ロシア、中国の自国侵略に深い懸念 流出文書で明らかに
Forbes JAPAN 3/4(月) 10:00配信
中国の侵略を撃退するためにロシアがどのように核兵器を使用するかを、英紙フィナンシャル・タイムズのマックス・セドンとクリス・クックが明らかにした。漏出した機密文書を基にしたこの興味深い報道は、力を取り戻した中国がロシアの東部領土の併合を試みるかもしれないと、ロシアが長年深く懸念してきたことを裏づけている。
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アジア全域での中国の行動は、過去のささいな仕打ちや長年にわたる領土の喪失を中国がずっと覚えていることを示している。領土拡大にこだわる中国の民族主義者らは、ロシアの軍事的弱点を中国がますます蔑むようになっていることと相まって、過去の敗北に対する憤りを利用して衰退したロシアに十分歯向かうことができる。
ロシアはこのことを知っており、中国の冒険主義を抑止するのにかなり苦心している。ロシア陸軍が過剰なまでにウクライナに注力しているにもかかわらず、ロシアは昨年、核弾頭の搭載が可能な弾道ミサイル「イスカンデル」の演習を「中国と国境を接する地域」で2回行った。
中国による国境を超えた侵略に核を用いて対応するというロシアの計画の具体的な証拠は、やがて中国が人口の少ないロシア東部の領有権を主張し始め、長い間無視されてきたロシアのアジア系市民を擁護するために手を差し伸べるかもしれないと、ロシアがいかに懸念しているかを明らかにしている。
興味深いことに記事では、ロシアの核を用いて対応するシナリオを、中国軍がロシア領内に侵入した後、主に同軍を標的にする最後の自衛手段ととらえているようだ。これはひどい話だ。このような想定は、欧州重視のロシア軍の幹部らが、アジア系のロシア市民がいるところで核兵器を使用することにほとんど良心の呵責を感じないことを示唆している。
■奇襲阻止で核兵器を使用する要件
フィナンシャル・タイムズの恐れを知らない2人の記者は「2008~14年に作成された29のロシア軍の機密文書」にアクセスした。そこには「戦闘作戦のシミュレーションや、核兵器使用の運用原則を議論する海軍将校向けのプレゼンテーション」が含まれていた。
2人は、ロシアの核兵器使用の要件が非常に緩く設定されていることを発見した。核兵器の使用に踏み込む事態には「ロシアの戦略弾道ミサイル潜水艦の20%、攻撃型原子力潜水艦の30%、巡洋艦3隻以上、あるいはその他のさまざまな陸上の標的の破壊」が含まれていた。
現在のロシアの核抑止力は10年前よりも低下している可能性がある
これらの数字は非常に小さい。ロシアが現在運用する弾道ミサイル潜水艦は11隻のみだ。2隻、あるいは20%を失った場合を要件に設定していることは、ロシアが中国に対して抱えている不安を浮き彫りにしている。攻撃型原子力潜水艦は17隻が就役しており、5隻失えば核攻撃が始まる。米国の戦争計画の策定者らが台湾有事で失うと予想している原子力潜水艦の数に比べれば、ロシアが設定している損失数は極めて少ない。
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現在のロシアの核抑止力は10年前よりも低下している可能性がある。筆者が以前書いたように、ロシアが弱体化し、欧州での動きに気を取られている今、中国は軍事力を用いることなく、ロシアの力がそこまで及んでいない東部の領土を事実上併合する真の機会を手にしている。
中国が突然の領土強奪に動く素地は整っている。中国は長年にわたり、ロシアとの長い国境に関して恨みを鬱積させてきた。多くの中国人の間では、太平洋側に位置するロシア極東地域最大の都市ウラジオストクはロシア名で知られていない。古くからの中国名が今でも広く使われている。中国との経済的・文化的結びつきは無視できないものになりつつある。
ロシア東部の領土権の変更は刻一刻と迫っている。中国は核戦力を急速に増強しており、これによりロシアの核抑止力ははるかに弱くなっている。また、民族的・経済的バランスが変化し続ける中、欧州に注力しているロシアの支配層は日に日に弱体化している。中国はやがて、ロシアがウクライナ南部クリミアで実行した戦略をそのまま流用し、往々にして信頼できない核抑止力に領土保全を託すロシアの望みを砕くために、似たような戦術を用いるかもしれない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/31c64e6d773120ffb0d3c89abff083d58d384377
以前にも書いたことがあったと思いますが、ロシアと国境を接している諸国の中で、国際的に認められているロシア国境を越えて武力侵攻する意図と能力とを持つ国があるとしたら、一国しかないでしょう。
それはウクライナでもフィンランドでもなく、もちろん日本でもなく、中国です。
上の記事にあるようには、中国は容易には軍事力を行使しないでしょうが、潜在的には「沿海州は中華帝国が回復すべき失地」という意識はあると考えられます。
南シナ海の沿岸諸国(フィリピン等)や東シナ海沿岸諸国(日本!)よりも手ごわいと見ているからこそ、ロシアには手を出しにくいとは思いますが。
まあ、南シナ海や東シナ海に比べれば、沿海州方面への中国側の主張は、まだ理解できる可能性はあります(清朝と大英帝国(←こいつもあくどい)とのアヘン戦争などのどさくさで、まあロシアらしいやり口で奪われていますから)。
もっとも、言い分があったとしても国境を越えて武力侵攻することは国連憲章に抵触しますし、中露両国がこのユーラシア大陸東端付近で核兵器などを使用したら、たぶんに日本などにも悪影響が出ますから(偏西風、北西季節風、日本海の汚染など危険性がいっぱい)、けっして望ましいことではないのですが。
ただ、ロシアとしたら、中国が口実を設けて武力侵攻するのではないか、という危惧は実際に持っていてもおかしくはありません。
自分たち(ロシア)がしそうな「悪事」は、相手もする可能性があると思いがちですから。