避難した高齢者の介護サービス利用

令和6年1月19日付け事務連絡「被災高齢者の要介護認定事務の取扱い及び避難先における介護保険サービスの確保のための取扱いについて」
https://to403.web.fc2.com/r6sai/r060119hk.html

 

これは、今回の能登半島地震で被災した高齢者が、他の自治体に避難した場合も、必要な介護保険サービスが受けられるように、柔軟な取り扱いができますよ、という文書です。

 

1)避難先に住民票を移す場合

 

今、他の自治体に避難している高齢者の多くは、住民票などは元の被災自治体に置いたままの方が多いと思います。
ですが、遠方のお子さんの家など、この機会に住民票を移す場合があるかもしれないので、先にその場合について書きます。

要介護認定や要支援認定(以下「要介護認定等」と書きます)転居する場合、前の市町村で発行された受給資格証明書を、新しい市町村に提出すれば、前の要介護度のまま介護サービスが利用できるようになります。
介護保険法第36条)

が、今回の地震で、前の自治体が受給資格証明書を発行できないなどの場合には、氏名・住所・生年月日・これまでの要介護度を申し立てれば、新しい市町村でも要介護認定等を引き継ぐことができます。

 

2)住民票を移さずに避難した場合

 

さて、住民票を動かさずに避難してきた場合。

すでに要介護認定等を受けていたら、避難先の市町村でも介護サービスを受けることは可能です。
(地域密着型サービスの場合、本来なら避難元・避難先の両自治体で手続きが必要ですが、これも事後で可能とされています。)
緊急で避難したり、家が潰れたりして介護保険の被保険者証を持ち出せなかった場合でも、氏名・住所・生年月日+負担割合(利用料の負担が1割~3割のいずれか)を申し立てれば、これまでの要介護度等の限度額で利用可能となります。

 

3)要介護認定等が必要な場合

 

では、新たに要介護認定等が必要な場合。
これは、心身の状態が変化して介護が必要になった場合、介護していた家族が傷病や死亡等で介護できなくなった場合、以前の要介護度等が不明の場合などが考えられます。

避難先市町村が避難元(被災地)から事務委託を受けて要介護認定等の事務を代行することが考えられます。避難先と避難元の自治体間で連絡を取るのがよいのですが、避難元が大変で難しいときは、事後に市町村間の事務手続きを行うことも可能です。

地震により介護認定審査会の委員の確保が困難な場合は、市町村の嘱託医、保健師社会福祉主事資格者等に委嘱することも可能です。
また、委員の定数は最低でも3人以上とされているところ、今回は2人とすることも可能です。

主治医意見書の確保も難しい場合が予想されますが、市町村嘱託医等が主治医意見書を記載することも可能です(傷病名、一次判定に必要な項目、特区事項等のみに限定した記載も可)。

要介護認定等には日数がかかりますが、暫定ケアプランで認定申請の日から介護サービスの利用は可能です。

また、要介護認定等の申請前に緊急に介護サービスを利用する必要があった場合には、市町村の判断で特例介護サービス費を支給することも可能です(介護保険法第42条第1項第1号ほか)。)

要介護認定の結果、非該当その他で自費となる可能性はありますが、その場合、たとえば、市町村の判断で老人福祉法による措置に遡及適用することも可能です。

 

4)要介護認定等の更新が必要な場合

 

要介護認定等の更新申請について
できない場合、地震による影響が落ち着いた後に更新申請しても差し支えありません。

<参考>介護保険法第28条
3 前項<注:要介護更新認定>の申請をすることができる被保険者が、災害その他やむを得ない理由により当該申請に係る要介護認定の有効期間の満了前に当該申請をすることができなかったときは、当該被保険者は、その理由のやんだ日から一月以内に限り、要介護更新認定の申請をすることができる。
<要支援更新認定についても、第33条第3項で同様の規定がある。>