「第12報」は違法では?

新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」の(第12報)は、こちらの記事から
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2020/06/04/213511

断続的にいくつか書いてきました。

 

この評判の良くない事務連絡については、いろいろツッコミどころがあります。

 

ざっと考えただけでも、
・計算がわかりにくい。利用者にも説明しにくい。
・条件が同じでも、利用者が同意しないと算定できない。同意する人としない人と不公平である。事務的にも煩雑である。
・実績が出ないと利用者の実負担額が確定しない。
・利用量が変わらないのに支給限度基準額をオーバーする場合がある。
 (注:生活保護の介護扶助では支給限度基準額オーバーは原則認められない。)
・通所系と短期入所系だけの優遇である。類似サービス(小規模多機能型の通い・宿泊、特定施設やグループホームの短期利用など)にはない。
などが気になります。

 

それ以前に、介護保険法に違反しているのではないか、という疑いがあります。

この「第12報」は、これまでの「臨時的な取扱い」とは異質です。
第11報までは、あくまで運用の話です。
災害など事業者の責ではない事由によってサービス提供時間が短くなった場合、計画どおりの時間区分により報酬算定してもよい、というのは、これまでに何回も出てきている取扱いです。
通所サービスの提供の代わりに訪問サービスで報酬算定可、というのは、かなりイレギュラーではありますが、こういう非常事態の臨時的取扱いとしては、まだ制度解釈や運用の範囲内、といえないこともありません。

ところが、「2区分上位の報酬算定」というのは、実質的に報酬改定(報酬アップ)の効果があります。
これは、もはや運用の範囲内とは言い難いでしょう。

 

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介護保険法第40条
4 居宅介護サービス費の額は、次の各号に掲げる居宅サービスの区分に応じ、当該各号に定める額とする。
 一 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション及び福祉用具貸与 これらの居宅サービスの種類ごとに、・・・平均的な費用・・・の額を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額・・・の百分の九十に相当する額
 二 短期入所生活介護、短期入所療養介護及び特定施設入居者生活介護 これらの居宅サービスの種類ごとに、・・・平均的な費用・・・の額を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額・・・の百分の九十に相当する額
5 厚生労働大臣は、前項各号の基準を定めようとするときは、あらかじめ社会保障審議会の意見を聴かなければならない。

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費用の額の基準(報酬基準)を定めようとするときは、あらかじめ社会保障審議会の意見を聴かなければならない、のです。

 

実は、6月1日に第177回社会保障審議会介護給付費分科会がオンラインで開催されていますが、
介護保険における新型コロナウイルス感染症に関する主な対応(報告)」は議題に入っているものの、公開されている資料を見る限りでは第11報までの概要が入っているだけで、今回の第12報の内容は見当たりません。

議事録がアップされていないので、絶対に、とまでは言いませんが、この第12報の実質報酬改定に相当する取扱いについては、介護保険法第40条第5項の手続きを欠き、違法ではないかと私は思います。

ちなみに、第12報は「厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室/高齢者支援課/振興課/老人保健課」の4課室連名の事務連絡で、官報に載っていないのはもちろん、局長名等での正式通知ですらありません。


いや、この非常時ですから、内容さえ、もう少しましなものだったら、それでもよいのでしょうが・・・