選択別姓・中間報告のまとめ2

(四)別紙夫婦に複数の子がある場合に、子相互間で氏が異なることを認めるか
 ・子の氏が異なることを認めるべきであるとする意見(多数)
   支持:[1]夫婦別氏制の下では、父母の一方と子の氏は異なるのであるから、子相互間の氏が同じであるべき必然性がない
      [2]子の氏をどのようにするかも父母の自律に委ね、子の意思は、子が一定の年齡に達した後に自ら選択することを認めることによって、尊重すれば足りる
      [3]別氏夫婦がそれぞれの氏を次の世代に承継させることを希望するならば、その希望は満たされるべきである など
   批判:[1]夫婦がどのような氏を称するかという問題と、子も含めた家族の呼称をどうするかという問題は、区別して考えるべきである
      [2]子の氏が異なることを認め、これを子の出生時に父母の協議によって定めることとすると、協議をすることができない場合又は協議が調わない場合には、子の氏が定まらないことになる
      [3]子の氏が異なることを認めると、家族が氏を異にする二つの系列に分化し、その間に対立が生ずるおそれがある など
 ・これを認めないとする意見も有力(→報告ではこちらを採用)
   支持:[1]兄弟姉妹間の氏が異なると、子の健全な青成が妨げられるおそれがある
      [2]兄弟姉妹間の氏を統一することが、家族の一体感を確保する上で望ましく、国民の意識にも沿う
      [3]家族には共通の氏が必要であるが、夫婦間で子が統一的に称する氏の定めをすることとすれば、それを家族の共通の氏の定めと見ることができる、[4]制度改正は、現行制度に近い、緩やかな改正が望ましい など
   批判:[1]夫婦の一方の氏を子の氏として定めることは、夫婦間の実質的平等を害する
      [2]別氏夫婦の一方で子と氏を異にする者が、家族単位からはみ出した存在となるおそれがある
      [3]兄弟姉妹間の氏が異なることの違和感は過渡的なもので、これが一般化すれば解消するものであるから、子の福祉への悪影割合を考慮する必要はない
      [4]家族の一体惑は、親子の絆から生まれるものであり、氏の同一によって保たれるものではない など

 

(五)別氏夫婦の実子の氏をいつ・どのように定めるか
 ・子の出生時に父母の協議で定めるべきであるとする意見(多数=試案のB案を支持する立場)
   支持:[1]別氏夫婦の子の氏を統一する必要はなく、そうであれば、子の氏をその出生時に定めるのが適当である
      [2]子の氏をその出生時の事情に応じて選択することができる など
    ※子の氏について父母が協議をすることができない場合又は協議が調わない場合にどうするか
      →別氏を選択する夫婦は子の氏の問題も自覚しているはずであるなどの理由から、子の氏が定まらない事態を考慮する必要はない
      →子の氏の補充的決定方法を定めておく必要性を認める意見
       [1]家庭裁判所の審判により子の氏(又は子の氏の決定権者たる父又は母)を定める
       [2]クジによる
       [3]婚姻時に予備的に子が称する氏を定めておく
       [4]協議が成立しない場合の子の氏を法定する など
      批判:[1]について、家庭裁判所の判断基準が明確でない、[2]について、氏を人格権の一つと捉える理念と矛盾する
 ・夫婦が婚姻の際に定めるものとすべきであるとする意見も有力(→報告ではこちらを採用)
   支持:別氏夫婦の子の氏は統一すべきであるとの立場から、婚姻時に一律に定めるのが望ましい
    →(一部修正)婚姻時に子の氏を定めるものとするが、この定めを婚姻後に変更することを認めるべきであるとする意見も
   批判:[1]婚姻要件を加重することになる
      [2]婚姻時に子の氏を定めることは不適当であり、特に子を儲ける意思がない人たちや子の出生の可能性がない人たちにとっては無用のことである など

 

(六)別氏夫婦の子について、父母の婚姻中に子の氏を他方の親の氏に変更することを認めるか
 ・認めない(多数=試案A・B・Cとも認めていない)
   支持:必要性がない、これを認める場合に弊害がある
      [1]個人の特定という氏の社会的機能を損ない、呼称秩序の安定を害する
      [2]子の人格形成の途上での氏変更は、子の福祉を害するおそれがある
      [3]父又は母の氏を選択する形での氏変更を認めると、子が父方又は母方の親族関係・財産関係をめぐる利害問題に巻き込まれるなど、氏の系列化による問題が生ずる など
 ・子が一定の年齢に達した時は、子に氏の選択権を認めるべき(B案を支持する立場)
   支持:[1]子が一定の年齡に達した後は、その氏変更が子の福祉を害するおそれはなく、これを禁止する必要はない
      [2]氏に対する子の意思を尊重すべきである、など
     →「一定の年齢」を何歳にすべきか:試案のB案と同じ二〇歳、満一五歳、婚姻最低年齢、など
 ・一股的に認めるべき(少数)

 

(七)別氏夫婦を養親とする緯組をする場合、養子の氏をどのように定めるか
 ・縁組時における当事者の協議によって定める(多数=B案を支持する立場)
 ・養親が婚姻の際に定めた子の称する氏を称するものとすべき(A案を支持し、別氏夫婦の子の氏は統一すべきとする立場)
 ・養親の氏又は養子の縁組前の氏から選択すべき

 

(八)選択的夫婦別氏制が導入された場合、現行法の下で成立した夫婦についても別氏を称することを認めるか
  積極意見が大半
   ・試案と同様に、改正法の経過規定によって別氏を称することを認めるとする意見
    →試案が転換可能な期間を一年としている点(一年より長い期間が必要であるとする意見)
     配偶者との共同の届出によるとしている点(婚姻前の氏に復する者の単独の届出によるべきであるとする意見)なども
   ・一股的に同氏・別氏の転換を認める制度によるべきとする意見
  ※試案のB案は、現行法の下で婚姻した夫婦が別氏夫婦に転換した場合、その夫婦の子で父又は母と氏を異にする者は、父母の氏の転換の時から三か月以内に届け出ることによって氏を変更することができるとしている
    →改正法施行後に別氏を称して婚姻する者との均衡を図るため、この種の氏変更を認めるべきであるとする意見、
     いったん定まった子の氏を変更することは、子の氏名権を侵害するものであり、認めるべきでないとする意見 など

 

(ここまで)