書評:「命のビザを繋いだ男」

記事タイトルは短くしていますが、正確に紹介すれば、

「命のビザを繋いだ男 小辻節三とユダヤ難民」(山田純大・著)NHK出版


という本です。

歴史街道」2013年11月号の「杉原千畝とサムライたち」という特集記事について触れましたが、
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32515749.html

ナチスドイツの迫害から多くのユダヤ難民を救済した命のリレー、杉原千畝、根井三郎、小辻節三。

リトアニアの杉原が(本国の訓令に反して)大量のユダヤ難民にビザを発給し、
ウラジオストックの根井が(これまた本国の訓令に反して)かれらを受け入れた。

かれら外交官たちによってユダヤ難民の命はつながれましたが、しかしビザの日本滞在期間は限られたものでした。

その期間延長などに尽力した小辻節三を取り扱ったのが、この本です。

杉原千畝については、奥様など同時代を知る人の証言もあり(著作物も複数あります)、知る人には知られていますが、小辻節三については、日本ではほとんど知られていないといってよいでしょう。

著者は、英文で出版された自伝を読み、小辻の娘さんたちを訪ね、イスラエルでも証言者を捜し、
小辻の生涯を明らかにしようと努力します。

著者の本業は俳優ということになりますが、そういうことを意識せず、すぐれたドキュメンタリーとして、ほぼ一気に読んでしまいました。

図書館の「アンネの日記」など、ユダヤ人関連の書籍が大量に破られるという事件が起こったりしていますが、日本人にも小辻のような人たちがいた、ということは、国内でも国外でももっと知られてよいと思います。