震災直後の統計1

「統計から被災地の介護保険を見る」のシリーズ(1~10)では、東日本大震災前年(平成22年)から毎年11月の介護保険事業状況報告の月報(暫定版)を見てきました。

今回は、震災の直前から直後について、同じ月報で見ていくことにします。

まず、1号被保険者数の推移です。
津波の影響があったと思われる、岩手・宮城・福島の3県(介護保険)保険者のうち、太平洋沿岸のものを主な対象としました。
(青森や茨城など他の県でも影響がありましたが、今回は前述3県だけにしぼっています。)
また、海に面していなくても、原発事故の避難指示などで大きな影響があったと思われる保険者も追加しました。
下表で、保険者名を黄色で塗っているのが内陸の原発事故関係自治体、緑色で塗っているのが津波原発事故の両方の影響があった自治体です。

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二重線で仕切った左側は、平成23年1月末の1号被保険者数です(単位:円)。
その右側、23年2月から24年6月までは、23年1月の値を100とした比較用の数値です。
つまり、100より大きければ23年1月より増加し、100より小さければ減少していることになります。

空欄が目につきますね。
陸前高田市では、23年2月から10月までが空欄です。
大槌町、女川町、山元町にも空欄があります。
大災害のため、介護保険事業状況報告どころではなかった期間です。
(震災前の2月から影響が出ているのは、実際に報告を行うのは翌月になってからのため。)

緑色や黄色の原発事故関係地域は、もっと長期に渡って空欄が続いている自治体があります。
震災の翌年、24年6月月報になって、やっと全ての自治体で復活しました。

この表の空欄は、それ自体が震災と原発事故の影響の大きさを物語るものとなっています。
そんな中で、これらの報告を送り続けた自治体職員、ひとたびは断絶してもまた復活させた人たちには敬意を表せずにはいられません。

さて、この表の期間中、全国レベルでは1号被保険者数は徐々に増加しています。
ですが、3県の沿岸部や原発事故関連地域では、減少している保険者が少なくありません。
一時的な避難なら住民票を動かさない場合が多いとすると、「一時的」ではない転出、あるいは死亡などが考えられます。

なお、震災が起きた23年3月を少しはっきり目の線で囲んでいますが、1号被保険者数の減少は、この3月のみに起こっているわけではありません。
そうではなく、ずっと後になってからも減少が続いている自治体があることに留意する必要があります。

(つづく)