相模原市児相のこと

児童相談所が保護見送り 両親から虐待を受けていた男子中学生が自殺 神奈川・相模原

産経新聞 2016.3.22 12:19更新)

 両親から虐待を受け、相模原市児童相談所に通所していた中学2年の男子生徒(14)が自殺を図り、2月末に死亡していたことが22日、市への取材で分かった。児相は親の承諾なしに強制的に保護する権限があり、男子生徒は児童養護施設への入所を求め、児相も両親に入所を説得したが、両親は拒否したため一時保護する結果にはならなかった。

 市によると、平成25年秋に当時小学校6年生だった男子生徒の顔にあざがあることを通っていた小学校の教諭が気付き、市に通報。児相は同年11月に虐待案件と認定。両親は児相の呼び出しに応じた上で男子生徒と通所し、指導を受けていた。しかし、その後も両親による虐待は続き、男子生徒は児相に何度も「児童養護施設で暮らしたい」などと訴えていたという。

 26年10月上旬に両親が児相による一時保護の方針をかたくなに拒んだため、男子生徒の通所を停止。その後、男子生徒が進学した中学校は児相に「保護を求めている」と通報したが、児相は「親子の関係が改善してきている」と判断し、保護を見送った。男子生徒は同年11月に親類宅で自殺を図ったという。男子生徒は意識不明が続いていたが、今年2月に死亡した。

 児相の鳥谷明所長は「親子の状態は少なくとも良い方向に向かっていたと思われ、職権を使う急迫した状態にはなかったと考えている」と話している。
http://www.sankei.com/affairs/news/160322/afr1603220019-n1.html


私なら、児童本人が保護を求めているのなら、原則保護すべき、ということから考えるだろうと思います。
「公権力の行使は慎重に」というのは本人同意がない場合のことであって、
・過去に虐待歴があり、
・児童本人が保護を求めている、
という状況では、「「親子の関係が改善してきている」という判断が誤っているのではないか見直すべきでしょう。

ただ、個別の児童相談所やその職員個人に対する批判ではなく、今後どうすればよいか、というようなことを考えていくべきだろうとは思います。


児相職員 育成体制に不備…相模原市報告書

(読売新聞 2016年03月16日)

 相模原市児童相談所(児相)の職員が一時保護中の少女たちを全裸にして所持品検査を行った問題で、市は15日、検証報告書と再発防止策を発表した。実務経験の浅い職員が様々な課題を抱える子供の対応に苦慮し、適切な助言を受けられる体制もなかったことが問題の背景にあるとし、基本動作マニュアルを策定するとともに、他自治体との人事交流、外部の専門家による指導などを通じて職員の育成を図っていくという。(矢牧久明)

 報告書は全裸検査が発覚した昨年12月から今月8日にかけ、児相の一時保護所の職員50人(非常勤を含む)に聞き取り調査し、外部有識者の意見を踏まえてまとめた。

 全裸検査は昨年8月、子供たちが職員に要望などを伝える「意見箱」の記入用紙が1枚なくなったことから、女性職員2人が少女9人に対して行った。

 報告書によると、職員2人は当初、服のポケットの中を確認して所持品をチェックしようとした。しかし、以前に保護中の少女が売春に関するメモ書きを下着に隠していたことがあったため、女性上司が「その方法では不十分」と認めなかった。

 これを受け、職員2人は、1人が少女の前に立ってタオルを広げ、周囲から見えにくい状況にしたうえで、少女にすべての衣類を脱いでもらい、もう1人が衣類を細かく調べる方法を提案。上司は「不正抑止になる」と実施を指示した。

 報告書はこの点について「性急な対応」とし、「刃物などとは異なり、切迫した危険性があるものではなく、緊急に所持品検査を行う必要がなかった」と結論付けた。

 相模原市児相は政令市移行に伴い2010年に開設され、一時保護所は14年に開所したばかりだ。報告書は「職員の実務経験が浅く、専門的指導、助言が十分に受けられる体制ではなかった」と指摘。「想定以上の困難に直面し、職員は適切な対応の判断に迷っていた」といい、「児童に向き合うよりも、問題を起こさせてはならないという管理意識が強くなっていったと考えられる」とした。

 市は再発防止策として▽横浜、川崎市など他の自治体との人事交流▽所持品検査の具体的な方法などに関するマニュアル策定▽外部の専門家による定期的な専門的指導――などを挙げ、児相内部で人権侵害や虐待が疑われる事案が発生した場合は公表することにした。

 記者会見した佐藤暁・こども育成部長は「人権研修を継続的に行い、子供の立場に立った施設運営ができるよう職員を育て、信頼を回復していきたい」と述べた。
http://www.yomiuri.co.jp/local/kanagawa/news/20160315-OYTNT50339.html


これは別の事案ですが、この女性上司というのは、何が目的だと認識していたのでしょうか。
児童相談所というのは、犯罪捜査するのではなく、誰が悪いのかを探るところでもなく、「児童の最善の利益を図るためにはどうすればよいか」ということを目指す機関だと私は考えています。

こういう認識を職員間で共有することは、政令指定都市になったばかりの自治体では、無理なのでしょうか?

相模原市については、人口はともかく、(児童相談所の設置等を行うべき)政令指定都市になるような状態であったのか、疑問があります。
県庁所在地でもなく、地域の中心都市としての歴史的蓄積があったわけでもなく。

場合によっては、政令指定都市になってすぐではなく、数年程度以上の行政経験を経てから(都道府県から)児童相談所事務の移管を受ける、というような制度にしてもよいのではないかとも思います。