各裁判官の判断

 妻(同居、要介護1)長男(別居)
地裁責任あり責任あり
高裁責任あり責任なし
最高裁(判決)責任なし(*1)責任なし(*1)
最高裁のうち2人) 免責される(*2)

*1:配偶者や長男だからといって無条件に監督義務者だとする法的根拠はない。
〈1〉介護者の生活や心身の状況
〈2〉同居しているか
〈3〉財産管理への関与
〈4〉認知症の人が日常的に問題行動を起こしているか
などを総合的に考慮し、監督することが可能で容易な場合に限って監督義務者と判断できる。

*2:監督義務者にあたるが、自分の妻を男性の近くに住まわせるなど義務を尽くしており、免責される。

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認知症男性の列車事故訴訟の各裁判所判断について、前記事の読売報道などを基に、簡単にまとめてみました。

私自身は、地裁や高裁はもちろん、最高裁の2人の意見(長男は監督義務者にあたるが、自分の妻を男性の近くに住まわせるなど・・・)にも同意できません。

夫婦は、同居が原則ですし(民法第752条)、もし未成年の子がいれば、母の別居により悪影響が出る恐れもあります。
このケースに限って「義務を尽くしている」ことの理由にするのはともかくとしても、「妻を派遣して世話をさせないと義務を尽くしたといえない」ということにならないか、という危惧もあります。


それと、以前の記事で書きましたが、
認知症高齢者の家族は、「監督する法定の義務を負う者」にあたるか、ということに疑問を抱いています。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32379528.html

言い方を変えれば、家族は認知症高齢者の行動を制約する権限があるか。
(あると仮定したとしても)それが、法令で明示的に認められ、かつ、国民に周知されているか。

権限がないところに責任はない。
責任を負わすのなら、権限を与えなければならない。

権限がなく、見守りや口頭での説得だけで監護ができるのなら、楽なのでしょうが・・・

極端な事例ですが、
認知症の祖父または祖母と同居している未成年の孫、
若年性認知症の父または母と同居している未成年の子、
これらの子や孫は、むしろ認知症の人々の親権に服している状態です。

こういうことを含めて、民法その他の法令も見直す必要があるのかもしれません。


もうひとつ。認知症高齢者から被害を受けた相手方(今回の事故では鉄道会社)の救済について。

英米法では、無過失責任が認められている場合があったと思います。

認知症高齢者本人に相当程度以上の資力があるときに限って、何らかの補償義務を認める、という考え方も検討すべきかなあ、とも思います。

家族の義務としてでではなく。