介護基準改正パブコメ結果2

5(1) 選択制の対象福祉用具の提供に係る利用者等への説明及び提案、(2)[1] 貸与後におけるモニタリングの実施時期等の明確化、[2] モニタリング結果の記録及び介護支援専門員への交付、[3] 選択制の対象福祉用具を貸与した後の貸与継続の必要性の検討、(3)[1] 選択制の対象福祉用具に係る計画の達成状況の確認、[2] 選択制の対象福祉用具に係る販売後のメンテナンス

12 福祉用具貸与であれば、利用者の状態の変化等に応じて、福祉用具を変更することができる。医師にも利用者の身体状況の予後の判断は困難である中、アフターサービスや故障時、身体状況が変化等した場合を考えた時、購入を選択する利用者がどれだけいると考えているのか、専門的知識のない利用者が購入を選ぶのは不合理である。選択制の導入は、介護保険における福祉用具事業者の衰退等により、サービス提供が困難になる道を進むものであり、これらの理由から、選択制の導入には反対である。

 「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会(以下「あり方検討会」という。)」における有識者の議論を踏まえ、経済的合理性等の観点から、過去の給付実態等をもとに、購入した方が自己負担を抑えられる者の割合が相対的に高い一部の種目等を対象として、利用者等の意思決定に基づき、貸与又は販売の選択を可能とする選択制を導入することとしております。
 あり方検討会では、御意見と同様に「利用者自らが身体状況の変化、福祉用具の利用期間等を正しく予測することは困難である」といった意見もあったことから、導入に当たっては、利用者に適時・適切な福祉用具を提供するという観点から、貸与又は販売の選択にかかる支援や、モニタリング・メンテナンス等のあり方等についても議論が行われ、見直し案のとおりとしております。
 貸与と販売の選択制の導入に係る効果や課題等については、引き続き調査・検証を行い、その結果を踏まえ、必要な対応を検討してまいります。


13 選択制の対象福祉用具を提案する際に意見を求める専門職とはどの職種なのか不明である。また、医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえた提案の義務付けは、医師や専門職、事業者等の業務負担を過度に増加させる可能性があり、主治医の意見確認は「必要があれば」にしていただきたい。なお、福祉用具貸与や特定福祉用具販売については、現状において、医師や専門職の意見を必要としていない。
 選択制の対象福祉用具について、利用期間が長期になる保証がない以上、利用者にとって販売を選択するメリットがなく、貸与を提案することになるほか、適切な提案を行った証拠となる資料等を作成し、保管することとなれば、事務作業の煩雑化は不可避である。
 選択制の対象福祉用具を貸与する場合は、本人が十分に説明を受けた上で貸与を希望し、サービス提供を開始したはずであり、「利用開始後6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、貸与継続の必要性について検討を行うことを義務付ける」ことは2度手間と考える。

 あり方検討会において、「利用者自らが身体状況の変化、福祉用具の利用期間等を正しく予測することは困難である」といった御意見があったことを踏まえ、利用者が適切な選択を行えるよう支援する観点から、介護支援専門員や福祉用具専門相談員は、取得可能な医師やリハビリテーション専門職等の意見やサービス担当者会議等による多職種連携で得た判断のもと、貸与又は販売について提案することとしております。医師やリハビリテーション専門職からの意見については、利用者の適切な選択に資するべく、取得することが望ましいと考えますが、取得できない場合は柔軟な取扱いを認めるなど、運用方法については、今後通知等によりお示しする予定です。
 また、選択制の対象福祉用具に係る貸与継続の必要性については、長期利用による過度な自己負担を抑えるといった観点から、利用開始後6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、検討することとしております。
 本制度が現場で円滑に運営されるよう、事務負担の軽減にも配慮した制度設計に努めていくとともに、詳細については、今後通知等でお示しし、十分な周知に努めてまいります。


14 選択制の対象福祉用具の導入時、特定福祉用具販売のみの利用となった場合、ケアマネジャーは、介入してもケアプラン料が得られず、居宅介護支援事業所は経営が立ち行かなくなるのではないか。また、販売後における利用者とケアマネジャー等との関りがなくなってしまうといった、人とのつながりへの影響についても考えるべきである。

 御意見のとおり、利用者が選択制の対象福祉用具について販売を選択し、その他の介護サービスを利用していない場合には、居宅介護支援事業所は居宅介護支援費を算定できませんが、これは、現行の特定福祉用具販売と同様の取扱いです。貸与と販売の選択制の導入に係る効果や課題等については、引き続き調査・検証を行い、その結果を踏まえ、必要な対応を検討してまいります。


15 選択制の対象福祉用具にかかる販売後のメンテナンス等にかかる費用の取り扱いが不明瞭である。
 特定福祉用具販売計画の作成後、当該計画における目標の達成状況を確認することを義務付けるとあるが、無償で対応するということか。
 販売後のサービスは原則として終了しており、追加の指導やメンテナンスは事業者にとって不当な追加負担となるため、修理に関しては理解できるが、それ以外のメンテナンスや指導は適切な範囲内で行うべき。
 現状、一般的には、販売後の支給申請を事業所が代理で行っているほか、販売前のデモ機の試用、それらにかかるコスト等は事業所が負担していることを勘案いただきたい。また、法令等を遵守した質の高いサービス提供の実施に当たって、常識的な価格設定が不可能となり、健全な運営を目指す事業者の事業継続が不可能となる事態を避けていただきたい。
 販売後における目標の達成状況の確認やメンテナンスの対応を求めているが、それに伴う人件費等の事業所経費捻出のため、販売時に諸経費等を商品代金に付加請求できることを強く求めたい。

 販売後のメンテナンス等にかかる費用の取扱いについては、利用者と事業所の個別契約に基づき、決定されるものと考えております。
 なお、あり方検討会においては、
・特定福祉用具販売計画の作成には、福祉用具専門相談員が関与しており、貸与に限らず販売後の状況確認が必要である。
・利用者の安全性の確保を最優先と考えるなら、販売後の重要なステップは使用方法の確認と保守点検の対応である。
 といった意見があり、見直し案はこうした意見等を踏まえたものです。具体的な運用については、今後通知等でお示しし、十分な周知に努めてまいります。


16 選択制の対象福祉用具における販売後の転売対策についてはどう考えているか。また、福祉用具の販売後、不要となった際の粗大ごみの問題もあるが、処分費等は利用者さん負担となるのではないか。世の中のエコやSDGsの流れに逆行するのではなく、今ある資源を有効に活用すべきである。

 購入後に不要となった福祉用具については、現行の特定福祉用具販売と同様に、所有者の責任に基づき、取り扱われるものと考えております。


17 選択制の導入以前に、現状の利益主義的な考えによる福祉用具の商品選定の仕方を考える必要があると考える。例えば、特殊寝台附属品の介助バーが高価格の置き型手すりに変更されている場合を多く目にするが、これは貸与事業所の利益の為か、本当に利用者の為の選択か検証する必要があると考える。

 御意見のとおり、福祉用具貸与の適正化に向けた取組は重要であると考えており、あり方検討会において取りまとめられた対応の方向性を踏まえ、介護保険における福祉用具の選定の判断基準の見直しや自治体向けの点検マニュアルの作成等の対応を行うなど、引き続き、福祉用具の給付の適正化に向けた取組を進めてまいります。


18 購入か貸与か、判断に迷った場合の判断材料が不明瞭のまま、利用者に説明することはできない。選択制の対象福祉用具の提供にかかる利用者等への説明及び提案、販売後の支援のあり方等については詳細を示し、混乱が生じないよう配慮いただきたい。なお、当該提案に当たって、医師に意見を求める必要があるならば、本制度について、医師に周知していただきたい。

 ご意見を踏まえ、本制度が現場で円滑に運営されるよう、幅広い関係者に対し、今後通知等で詳細をお示しし、十分な周知に努めてまいります。


19 選択制の対象福祉用具にかかる販売後のメンテナンスについて、有効期間を定めてほしい。

 メンテナンスを要するタイミングについては、福祉用具の種目・種類や利用者の身体状況等によりそれぞれ異なることから、有効期間を一律に明確化することは検討しておりません。


20 福祉用具の貸与後のモニタリングの実施時期について、現状、おおむね6か月に一回実施されていることと思われるが、わざわざ実施時期を記載するよりも、概ね6か月に1回を目安にする等の指針があるだけで良いのではないか。

 モニタリングを実施する適切な時期については、利用者の状況等に応じて異なると考えられるため、実施時期を記載することとしましたが、今後、実施状況を踏まえ、更に必要な検討を行ってまいります。


21 選択制の対象福祉用具にかかる貸与後のモニタリングについて、「利用開始後6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い」としているが、厳に6月以内と定められると、利用者の入退院やコロナ・インフルエンザ等のやむを得ない理由により実現不可なケースが多発してしまうため、「おおむね」の一言を追加していただかないと、各保険者において厳しい運用がなされ、現場への労力とコストが発生することが考えられる。

 長期利用による過度な自己負担を抑えるといった観点から、利用開始後6月以内に少なくとも1回モニタリングを行うこととしておりますが、ご指摘のように、利用者の入退院等により、6月以内にモニタリングを行うことができない場合も想定されるところ、こうしたやむを得ない理由がある場合には、この限りでないと考えております。こうした取扱いについては、解釈通知等でお示しし、十分な周知に努めてまいります。


22 現行の「ふくせんモニタリングシート」には、次回モニタリング予定日を記入する項目があるが、モニタリング記録票に次回の予定日を記載し、貸与事業所が保管するのであれば、福祉用具貸与計画書に同様の記載をする必要性はないのではないか。

 福祉用具貸与計画の実施状況の把握(モニタリング)を行う時期については、必ず定めるべき事項であると考えていることから、福祉用具貸与計画に記載を義務付けることとしたものです。

 

(つづく)