社会保障制度改革国民会議に意見を送りました

こちらの記事で書いた「社会保障制度改革国民会議の審議のための意見募集」に意見を送りました。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32031318.html

1.介護サービスの範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化について<*1>
 効率化は図るべきであるが、重点化の名の下に軽度者を介護サービスの対象から外すと、かえって社会的費用が増大する可能性が高い。軽度者は支給限度額も実利用額も低く、軽度の間に必要な給付を行うことで、重度化が防止される。介護給付費実態調査月報(平成24年4月審査分)<*2>で見ると、要支援のサービス受給者は人数で21%を占めるが、費用では5%余に過ぎない(要介護1以下では、受給者数で39%、費用では18%)。軽度者を切り捨ててもたいした節約にならず、むしろ介護予防通所リハビリテーション<*3>、心身の維持改善を図るサービスが利用できなくなることによる重度者の増加が費用の増大をもたらす。介護予防訪問介護にしても、独居者や老々介護世帯を中心に、在宅生活を支える重要なサービスである。ちなみに、わずか週数時間程度の家事的サービス利用<*4>で廃用症候群が進むなどという一部の学者等の主張は現実的ではない。在宅生活が困難な要介護者が増えれば、介護給付費も施設建設費も増え、結局は国民の負担が重くなる。
 効率化の観点からは、要支援者と要介護者とでケアマネジメントの担い手が異なる現在の制度を改め、要介護(支援)度にかかわらず首尾一貫して居宅介護支援事業所がサービス計画を担当する制度に戻すべきである。その時点の利用者の状態に応じた自立支援を継続的に行うことができ、また、要介護と要支援を行き来するたびに初回加算を算定(給付)するという不要な出費も避けられる。

2.介護サービスの利用者負担のあり方について
 1により軽度者の介護サービス利用は過度に抑制すべきでないから、軽度者の利用者負担割合のみを引き上げることは得策ではない。高所得者の負担割合の引き上げは検討対象となり得るが、施設入所者の補足給付等については、所得だけでなく資産に着目することも検討する必要がある。相当期間以上の施設入所者については、次世代への相続時に相続財産から優先して費用徴収する仕組みを導入してはいかがか。なお、入所者死亡時に、配偶者や、重度障害を持つ子がいる場合には、その生活の継続に配慮する必要がある。


下手な注釈
*1:社会保障制度改革推進法第7条(以下の条文)に対応しています。
 政府は、介護保険の保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)の範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図るとともに、低所得者をはじめとする国民の保険料に係る負担の増大を抑制しつつ必要な介護サービスを確保するものとする。

*2:データはこちらの記事に(償還払いを除く)。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31862607.html

抜粋して縦横を入れ替えるとこんな感じです。

 要支援要介護1以下全体
サービス受給者数(千人)928.51,722.94,386.6
その全体に対する割合(%)21.239.3100.0
サービス費用額(百万円)37,110122,068688,899
その全体に対する割合(%)5.417.7100.0

*3:介護予防通所介護福祉用具・住宅改修関係など、他のサービスも重要ですが、リハビリ効果がイメージしやすいサービスを例示しています。

*4:こちらの記事で推計したように、要介護1で月8.6時間、週のうち2時間余りだけの生活援助が廃用症候群を作るというのは、無理があります。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31868253.html


今回は、軽度者の切り捨てが費用の面から得策ではないという観点を主にしましたが、他の切り口も当然、考えられます。

たとえば、軽度者に対するサービスを削ると、介護休暇や介護離職の増加など、子どもたちの世代の就労の阻害要因となり、我が国の経済活動に悪影響を及ぼす、とか。

もちろん、高齢者の生活の質の低下など、現場の実状から危惧されることを主張するのもありでしょう。