特定事業所加算の要件をめぐる問題(その1)

いわゆるヘルパー事業所(訪問介護・居宅介護・重度訪問介護行動援護)の特定事業所加算についてです。

「文書等による指示及びサービス提供後の報告」という要件があります。
これは体制要件のひとつで、加算(I)~(III)のすべてに必要です。

まず、訪問介護の要件告示(H12年厚生省告示第25号)です。

指定訪問介護の提供に当たっては、サービス提供責任者が、当該利用者を担当する訪問介護員等に対し、当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス提供終了後、担当する訪問介護員等から適宜報告を受けること。

障害福祉サービスの要件告示(H18年厚生労働省告示第543号)でも、居宅介護と行動援護では同様の規定になっています。

指定居宅介護の提供に当たっては、サービス提供責任者が、当該利用者を担当する居宅介護従業者に対し、当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス提供終了後、担当する居宅介護従業者から適宜報告を受けること。

指定行動援護の提供に当たっては、サービス提供責任者が、当該利用者を担当する行動援護従業者に対し、当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス提供終了後、担当する行動援護従業者から適宜報告を受けること。

一方、重度訪問介護だけは異なります。

指定重度訪問介護の提供に当たっては、サービス提供責任者が、当該利用者を担当する重度訪問介護従業者に対し、毎月定期的に当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達するとともに、当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項に変更があった場合も同様に伝達を行っていること。

サービス提供責任者からヘルパーへの伝達は「毎月定期的に」であって、「伝達してから開始する」わけではありません。


次に、留意事項通知を見ていきましょう。

まず、訪問介護です(H12年老企第36号)。

 同号イ(2)(二)の「当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項」とは、少なくとも、次に掲げる事項について、その変化の動向を含め、記載しなければならない。
・利用者のADLや意欲
・利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
・家族を含む環境
・前回のサービス提供時の状況
・その他サービス提供に当たって必要な事項
 同号イ(2)(二)の「文書等の確実な方法」とは、直接面接しながら文書を手交する方法のほか、FAX、メール等によることも可能である。
 また、同号イ(2)(二)の訪問介護員等から適宜受けるサービス提供終了後の報告内容について、サービス提供責任者は、文書にて記録を保存しなければならない。

居宅介護でも、同様の文章が並んでいますが・・・

【留意事項通知】
 543号告示第1号イ(2)(二)の「当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項」とは、少なくとも、次に掲げる事項について、その変化の動向を含め、記載しなければならない。
・利用者のADLや意欲
・利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
・家族を含む環境
・前回のサービス提供時の状況
・その他サービス提供に当たって必要な事項
 同(二)の「文書等の確実な方法」とは、直接面接しながら文書を手交する方法のほか、FAX、メール等によることも可能である。

この後に、訪問介護にはない文章が続きます。
 また、利用者に対して、原則として土日、祝日、お盆、年末年始を含めた年間を通して時間帯を問わずにサービス提供を行っている事業所においては、サービス提供責任者の勤務時間外にもサービス提供が行われることから、サービス提供責任者の勤務時間内に対応可能な範囲での伝達で差し支えない。
 なお、同(二)の居宅介護従業者から適宜受けるサービス提供終了後の報告内容について、サービス提供責任者は、文書にて記録を保存しなければならない。

サービス提供責任者はヘルパー10人に1人の配置で基準を満たしますから(もうひとつの要件はここでは省略)、24時間365日の対応は物理的に不可能、労働基準法違反以前の問題ですから、これは当然でしょう。

この通知の理念からは、常勤のサービス提供責任者の勤務時間外にもサービス提供を行っている場合には、サービス提供責任者の勤務時間内に対応可能な範囲で差し支えない、という考え方もできると思います。


さらにQ&AのVol.1(「障害保険福祉関係主管課長会議資料」H21.3.12別冊)でも同様の部分があります。

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問3-3
 特定事業所加算の要件イ(2)の(二)の「文書等の確実な方法」とはどのような方法か。
(答)直接面接しながら文書を手交する方法のほか、FAX、メール等によることも可能である。
 <なお、利用者に対して24時間365日のサービス提供を行っている事業所においては、サービス提供責任者の勤務時間外にもサービス提供が行われることから、サービス提供責任者の勤務時間内に対応可能な範囲での伝達で差し支えない。>
 また、従業者から適宜受けるサービス提供終了後の報告についてもFAX、メール等によることが可能であるが、報告内容について、サービス提供責任者は、文書にて記録を保存する必要がある。
 ※ 行動援護の特定事業所加筆の要件イ(2)の(ニ)については、下線部を除き、同じ取扱いとする。
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WIKI文法で下線部を表現する方法を知らないので、色を塗ってみました。(< >で囲んだ部分です。)

でも、行動援護は除外されちゃってますね。

行動援護は、主として日中に行われる外出中心のサービスであることから、早朝・夜間・深夜の加算は算定されないので留意されたい。」(留意事項通知)
という国の考え方なので、やむを得ないのかもしれません。

ついでに、重度訪問介護の留意事項通知です(Q&Aも同様の表記があります)。

 543号告示第2号イ(2)(二)の「当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項」とは、少なくとも、次に掲げる事項について、その変化の動向を含め、記載しなければならない。
・利用者のADLや意欲
・利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
・家族を含む環境
前月(又は留意事項等に変更があった時点)のサービス提供時の状況
・その他サービス提供に当たって必要な事項
 また、「毎月定期的」とは、当該サービス提供月の前月末に当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を伝達すること。
 なお、「文書等の確実な方法」とは、直接面接しながら文書を手交する方法のほか、FAX、メール等によることも可能である。

訪問介護、居宅介護などとの違いは、「前回のサービス提供時の状況」ではなく「前月(又は留意事項等に変更があった時点)のサービス提供時の状況」となっていること。
それに、伝達時期が「前月末」となっていることです。


こうしてみると、某所(謎)にコメントしたとおり、
「そのヘルパーが始めて入る時に一度やればいい」というのは不適当、
「1日3回入る場合には3回ともに必ず情報伝達」というのも不適当な場合があると思います。

そうでないと、
老健局は、やはり社援局より能力が低い
と言われかねません。

いずれにせよ、最近のような国が頼りない状況では、

公務員の法令解釈は「官報に何が書いてあるか」が基本であり、公式のQ&Aにすら書いてないおかしな見解(謎)を金科玉条の如く守る必要はない

という考え方もできると思います。全員に勧めるわけではありませんが・・・