認知症男性の列車事故の控訴審

こちらの記事の続報です。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32393343.html


控訴審も妻の責任認定 認知症事故、賠償は減額
中日新聞 2014年4月24日 20時48分)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014042490161510.html

認知症列車事故:同居の妻に賠償命令 長男への請求は棄却
毎日新聞 2014年4月24日 16時25分<最終更新 4月24日 23時01分>)
http://mainichi.jp/select/news/20140424k0000e040221000c.html

認知症で列車にはねられ死亡、遺族の賠償額半減
(読売新聞 2014年4月24日 21時42分)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140424-OYT1T50161.html

各紙で報じられていますが、今回は上記3紙から抜き書き。
なお、文字強調や注の挿入は引用者が行いました。

上告されるかどうかは、現時点ではわかりません。


妻の責任
配偶者として同居し、介護をしていた妻に監督責任があったと認定。「家族の補助を受けて男性の症状に配慮した介護をしていたと認められるものの、自宅出入り口のセンサーの電源を切っており、監督が十分でなかった点がある」と指摘した。

うたた寝して見守りを怠った」(一審判決)とする具体的な過失ではなく、保護者としての監督責任があるとした。
(中日)
同居の妻を民法の監督義務者として、「賠償責任を免れない」と指摘。家の出入り口のセンサーを作動させるという容易な措置を取らなかったことで「1人で外出する可能性のある男性に対する監督が不十分だったと言わざるをえない」と述べた。
(毎日)
婚姻関係上の法的義務や、精神保健福祉法で定めていた保護者制度<注1>を引用。「同居していた妻は配偶者として男性の保護者の地位にあり、夫が老齢や疾病、精神疾患などで自立生活を送れなくなった場合、生活全般に配慮し、介護、監督する義務を負う」と認定した。

遺族側は、妻自身も事故当時85歳で「要介護1」と認定されていたとし、「過失や賠償責任を問うべきではない」と主張していたが、(裁判長は)「夫婦としての協力扶助義務の履行が法的に期待できない特段の事情はない」と、退けた。
(読売)

長男の責任
一審で「介護方針を決定し、事実上の監督者」とされた長男に対し、控訴審判決は「20年以上も別居して横浜市に住んでおり、監督者とはいえない」として責任を免じた。
(中日)
男性と別居して遠方で暮らす長男に対しては「介護について最も責任を負う立場にあったと言うことまではできない。監督義務者には当たらない」とした。
(毎日)
1審判決で監督義務があるとされた長男については、「男性の扶養義務者に過ぎない」とし、「20年以上も男性と別居しており、賠償責任を負わせるような監督者に該当しない」とした。
(読売)

JR側の問題等
JR側に対し、「駅の監視やホームの安全対策をしていれば、事故を防げた可能性もあった」と言及。遺族側の支払い能力やJR側の不備などを総合的に考慮した結果、賠償額は損害の半額が相当と結論づけた。
(中日)
JRに対しては、駅での利用客などに対する監視が十分で、ホームのフェンス扉が施錠されていれば事故の発生を防げた可能性を指摘し、安全向上に努める社会的責任に言及。賠償額は請求の半分が相当と判断した。
(毎日)
JR側の問題にも踏み込み、「駅での利用客に対する監視が十分で、(男性が線路に立ち入ったとみられる)フェンス扉が施錠されていれば、事故を防止できたと推認できる」と指摘。妻らが介護に努めていたことも、ある程度評価し、妻が負うべき賠償責任は損害の5割とした。
(読売)

その他
JRによると、鉄道事故の損害賠償は示談交渉でまとまるか、遺族の相続放棄で請求できなくなること<注2>が大半で、訴訟に発展する事例はほとんどないという。今回は事故後の交渉が不調に終わり、JR側が提訴していた。
(中日)
名古屋高裁は今年1月、和解案を示したが成立しなかった。
(毎日)


<注1>
読売だけは、精神保健福祉法の保護者制度に触れた表現がありますが、
同法で定めていた保護者制度は廃止され、この4月からはなくなりました。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32379528.html

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律の概要」には、
<主に家族がなる保護者には、精神障害者に治療を受けさせる義務等が課されているが、家族の高齢化等に伴い、負担が大きくなっている等の理由から、保護者に関する規定を削除する。>
と書かれています。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaisei_seisin/dl/hou_gaiyo.pdf

裁判は、その行為が行われたときに有効な法令を基に判断するものではありますが、今の時代の流れにそぐわない感はあります。


<注2>
相続放棄で請求できなくなる」というのが意味不明です。
死亡した本人の責任であったが、遺族が相続放棄して(鉄道会社が)請求できなくなる、というのなら(認知症の方に責任を問えるか、という問題はあるにしても)まだわかりますが。

でも、それなら遺族(家族)の保護監督責任というのは関係ないはずです。