平成21年度障害福祉サービス報酬改定のための関係告示の改正について
1 総論
介護保険のパブリックコメントでも書きましたが、今回の改定案を含めて、現在の報酬についての考え方は、原価要因(事業者のコストによるもの)が主であり、それに政策的要因が加味されている状況です。利用者が受ける効用(効用要因)はほとんど反映されていません。たとえば、訪問サービスに中山間地域の15%加算が新設されますが、利用者が得られる効用としては、他地域に比べて何ら変わりません。これでは、利用者負担が15%増えることは理解が得られません。低所得者層だけでなく、一般世帯についても利用者負担を軽減すべきです。
2 サービスごとの各論
(1)居宅介護の家事援助
居宅介護の家事援助には同居家族がある場合の制限規定があります。今回の改定分には直接関係がありませんが、私の記憶では一度も国民の意見が聴かれていない事項なので、あえて書きます。障害者の同居家族は、高齢化した親世代であることが多く、また、障害者の自立を支援する法の趣旨を考えると、この制限は削除を検討すべきです。介護保険(訪問介護)の生活援助の取扱いに合わせる必要はありません。
(2)居宅介護、重度訪問介護、行動援護の特定事業所加算
この3種類のサービスの特定事業所加算には、介護保険(訪問介護)の同種の加算の要件と異なる部分があります。その理由を明確に説明するべきです。また、事業者や利用者が混乱しないように、各サービスでの加算要件の相違について通知等で注意喚起した方がよいと思います。(3)移動支援の取扱い
平成20年12月16日の社会保障審議会・障害者部会報告で、「重度の視覚障害者の同行支援について自立支援給付とするなど、自立支援給付の対象を拡大することを検討すべき」と提言されています。もともとガイドヘルプは居宅介護(ホームヘルプサービス)の中に含まれていました。地域生活支援事業ではなく、財源について国が責任を持つ自立支援給付(個別給付)の中に位置付けるべきです。また、自治体によっては、「居宅介護等と移動支援とは全く別の事業」という見解で、「居宅介護等のサービス提供責任者が移動支援に従事する場合には専従要件に抵触する」としているという情報もあります。現時点での個別給付化が困難なら、居宅介護等と移動支援とは本来一体となって行うことが適当なサービスであり、「居宅介護等のサービス提供責任者が移動支援に従事していても専従要件には抵触しない」ことを通知等に明記すべきです。
(4)児童デイサービス等の欠席時対応加算
要件となっている「サービス利用を予定していた日に急病等によりその利用の中止があった場合」については、介護保険も含め、キャンセル料は請求しないというのが一般的な考え方です。利用者側の都合による欠席ならまだしも、急病時等に実際には利用していないのに利用者負担も増となることについては、利用者(保護者)の理解が得られません。そもそも、児童デイサービスで利用者負担を取ることには疑問があります。障害者(児)サービスについては、応益負担か応能負担か議論があるようですが、応益負担の立場であっても、児童デイサービスの最大の受益者は社会全体と考えるべきです。ハンディキャップをもった子どもを、社会でその能力を発揮できるように育成することは、社会全体の利益にかなうことです。
この児童デイサービスの利用者負担の問題については、「障害者自立支援法に係る政省令で定める事項」(平成18年4月1日施行分)に関するパブリックコメントでも意見を提出しましたが、平成17年12月19日付けの公表の際には回答がありませんでしたので、再度申し上げます。