住民票は老健でも病院でも置ける

以前、某掲示板でけっこう引用した住民票に関する国保の質疑応答が、
最近のネット上ではそれほど知られていないような印象があるので、備忘録的に。

以前、「帰来地のない入院中の者は入院の長短に関わらず病院に住所があると認定されるべき」という話題で、MK99さんが紹介されていた、国保の質疑応答です。

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問)A町のB養護老人ホームに入所していた甲は、C市の病院に入院して3か月経過しました。そこでB養護老人ホームは甲に対する入所措置を解除しました。ところが、病院の診断では、甲の入院期間は1年に及ばないことは明らかです。この場合の甲の住所はどこにあると解すべきでしょうか。

答)甲が家族を有さない単身の老人であれば、甲の住所は病院にある。
甲に家族があれば、具体的事情によって異なってくる。例えば、家族との関係が密接であるなど、甲が退院すれば家族のもとへ帰るであろうような事情があるような場合であれば、甲の住所は家族の居住地にあると解される。これに対し、家族があっても、単身の老人と同様の実態にあると認められる場合には、たとえ入院期間が1年に及ばないことが明らかであっても、当該病院に住所があると解することが妥当である。

この考え方の前に、次のような「内かん」があります。
「内かん」というのは、簡単に言えば、正式通知(通達)よりも軽い、事務連絡に似たもの、ということで。

住所の取扱いについて

昭和47年3月31日

都道府県民生主管部(局)長あて 国民健康保険課長内かん)

国民健康保険における住所の認定については、昭和46年3月31日付自治振第123号をもって、自治省行政局振興課長より「住民基本台帳法の質疑応答について」が通知されて依頼、これを参考として事務処理に当るよう指導してきたところですが、実際の運用においては保険者によって取扱いがまちまちになっているところが見受けられますので、上記通知のうち実際に認定を行う上で困難を伴う事例についての具体的な取扱い並びに上記通知及びこの取扱いについて留意すべき事項を下記により示すこととしましたので、貴管下市町村に対する指導及び周知方をよろしくお願いいたします。

 なお、下記の事項については、自治省行政局振興課並びに厚生省社会局及び児童家庭局と協議済であり、住民基本台帳の取扱いもこの方針で処理されるものであるので、念のため申し添えます。

1.社会福祉施設入所者等の具体的取扱いについて

(1)病院、療養所等に入院、入所している者の場合

当該病院、療養所等の医師の診断書により、将来に向かって1年以上の長期かつ継続的な入院治療を要すると認められる場合を除き、原則として家族の居住地に住所がある。
(2)削除

(3)児童福祉施設以外の社会福祉施設に入所する者の場合

それらの施設に、将来に向かって1年以上居住することが当該施設の長によって認められる場合(文書によることを要しない。)を除き、原則として家族の居住地に住所がある。ただし、老人福祉施設に入所する者については、通常当該施設に1年以上居住することが予想されそこに住所があると考えられるので、当該施設の長の認定は必要がないこと。

2.自治省通知等の留意事項について

前記自治省通知及び上記1の基準は、住所認定にあたっての事務処理を簡素化し、統一化するという趣旨に基づくものであるから、これによることが著しく妥当性を欠くような場合は実態に即した取扱いを行うよう住民主管課と十分協議のうえ処理すること。

なお、こちらは、BOBさんのサイトからです。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Oak/1945/juusyonotoriatukai.htm

いずれも、太字強調は引用者が行いました。

さて、この2つから導き出せることは、次のとおりです。

A:1年以上居住する予定なら、そこが住所地となる。

B:1年以上の居住予定でなくても、他に帰るべき場所(帰来地)がない場合には、そこが住所となる。

介護老人保健施設老健)も、介護療養型医療施設も、住所地特例の制度下にある以上、そこに住民票を置くことは制度上想定されているはずですが、療養型ではない病院や診療所も、状況によっては同様です。

実際に、これらの場所に住民票を置いている人は(もちろん)います。
特にBの場合なのに施設や病院側に拒否されている人がもしもいたとしたら、施設等への説明用にでもご活用ください。


まあ、住所とか住民票というのは、ちょっと難しい問題もあります。

私は生活保護のようにに、住民票上の住所よりも現に居住実態のあるところで保護する、という原則になっている仕事をしてきました。
さらに、住民票を動かさずに(DVや債権者から)逃亡する人たちにからんだ仕事も。
だから、紙切れの住民票(というと語弊がありますが)は、それほど重視しない傾向があります。

でも、たとえば、大災害で住民票を残したまま、他の場所に避難する人々の場合。
原発事故関連で、何年も避難先で暮らさざるを得ない人たち(かつ、他の土地に住民票を移す気になれなかった人たち)のことを考えると、何ともいえない気持ちになります。