自由記述分・その2

問7 その他、介護保険制度へのご意見、ご要望がありましたら自由にご記入下さい。

1 現行の予防給付制度の見直し

 「介護予防」という理念自体には優れたものがあるとは思いますが、現行の予防給付制度には問題が山積みです。たとえば、要介護度というのは、介護の手間についての量的な目安であって、必要なサービスを質的に規定するものではないはずです。したがって、「要介護1相当」の中に介護給付と予防給付の境界が来ることについては、特にエビデンスがあるわけではありません。また、現在の介護給付の対象となるサービスの中でも、予防をも重視したプロセスは少なからず取り入れられています。よって、介護給付と予防給付とに分断される現行制度は、見直すべきと考えます。
 「要介護1相当」というのは重度向きにも軽度向きにも変化しやすい状態であり、介護給付と予防給付の境界線上を行き来する被保険者は珍しくありません。そのたびにケアマネジメント担当者が変わるのは、ケアチームにとっても被保険者にとっても負担になります。それだけではなく、その都度の初回加算の算定など、保険財政としても余分な支出を余儀なくされることになります。
 また、居宅介護支援事業者が努力して被保険者の軽度化が実現すると、かえって顧客を失ってしまうという皮肉な現象も起きます。
 さらに、この要介護認定等の基準時間が1分延びたから毎月自宅への訪問が必要、1分短くなったから3か月に1度の訪問でもよい、ということも考えにくいことです。
 もし仮に、軽度者のサービスについて適切でない点があったとしても、介護支援専門員からケアマネジメントを取り上げるのではなく、適切なケアマネジメントが行われるよう、スタッフの質を高めていく工夫をすべきでしょう。
 現行の制度は弊害の方が大きく、早急に見直す必要があります。
 この問題はかなり重要ですが、抜本的には、介護保険法自体の改正が必要となります。ただし、法改正によらずとも、この問題をいくらか改善する方法は考えられます。

※当面の改善対策案
 現行の制度では、要介護(支援)認定結果が出るまで、ケアマネジメント担当者が確定しません。また、更新認定であっても、有効期間内に結果が出ない場合が多々あります。さらに、利用者負担を含め費用が確定しないということでもあります。
(17年度以前の制度でも、要支援か非該当か、という問題はありましたが、その境界ライン上と、予防給付・介護給付の境界上とでは、暫定サービスの必要性が全く異なります。)
 そこで提案したいのが、認定結果が出るまでの「みなしサービス計画」「みなし支援事業者」です。たとえば、認定結果が出るまで、要介護1以上を予測して、ケアマネジメントを居宅介護支援事業者が担当したにもかかわらず要支援認定となった場合、認定結果が出た月までは、その作成したケアプラン(居宅サービス計画)を介護予防サービス計画とみなすことはいかがでしょうか。いわば「みなし介護予防サービス計画」です。そして、その事業者を介護予防支援事業者とみなし、介護予防サービス計画費を支給することとします。
 要支援2以下を予測して介護予防支援事業者がケアマネジメントを担当したにもかかわらず、「裏目」(要介護1以上)になった場合も同様に、「みなし居宅サービス計画」「みなし居宅介護支援事業者」とします。
 具体的には、介護保険法施行規則のしかるべき箇所に次の2条を追加すれば可能と考えます。

(居宅介護サービス計画費の特例)
第○○条 市町村は、被保険者が法第32条第1項の規定による要支援認定申請を行い、法第58条第4項に規定する指定介護予防支援事業者について市町村に届け出ている場合であって、法第35条第4項の規定により要介護認定を受けた場合は、当該届出を行った日から当該要介護認定結果の通知を受けた日の属する月までに限り、当該指定介護予防支援事業者を指定居宅介護支援事業者と、当該届出を法第46条第4項に規定する指定居宅介護支援事業者についての届出とそれぞれみなし、居宅介護サービス計画費を支給することができる。
2 前項の規定は、被保険者が法第33条第2項の規定による要支援更新認定申請を行い、同条第1項に規定する有効期間満了後に法第35条第4項の規定による要介護認定結果の通知を受けた場合に準用する。
3 第1項(前項において準用する場合を含む。)の規定により指定居宅介護支援事業者とみなされることが想定される指定介護予防支援事業者は、可能な限り予防給付にも介護給付にも対応可能なサービス計画を作成するよう努めるとともに、それぞれの制度について被保険者に懇切丁寧な説明を行わなければならない。

(介護予防サービス計画費の特例)
第○○条 市町村は、被保険者が法第27条第1項の規定による要介護認定申請を行い、法第46条第4項に規定する指定居宅介護支援事業者について市町村に届け出ている場合であって、法第35条第2項の規定により要支援認定を受けた場合は、当該届出を行った日から当該要支援認定結果の通知を受けた日の属する月までに限り、当該指定居宅介護支援事業者を指定介護予防支援事業者と、当該届出を法第58条第4項に規定する指定介護予防支援事業者についての届出とそれぞれみなし、介護予防サービス計画費を支給することができる。
2 前項の規定は、被保険者が法第28条第2項の規定による要介護更新認定申請を行い、同条第1項に規定する有効期間満了後に法第35条第2項の規定による要支援認定結果の通知を受けた場合に準用する。
3 第1項(前項において準用する場合を含む。)の規定により指定介護予防支援事業者とみなされることが想定される指定居宅介護支援事業者は、可能な限り予防給付にも介護給付にも対応可能なサービス計画を作成するよう努めるとともに、それぞれの制度について被保険者に懇切丁寧な説明を行わなければならない。


2 支給限度額の対象から除外すべき加算

 21年報酬改定に伴い、特定事業者加算やサービス提供体制強化加算など、事業者の人員体制等により報酬上の評価が異なる場合が増えました。その結果、支給限度額いっぱいに使わないと在宅生活を維持できない利用者では、質が高いとされる事業者のサービスを使うと支給限度額では不足する場合があります。これでは、質が高いとされる事業者のサービス利用が敬遠されかねません。よって、これらの加算については支給限度額管理の対象から除外してはいかがでしょうか。また、緊急時訪問介護加算により支給限度額を上回る現象も起こります。これについても、支給限度額からの除外の検討が必要と思います。


3 特別地域加算等のあり方

 従来から訪問サービスの大半については特別地域加算があり、また、21年報酬改定においては中山間地域等のサービスについて加算が追加されたところです。
 これらの地域加算については、訪問介護を利用する低所得者については一定の利用者負担軽減制度がありますが、課税世帯については軽減がありません。税制の改正等により、課税世帯であっても生活が楽でない場合もありますし、もとより要介護者本人には、一般の地域に比べて10%~15%重くなる利用者負担を楽に捻出する資力はないことが多いでしょう。
 また、訪問看護など医療系のサービスについては、公的な軽減制度もなく、事業者が自主的に割引することもできません。
 個人的意見としては、特別地域加算等については、1割負担の原則を崩すことになったとしても他の地域と同様の利用者負担となるようにすべきではないかと考えます。すなわち、当該加算分については1割負担を請求しない取扱いを認めるべきです。
 ただちにそれを実施することが困難であったとしても、特別地域加算等のあり方について、これまでの効果を含めて検討すべきと考えます。


4 将来の財源

   介護保険を含めた社会保障費の将来の財源については、消費税の税率を上げる案がありますが、併せて、税の公平性の観点等から、ヨーロッパ等で主流の伝票方式(インヴォイス)の導入を積極的に検討すべきと考えます。


5 その他

 その他、介護予防訪問介護及び介護予防通所介護の月額定額報酬、居宅介護支援の特定事業所集中減算、介護サービス情報の公表等についても、見直しを検討すべきと思います。
 また、次のウェブサイトやブログの意見も参考にしていただければ幸いです。
・うぃずライン http://withline.web.fc2.com/
・樹形図工房 http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou