認知症男性の列車事故の最高裁判決


この高裁判決後、上告されて最高裁で争われていた件の判決が出ました。


「家族の監督義務、総合的考慮」…最高裁初判断

(読売新聞 3月1日(火)15時18分配信)

 認知症の男性(当時91歳)が徘徊(はいかい)して列車にはねられた事故を巡り、家族が監督義務を怠ったなどとして、JR東海が男性の妻(93)と長男(65)に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が1日、最高裁第3小法廷であった。

 岡部喜代子裁判長は「家族が監督義務者にあたるかどうかの判断では、監督が可能で容易な立場だったかなどを総合的に考慮すべきだ」とする初判断を示した。その上で、妻と長男は監督義務者ではなかったとし、1、2審の賠償命令を破棄して請求を棄却した。家族側の逆転勝訴が確定した。

 裁判官5人の全員一致の判決。在宅介護を担う家族の負担が軽減される一方、被害回復が難しくなる可能性がある。5人のうち2人は判決理由について、「長男は監督義務者にあたるが、自分の妻を男性の近くに住まわせるなど義務を尽くしており、免責される」という意見を付けた。

 判決によると、愛知県大府(おおぶ)市の男性は2007年12月、当時85歳だった同居の妻がうたた寝をしている間に外出。JR東海道線の駅構内で列車にはねられ死亡した。JR東海は10年2月、妻や長男らに運行遅延に伴う計約720万円の賠償を求め、提訴した。

 上告審では、同居の妻と、介護方針の決定に関わっていた長男が監督義務者にあたるかが争点となった。

 判決はまず、配偶者や長男だからといって無条件に監督義務者だとする法的根拠はないと指摘。〈1〉介護者の生活や心身の状況〈2〉同居しているか〈3〉財産管理への関与〈4〉認知症の人が日常的に問題行動を起こしているか――などを総合的に考慮し、監督することが可能で容易な場合に限って監督義務者と判断できるとした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160301-00050137-yom-soci

「家族の賠償責任否定=認知症事故訴訟―JR東海の敗訴確定・最高裁」(時事通信 3月1日(火)15時7分配信)からも、一部引用。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160301-00000081-jij-soci

裁判官5人のうち3人は多数意見で、事故当時妻は85歳で要介護1の認定を受けており、長男も20年以上別居していた点を指摘。「男性の監督が可能な状況ではなかった」として、監督責任を負わないと結論付けた。

(以上、文字強調は引用者が行いました。)


地裁、高裁と、程度の差はあるものの家族側の責任を認めてきた判断を、最高裁の裁判官は5人一致で否定しました。

予想の範囲内ではあります。

判決内容は今後精査するとして。

ネット上では、被害者が今回のJR東海のような大企業等でない場合の問題点を指摘する声もありますが、どうすれば事故を起こす(巻き込まれる)確率が減るか、ということも考えていかなければならないのだろうと思いました。