略)
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主治医等からの情報伝達、サービス担当者会議等の適切な方法により、
利用者の状況を把握・分析し、
問題状況を明らかにし、
これに基づき、支援の方向性や目標を明確にし、
サービスの具体的内容、所要時間、日程等を明らかにする
わけです。

よって、要支援度により一律機械的に通所回数を決定するのではありません。

なお、平成18年4月改定関係Q&A Vol.1では、次のような見解が示されています。

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Q:介護予防通所系サービスを受けるに当たって、利用回数、利用時間の限度や標準利用回数は定められるのか。
A:地域包括支援センターが利用者の心身の状況、その置かれている環境、希望等を勘案して行う介護予防ケアマネジメントを踏まえ、事業者と利用者の契約により、適切な利用回数、利用時間の設定が行われるものと考えており、国において一律に上限や標準利用回数を定めることは考えていない。
 なお、現行の利用実態や介護予防に関する研究班マニュアル等を踏まえると、要支援1については週1回程度、要支援2については週2回程度の利用が想定されることも、一つの参考となるのではないかと考える。
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回答の前段は、これまで見てきた基準等の考え方に沿うものです。
ですが、後段の「なお書き」以降はどうでしょうか?
「一つの参考となるのではないか」と書かれていることが、まるで法令で規定されたルールであるかのように解釈されている場合があります。

これは、直接的には、渋谷区のような(報道で見る限りは)日本語を正確に読む力のない関係者(自治体もサービス提供現場も)の責任ではあるでしょうが、少なからぬ地域で同様の傾向があるとすれば、誤解釈が生じやすいような見解を発した厚生労働省も、当然責任は免れないところだと思います。

給付総額が抑えられさえすれば、本来サービスが必要な人間が、自治体等の誤解釈によって多少(ではなくても)影響を受けてもやむを得ない

と国が考えているのなら別ですが、そうでないのなら、渋谷区のような自治体を適切に指導すべきでしょう。
(もちろん、根本的には、この怪しげな予防給付制度自体を見直すべきなのはいうまでもありませんが。)

もっとも、渋谷区などの自治体にしても、

主治医等からの情報伝達、サービス担当者会議等の適切な方法により、
利用者の状況を把握・分析し、
問題状況を明らかにし、
これに基づき、支援の方向性や目標を明確にし、
サービスの具体的内容、所要時間、日程等を明らかにする
というのはタテマエとして理解しているが、事業者のレベルではそこまで行うことは無理なので、現実に必要なサービスが確保されるよう独自事業を行う
というのなら、それはそれであり得る主張だとは思います。
(当時の報道では、そのようには読み取れません。)