経済同友会の提言

今さら感もありますが・・・

「自己負担割合、2割に引き上げを」介護保険経済同友会提言

(2010.6.28 15:33 産経ニュース)

 経済同友会は28日、介護保険制度の抜本見直しを求める提言を発表した。将来も安定した保険制度を続けるために現在の介護予防サービスのうち要支援1と2、比較的軽度な要介護1を介護保険の対象外とし、自己負担割合も現行の1割から2割に引き上げるべきだとしている。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100628/biz1006281535010-n1.htm


だから、こういう記事を書いたりもしていたのですが(苦笑)
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/25902272.html


で、別の角度からの指摘を、この提言の本体より引用しながら。(太字強調は引用者が行いました。)
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2010/100628b.html

 公的制度においては、限りある財源を効果的に使い、真に必要な介護保障を確実に行うという観点から、保険対象とするサービスを峻別し、より重度の利用者に重点的に給付するべきである。軽度の利用者については、過剰なサービス供給がかえって状態の悪化を招き、自立促進に逆行するという指摘もある。したがって、介護予防サービスが提供される要支援1、2と、比較的軽度な要介護1の利用者へのサービスは、保険の対象外とするべきである。
 また、自己負担を介護サービス費用の1割から2割に引き上げる。なお、自己負担が高額となり、現行制度において設けられている所得に応じた自己負担の上限額を上回る場合には、高額介護サービス費の支給を受けることができる。

 現行制度を前提に、将来の介護費用と、サービス利用における自己負担分を除いた給付費を簡単に試算すると、2030年時点での介護費用は、約21.6兆円(対GDP比3.2%)、給付費は約20兆円(対GDP比2.9%)となった。
 一方、上記の保険対象となるサービスの重点化を行うことにより、2030年時点の介護費用は、約4兆円抑制され、約17.7兆円(対GDP比2.6%)となった。
 加えて、自己負担割合を引き上げることにより、給付費は、約5兆円抑制され、約15兆円(対GDP比2.2%)となった。つまり、サービスの重点化と自己負担割合の引き上げにより、現行制度の将来推計に比べ、介護費用、給付費ともに対GDP比で増加が抑制されることになる。

「軽度の利用者については、過剰なサービス供給がかえって状態の悪化を招き、自立促進に逆行するという指摘」(この指摘自体、有識者等からの反論もあります)があるからといって、

「要支援1、2」と「要介護1」の利用者へのサービスを保険対象外とすべき

というのは、いうまでもなく暴論です。
軽度の利用者に対するサービスの提供により、重度化を予防しているという面は確かにあるからです。

私は「現行の」予防給付制度は批判していますが、介護予防という考え方自体を認めていないわけではありません。

要介護1以下の「軽度者」を介護保険の給付対象から除外すると、その受け皿が自治体の一般財源であれ、利用者の全額自己負担であれ、介護予防的利用も抑制されるでしょう。

その結果、重度者は増え、抑制どころか、下手をすれば施設給付等が大幅に増大するかもしれません。

また、軽度者の医療系サービスも介護保険の対象外となれば、その受け皿は医療保険が賄うことになるでしょうから、社会保障費としては少なくとも純減とはなりません。

そのあたりが「約4兆円の抑制」の推計に勘案されているとは思えません。

 給付の効率化としては、低所得者の施設利用における居住費、食費の負担軽減のために介護保険から補足給付を行う仕組みの見直しが必要であり、介護保障においても低所得者への公的支援は、生活保護制度によって行うべきである。

生活保護費は保険制度ではなく全額が公費なので、税金の投入量としては、むしろ増える可能性があります。
対象者の資産状況にもよるので、推計は難しいところですが、少なくともケースワーカー等の人件費分だけは、社会的負担が増えるといえるでしょう。

 今後、生産年齢層がさらに減少していくなかで、第2号被保険者(40~64歳)の保険料が負担可能な水準を超えて増加し続ければ、経済社会の活力を削ぐことになる。

経済同友会のホンネはここでしょう。
第2号被保険者の保険料だけは、雇用主の負担に直結しているから。

それを明確に述べずに、あれこれ理屈をこじつけているところに、この提言を作成した人々の心根の卑しさがあると言ったら言いすぎでしょうか。

もっとも、提言の内容すべてが無意味というわけではなく、社会保障だけでなく、税制などのあり方について検討する上での参考になるような記述もあるのですが。
おおもとが、「抑制ありき」ですから。