特定事業所加算の要件をめぐる問題(その2)

いわゆるヘルパー事業所のうち、訪問介護・居宅介護・行動援護特定事業所加算についての続きです。

「文書等による指示及びサービス提供後の報告」について、前の記事で、私は、
「そのヘルパーが始めて入る時に一度やればいい」というのは不適当、
「1日3回入る場合には3回ともに必ず情報伝達」というのも不適当な場合がある、
と書きました。

その伝達すべき「当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項」については、各サービスの留意事項通知で次のように書かれています。

~少なくとも、次に掲げる事項について、その変化の動向を含め、記載しなければならない。
・利用者のADLや意欲
・利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
・家族を含む環境
前回のサービス提供時の状況
・その他サービス提供に当たって必要な事項

このうち、
・利用者のADLや意欲
・利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
・家族を含む環境
については、それほど変化がない場合が少なくありません。
特に、1日のうちで複数回訪問する場合、変化がない方が一般的でしょう。
(人によっては「意欲」は変動があるかもしれませんが・・・)

となると、
「前回のサービス提供時の状況」と、「他は変化がないこと」
を伝えておけば、この要件は満たす、という考え方もできると思います。

仮に、平日の昼間(でなくてもかまいませんが、サービス提供責任者が勤務に就いている時間帯に)、
午前にAヘルパーが、午後にBヘルパーが訪問する場合、
Aヘルパーが訪問終了後にサービス提供責任者にサービス提供時の状況を報告し、
サービス提供責任者がBヘルパーの訪問前にその状況等を伝達する、
ということは可能でしょう。

また、午前も午後もAヘルパーが訪問するのなら、Aヘルパーがサービス提供責任者に状況を報告した上で、
サービス提供責任者が「午後も同じようにお願いします」とでもAヘルパーに伝えれば済むはずです。
(これを電話や口頭ではなく、わざわざメール等が必要というのが面倒なところですが・・・)

ちなみに、サービス提供責任者からヘルパーへの伝達は「文書等の確実な方法」によることとされていますが、
ヘルパーからサービス提供責任者への報告は、電話や口頭ではいけないとは規定されていません。
(留意事項通知で、「サービス提供責任者は、文書にて記録を保存しなければならない」とされているだけです。)

では、サービス提供責任者の勤務時間外ではどうでしょう?

先に書いたように、24時間365日のサービス提供を行っているような事業所では、サービス提供責任者が毎回対応するのは「労基法違反」以前に不可能です。
居宅介護の留意事項通知などにあるように、
「サービス提供責任者の勤務時間内に対応可能な範囲での伝達で差し支えない」
というのが厚生労働省の取るべき見解でしょう。

その場合、
・サービス提供責任者は勤務時間内に伝達メール等を送っておくこと
そして
・次の勤務時間開始後にその間の状況について報告を受けること
という対応が考えられます。

また、サービス提供責任者が複数存在している事業所で、休日対応のサービス提供責任者シフトを組んでいるような場合には、本来の担当外のサービス提供責任者が報告を受けるなどの対応を行うことも考えられます。
そういうシフトが組めない場合、あるいは夜間・深夜・早朝帯に複数のヘルパーがいわゆる巡回型で訪問するような場合には、ヘルパー間で適宜情報伝達を行うというのもアリでしょう。

もちろん、緊急時には、その事業所のマニュアルなどに基づいた緊急対応を行うとともに、真夜中であろうがサービス提供責任者や管理者に必要な報告を行うことを否定するものではありません。

それから、居宅介護の留意事項通知にある、
なお、利用者に対して24時間365日のサービス提供を行っている事業所においては、サービス提供責任者の勤務時間外にもサービス提供が行われることから、サービス提供責任者の勤務時間内に対応可能な範囲での伝達で差し支えない。
という記述は、行動援護については適用されないこととされています。

たしかに、
行動援護は、主として日中に行われる外出中心のサービスであることから、早朝・夜間・深夜の加算は算定されないので留意されたい。」
という通知はあるのですが、行動援護は平日だけのサービスではないので、サービス提供責任者の休日に行うこともあります。
なので、行動援護についても、「サービス提供責任者の勤務時間内に対応可能な範囲での伝達で差し支えない」のではないかと私は考えます。
だって、厚生労働省ですから←しつこい(笑)

こうしてみると、社援局は老健局よりは(たぶん)マシなものの、「月~金」勤務という固定概念が払拭されていないのかな、という感じもします。