震災復興・財産管理制度Q&A3

問10
 「不在」であることに関して,家庭裁判所はどのような審理をしますか。
 家庭裁判所は,申立書や所在不明となった事実を裏付ける資料を確認した上で,必要に応じて申立人から事情を聴取し,さらに,関係官署に照会したり,不在者の親族に照会したりします(申立人(自治体)において,すでに親族への照会を行っている場合には親族照会をしないことがあります。)。

問11
 不在者財産管理人の選任を申し立ててから不在者財産管理人が選任されるまでには,どれくらいの時間がかかりますか。
 必要な資料が揃っており,承諾を得ている専門職の不在者財産管理人候補者が推薦されている場合では,2週間程度と見込まれます。

問12
 不在者財産管理人は,どのような職務を行うのですか。
 主な職務は,不在者のために,財産を管理し,財産目録を作り,家庭裁判所に報告することです。就任後,概ね1か月以内に,不在者の財産を調査して,財産目録や管理報告書を作成し,家庭裁判所に提出していただきます。その後も,家庭裁判所から定期的に不在者の財産状況の報告を求められます。
 なお,不在者財産管理人が本人の財産を不正に費消した場合などには,財産管理人を解任されるほか,損害賠償請求を受けるなど民事上の責任を問われたり,業務上横領などの罪で刑事責任を問われたりすることもあります。

問13
 不在者財産管理人が選任された後,自治体が用地を買収するためにはどのような手続が必要ですか。
 「権限外行為許可」という手続が必要となります。不在者財産管理人は,民法103条に定められた権限を持っていますが,それは主に財産を保存することです。遺産分割協議をしたり,不在者の財産を処分したりする行為は,不在者財産管理人の権限を超えていますので,このような行為が必要な場合は,別に家庭裁判所の許可が必要となります。

引用者のおせっかいなコメント:
 民法第103条は、「権限の定めのない代理人の権限」についての条文です。

第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
 一 保存行為
 二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

問14
 権限外行為許可の申立ての際にどのような書類や資料が必要ですか。費用はどれくらいかかりますか。
 自治体が復興事業における用地取得のために不在者財産管理人との間で売買契約を締結する場合には,売買契約書案や売買代金が適正であることがわかる資料(土地評価調書の写し等)が必要です。また,買収の対象となる土地の所有者が死亡しており,不在者を含む相続人間で遺産分割協議を行う場合には,売買代金に関する資料を含む売買契約書案に加えて,遺産分割協議書案が必要です。
 この申立てをするための費用としては,申立手数料として収入印紙800円分と,郵券90円分が必要です。

問15
 権限外行為許可の申立てをしてから審判がされるまでどれくらいの時間がかかりますか。
 必要な書類・資料が揃っていれば,1週間程度と見込まれます。


問16
 不在者財産管理人の職務は,いつまで続くことになるのですか。
 不在者が現れたとき,不在者について失踪宣告がされたとき,不在者が死亡したことが確認されたとき,不在者の財産がなくなったとき等まで,財産管理人の職務は続くことになります。申立てのきっかけとなった事業用地の買収を果たしたら終わりというものではありません。
 不在者が現れたときには不在者であった者に,不在者について失踪宣告がされたり不在者の死亡が明らかになったときは不在者の相続人に,それぞれ財産を引き継ぐことになります。

(つづく)