やはり女湯は無理なような

前記事の案件の続きです。


性別変更要件が今後どうなるかは、差し戻された高裁が性器の外観要件(性同一性障害特例法第3条第1項第5号)についてどのような判断をするか(そして、たぶん決着しないだろうから最高裁でどう判断されるか)見ていく必要があるでしょう。

 

ただ、特に男性の身体を女性の外観に近づけるためには、やはり何らかの手術は必要ではないかと思います。
そうすると、男性の生殖腺は女性のそれとは異なり、睾丸として身体外に露出していますから、生殖腺を除去する手術(違憲とされた同第4号)と重なってきます。
ということは、第5号も違憲とされる可能性が高い(表現をぼかしたとしても「可能性が一定程度ある」)と思われます。

 

もちろん、今回の最高裁判断を聞きかじっただけのような男性が、「自分は性自認が女性だから」と主張して女湯に入ろうとしたとしても、番台(または、それに相当する管理席)で拒否することは問題ありません。
それは犯罪者または変態、あるいはその両方です。
そもそも、性同一性障害特例法では、専門医(意訳)2人以上の一致した診断が必要で、違憲とされた要件も審判請求のための条件の一部に過ぎませんから。

また、外観要件について「即時違憲」と主張した裁判官の中にも、公衆浴場事業者が「身体の外観で判断して風紀を維持すること」を是とする見解があります。

 

今回の最高裁判断を受けて、政府でも法改正の準備について動きがあるようですが、私見では、性別について4カテゴリーで分けることが考えられるように思います。

たとえば「社会的に女性」というのは、適合手術を受けなかったとしても、女性として社会活動を行い、あるいは男性と婚姻し(だから、入院や入所の際の保証人、医療侵襲同意などについてパートナーと相互に行える)、周囲にも(一般的な社会活動場面では)女性として認められるような存在です。
一方、公衆浴場等では女湯に入ることはできません。
スポーツ競技会等では、IOCなど競技関係の団体が定めるルールに従うことが原則となります。

なお、他人の前で裸にまではならない場所(更衣室やトイレなど)については、線引きをどうするか検討は必要でしょう。
ただ、経産省のトイレ使用についての最高裁判決(2023.7小法廷)では、トランスジェンダー(女性自認)職員の利用制限は違法としながらも、「不特定多数が利用する公共施設のトイレなどを想定した判断ではない」と裁判長が補足意見を述べています。
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2023/07/12/211450

だから、少なくとも不特定多数の利用する空間については、身体的性別で利用制限することが可能なように思われますし、一般的な女性の理解も得やすいのではないでしょうか。

 

適合手術を受けない「社会的に男性」も同様ですが、こちらの方がいくらか緩くてもよいような感はあります。
(たとえば、性自認が男性で身体的には女性という競技者が男性区分の競技に出た場合に、不当に有利になるとは考えにくい。)

ただ、いずれの場合も、身体的に前の性別のままのトランスジェンダーの男女が、性自認の側の公衆浴場に入ることを強く希望するというようなことは、まずあり得ないのではないでしょうか。

 

そういうことを含めて、法務省の審議会またはそれに相当する会議の場では、当事者の意見(と、それに対する、特に一般女性の意見)を確認していただきたいと思います。