回想十年

昨年も1月4日に書評もどきの記事を書いているので、ことしも昨年読んだ本から。

吉田茂・元首相の『回想十年』。

2022年9月9日第一刷発行の新書版ですが、序文を見ると「昭和三十二年春」とあります。
この「十年」という回想期間がどのような時代で吉田氏が何をしていたかというと・・・

 

終戦までの吉田氏は、外交官や外務次官を歴任したり、憲兵隊に拘束されたり。)
昭和20(1945)年9月 東久邇宮内閣の外相就任。
 同年10月 幣原内閣の外相就任。
昭和21(1946)年5月 首相就任。(第1次吉田内閣)
 同年10月 日本国憲法成立。
 同年11月 日本国憲法公布。
昭和22(1947)年5月 日本国憲法施行。
 同年同月 内閣総辞職(前月の衆議院選挙で社会党が第一党になった)。
昭和23(1948)年10月 首相就任(第2次吉田内閣成立)。
昭和24(1949)年2月 第3次吉田内閣成立。
昭和25(1950)年6月 朝鮮戦争始まる。
昭和26(1951)年9月 サンフランシスコ平和条約日米安保条約
昭和27(1952)年4月 同平和条約発効、GHQ廃止。
 同年10月 第4次吉田内閣成立。
昭和28(1953)年5月 第5次吉田内閣成立。
 同年7月 朝鮮戦争休戦。
昭和29(1954)年7月 自衛隊法施行(それまでから警察予備隊などはあった)。
 同年12月 内閣総辞職

 

今、「未曾有の危機」などという人は政財界などに少なからずいそうですが、それどころではない大変な時代が、この『回想十年』の舞台といえるでしょう。

吉田氏は敗戦後にすぐ首相になったわけではありませんが、新憲法制定や、それに伴うさまざまな社会制度の新設・変更などは、多くが吉田内閣で行われました。
GHQによる占領行政が終わったのも、吉田内閣のときです。

 

人物的な好き嫌いという点では、好みが分かれるかもしれません。
たとえば、安倍晋三氏の方が好感が持てる、評価できる、という人がいても、不思議ではないと思います。

しかしながら、日本の苦難の時代を率いた、吉田茂氏こそが国葬にふさわしい。
それに比べれば、安倍晋三氏や佐藤栄作氏は、少なくとも吉田氏と同等とは言い難い。

私はそう思います。

安倍氏や佐藤氏が国葬にふさわしくない、とは主張するつもりはありません。
ただ、人格や能力ではなく、政治家の業績として比べるのなら、吉田氏が図抜けています。
次に来るとすれば、安倍氏ではなく沖縄返還などを行った佐藤氏。
安倍氏を(たとえば在任期間何年以上というような法による基準によるのではなく)国葬にするのなら、佐藤氏に対しても「国葬にふさわしい人だった」というような公的な意思表示(たとえば国会決議)でもほしいところです。

 

話がそれました。

今、たしかに難しい時代ではあると思います。
ですが、吉田内閣の頃の苦難を思えば、まだまだ明るい気持になって頑張れるのではないか、という気にさせてくれる本のように私は思いました。

ああ、書評というより感想文になってしまいました。