共生型介護

たまたま、NHK総合テレビのクローズアップ現代を見ていました。

失われた力を呼び覚ませ
 “共生型介護”

一人で立てなかった高齢者が幼児の手を引いて階段を登った。家事をしなくなった80代女性が身体障害者の食事介助を始めた。今、高齢者の失われた力を呼び戻すとして注目を集めているのが、高齢者、子ども、障害者などを幅広く受け入れて一緒にケアする"共生型介護"だ。既存の施設ではサービスの受け手でしかなかった高齢者が「子どもの世話」、「障害者の介助」など「役割」を得ることが、驚異の回復の鍵だとみられている。しかし、これまで高齢者や障害者を別々にケアしてきた国や多くの自治体では、"共生型"は積極的には支援していない。縦割り行政の壁を前に、開設を断念するケースも少なくないという。"共生型介護"は広がるのか、その可能性と課題を探る。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2009/0912-2.html#wed
(すみません。フレームページなので、やむを得ず、直リンクを貼りました。)

放映の趣旨については文句ないのですが、気になったことがあります。

縦割り行政の壁の例として、高齢者用(介護保険)、障害者用、それぞれに独立した出入り口が必要、というような話が出ていました。

え? そんなこと、どの法令に書いてありましたか?


たとえば、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の通所介護(デイサービス)の設備基準を見てみましょう。

第九十五条 指定通所介護事業所は、食堂、機能訓練室、静養室、相談室及び事務室を有するほか、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備並びに指定通所介護の提供に必要なその他の設備及び備品等を備えなければならない。

2 前項に掲げる設備の基準は、次のとおりとする。
 一 食堂及び機能訓練室
  イ 食堂及び機能訓練室は、それぞれ必要な広さを有するものとし、その合計した面積は、三平方メートルに利用定員を乗じて得た面積以上とすること。
  ロ イにかかわらず、食堂及び機能訓練室は、食事の提供の際にはその提供に支障がない広さを確保でき、かつ、機能訓練を行う際にはその実施に支障がない広さを確保できる場合にあっては、同一の場所とすることができる。
 二 相談室 遮へい物の設置等により相談の内容が漏えいしないよう配慮されていること。

3 第一項に掲げる設備は、専ら当該指定通所介護の事業の用に供するものでなければならない。ただし、利用者に対する指定通所介護の提供に支障がない場合は、この限りでない。

4 指定通所介護事業者が指定介護予防通所介護事業者の指定を併せて受け、かつ、指定通所介護の事業と指定介護予防通所介護の事業とが同一の事業所において一体的に運営されている場合については、指定介護予防サービス等基準第九十九条第一項から第三項までに規定する設備に関する基準を満たすことをもって、前三項に規定する基準を満たしているものとみなすことができる。

食堂、機能訓練室、静養室、相談室、事務室、非常災害に際して必要な設備(消火設備など)、その他の設備及び備品等
を備えなければなりませんし、それらの設備は、専ら通所介護に使うためのものであるのが原則ですが、
利用者に対する指定通所介護の提供に支障がない場合は、この限りでない
とも明記されています。

「独立した入り口でないと支障がある」という根拠は何でしょうか?


他のサービス、たとえば、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、障害福祉サービスの生活介護など、ついでに児童福祉施設最低基準、いずれも、「他法のサービス利用者と異なる専用の出入り口が必要」という規定は見つけられませんでした。

取材を受けた自治体や、場合によっては厚生労働省の担当者が、法令にない思い込みをしているのか、
それとも、NHKの取材や構成の仕方に問題があったのか?

ひょっとしたら、私が知らないウラ基準があるのか???