省令から条例へ

平成24年4月からの法改正を複雑にしている要因に、
「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」というものがあります。

前記事までで紹介した以下の3通知のおおもとです。

H23.9.2障発0902第2号:障害保健福祉部長通知
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/30369349.html

H23.10.7老発1007第6号:老健局長通知
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/30369273.html

H23.10.28雇児発1028第1号:雇用均等・児童家庭局長通知
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/30369417.html

このブログでよく扱う分野でいえば、児童福祉法身体障害者福祉法知的障害者福祉法・老人福祉法・介護保険法・障害者自立支援法などで、これまで厚生労働省令で定めていたサービスや施設の基準について、都道府県又は市町村の条例で定めることとなりました。

ただし、自治体が自由に定められるということではなく、次のとおり分類されています。

1)従うべき基準
 条例の内容を直接的に拘束する、必ず適合しなければならない基準。
 基準の範囲内で地域の実情に応じた内容を定める条例は許容されるが、異なる内容を定めることは許されない。
 条例の内容は、法令の「従うべき基準」に従わなければならない。
 「従うべき基準」を下回る内容を定めることは許容されない。
 基準に従う範囲内で、地域の実情に応じ「従うべき基準」を上回る内容を定めることは許容される。

2)標準
 法令の「標準」を通常よるべき基準としつつ、合理的な理由がある範囲内で、地域の実情に応じた「標準」と異なる内容を定めることが許容される。

3)参酌すべき基準
 地方自治体が十分参酌した結果としてであれば、地域の実情に応じて、異なる内容を定めることが許容される。

※「地方分権改革推進計画について」(H21.12.15閣議決定)における定義を、少しだけ噛み砕いてみました。

たとえば、介護保険訪問介護で見ていきます(障害福祉サービスの居宅介護も似た構造です)。

従うべき基準
第5条(訪問介護員等の員数)
第6条(管理者)
第8条第1項(内容及び手続の説明及び同意) 注:第2項以下の電磁気的方法等は含まれない
第9条(提供拒否の禁止)
第25条(同居家族に対するサービス提供の禁止)
第30条(勤務体制の確保等)
第33条(秘密保持等)
第37条(事故発生時の対応)

ちなみに、基準該当サービスの訪問介護では、別規定があるものと、第30条(勤務体制の確保等)を除いて同じような取扱いになっています。
第40条(訪問介護員等の員数)
第41条(管理者)
第42条の2(同居家族に対するサービス提供の制限)
第43条で準用される第8条第1項、第9条、第33条、第37条

訪問介護では「標準」というのがないので、それら以外は、「参酌すべき基準」となります。
第4条(基本方針)
第7条(設備及び備品等)
第8条のうち第2項以下
第10条(サービス提供困難時の対応)
第11条(受給資格等の確認)
第12条(要介護認定の申請に係る援助)
第13条(心身の状況等の把握)
第14条(居宅介護支援事業者等との連携)
第15条(法定代理受領サービスの提供を受けるための援助)
第16条(居宅サービス計画に沿ったサービスの提供)
第17条(居宅サービス計画等の変更の援助)
第18条(身分を証する書類の携行)
第19条(サービスの提供の記録)
第20条(利用料等の受領)
第21条(保険給付の請求のための証明書の交付)
第22条(指定訪問介護の基本取扱方針)
第23条(指定訪問介護の具体的取扱方針)
第24条(訪問介護計画の作成)
第26条(利用者に関する市町村への通知)
第27条(緊急時等の対応)
第28条(管理者及びサービス提供責任者の責務)
第29条(運営規程)
第29条の2(介護等の総合的な提供)
第31条(衛生管理等)
第32条(掲示
第34条(広告)
第35条(居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止)
第36条(苦情処理
第38条(会計の区分)
第39条(記録の整備)

要介護認定申請に係る援助、居宅介護支援との関係(利益供与の禁止や連携等)などについては、
「従うべき基準」の方がよいような気もするのですが、議論が分かれるところかもしれません。
(ちなみに、居宅介護支援など、条例制定に移行しない基準もあります。)

自治体の条例がきちっとしていればいいのでしょうが。

また、変なローカルルールが条例で定められて、利用者も事業者も使いにくい制度にならないか、という危惧もあります。

そのあたりについては、住民からの意見具申や監視なども必要になるかもしれません。
各事業者団体なども、責任が重くなる、というべきでしょうか。

一方、自治体としては、条例を定めるための事務量など、頭が痛い面もあります。
政令市や中核市などは、権限委譲で、居宅サービス事業者の指定など都道府県が担ってきた事務が増えますし。
また、人員基準など、重要部分を国がロックしていることについて、議論が出るかもしれません。

なお、自治体の条例が定められるまでの間は省令の基準が適用されるなど、経過措置もあります。