認知症に関する社会的費用

認知症患者500万人、「社会費用」年14.5兆円に

(2015年5月29日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=119226

 認知症にかかる医療・介護費と家族介護の負担も含めた「社会的費用」が、年間14・5兆円に上ることが、厚生労働省の研究班(代表・佐渡充洋 慶応大助教)の推計で初めて明らかになった。

 家族介護の負担は年6・2兆円と、費用全体の4割超を占めた。認知症の人は約500万人に上り、政府は今年1月に認知症国家戦略を策定したが、家族の負担軽減策を急ぐなど、政策の強化が求められそうだ。

 推計は、医療・介護サービスを利用している認知症の人を対象に、2014年時点の1年間の費用を計算した。医療・介護費は、国の医療保険介護保険などのデータを基に計算。医療費は年1・9兆円、介護費は年6・4兆円に上った。

 一方、家族による介護負担の費用は、家族約1500人について、実際に介護にかけた時間を調査。認知症の人1人当たり平均で年間延べ1300時間を費やしていた。このうち、トイレ介助などは、介護保険サービスの費用に置き換え、1時間当たり4955円で計算。食事の支度などは、介護をする代わりに働いていれば得られた賃金として、1時間当たり965円で換算した。その結果、認知症の人1人当たりの家族介護の費用は年間382万円。全体では6・2兆円と、認知症の人が使う介護保険の費用に匹敵した。

 将来推計では、団塊の世代が85歳以上になる35年には総額22兆9244億円にまで膨らむと試算した。

この後、さらに
今回の推計は医療・介護費や家族負担に限定されたもので、詐欺被害や徘徊中の事故、見守りの負担も含めれば、将来的には、費用がどこまで膨らむか想像も付かない。
などという部分もあります。


介護サービス費の4,955円、介護する代わりに働いた場合の賃金965円という時間単価の算出根拠がわからないのですが、仮に(家族には代替しにくい医療費を除いて)介護サービスと家族介護だけで計算すると、

 6.2兆/(6.4兆+6.2兆)=約49%

となります。

利用者負担1割を2割に引き上げる、とかいうレベルではありませんね。

もうひとつ。
労働力という観点でいえば、

 1,300時間×500万人=65万時間
  →8時間換算で、81,250人日分の労働力が失われている、という考え方も可能です。

まあ、このあたりは、家族介護がなかったら、介護サービス事業所等の求人がさらに増えるということになるので、あまり厳密なものではありませんが、それでも、社会的費用を考えるのなら、労働力問題も無視できるものではないと思います。