「衆院解散」の声は下火になったが1

表題に書いたとおりで、状況は変わってきているとは思います。

「広島サミット成功で内閣支持率が上がってきているから衆議院を解散すべき」
などという声が自民党内から出ていました。
(岸田首相は「解散は考えていない」とは語っていましたが。)

その後、マイナンバーカードがらみのミスが続出し、首相の息子である首相秘書官が首相公邸で忘年会を行って公の部分で写真を撮った件が報道され、おまけに東京都内の選挙区で自公の選挙協力が崩壊しそうな状況。
さすがに解散を求める声は下火になったようです。

 

という状況ではありますが、「サミット成功で衆院解散」という発想自体について、考察してみます。

まず、広島サミット以前の話から。

 

1 首相のウクライナ訪問は、本当に「電撃」だったのか?


時事通信 2023-03-23 19:45政治
警護・情報管理、野党が疑問視=「電撃訪問」岸田首相は成果訴え

 参院予算委員会は23日、外交を主なテーマとする集中審議を行い、ウクライナ電撃訪問から帰国した直後の岸田文雄首相が出席した。
(略)
 野党が問題視したのは、首都キーウ(キエフ)に向かう中継地点となったポーランドの駅で列車に乗り込む首相の様子をNHKと日本テレビが撮影していたことだ。田名部氏は「電撃だったのか。安全確保や情報管理に問題があったのではないか」と追及。日本維新の会の浅田均氏は「(カメラマンが)スナイパーだったら一発で狙われる」と批判した。
 首相は「安全対策、危機管理対策、情報管理に万全を期しており、今回の対応に特段問題があったとは考えていない」と反論したが、具体的な根拠は示さなかった。
(以下略)
https://sp.m.jiji.com/article/show/2915476

 

NHKと日テレが撮影した件については、首相官邸側の意図的なリークという見方もあります。

 

岸田首相ウクライナ電撃訪問 列車に乗り込む映像をNHKと日テレが撮れたのは「意図的なリーク」辛坊治郎が持論
ニッポン放送 3/21(火) 19:25配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d0f4fa360e3452f630e877aa85f44a99655c356


どっちでもいいです。映像を流すのが、首相のウクライナ訪問後(少なくともキーウ到着が発表されてから)だったなら。

問題は、キーウ到着前に映像が流されたこと。
NHKや日テレが悪いのか、官邸側も了解していたのかわかりませんが(上の時事通信の生地でも明らかになっていない)、情報管理して欧米諸国のキーウ訪問より明確に劣ります。
これを「電撃訪問」などという官邸もマスメディアも頭がおかしい。

私は、ポーランドでの映像が流れてから、首相がキーウに到着したというニュースが出るまでの間がとても長く感じました。
ロシアに事前通知しているかどうかではなく、不測の事態のこと、たとえばロシア政府の指示に必ずしも従わないようなテロ集団もないとはいえないのです。


2 広島サミットは成功したのか?

 

サーロー節子さんのように、被爆者側から「広島サミットは失敗だったと思う」という声が出るのは、理解できないことはありません。
しかし、現実的に、サミットでの表明以上のことは、今は難しいでしょう。

以前にも書いたように、米英仏や印パ、イスラエルなどは、選挙で政権交代が起きる可能性が一応はあります。
中露鮮などは、たとえ西側諸国などが核放棄したとしても、互い(特に中露間)の信頼感はなく、他国が全て放棄するまでは自国の核放棄は考えもしないでしょう。ロシアは通常兵器でNATOなどに劣っていることが明確になりましたから、たとえばゴルバチョフ氏のような指導者が突然変異的に権力を握るようなことでもない限り、最後の一国となっても核放棄しない可能性が高いと思います。

西側の核保有国にしても、原爆資料館で核被害の悲惨さを深く知るほど、自国が核兵器を先制使用しないことは当然としても、他国の核兵器から自国民を守ることも考えざるを得ないでしょう。
「自分たちが核放棄したら、他国も核攻撃しないはず」などという考え方は、世界の大多数の国では通用しないでしょう。

 

という状況の中で、それでも多くの国々の指導者が原爆資料館の展示を見て、被爆者の声を聴いて、それが世界にニュースとして伝わったということは、やはり成功だったと私は思います。

ただ、その成功が岸田首相の、少なくとも多大な努力のおかげ、とまではいえないかな。
日本の首相だったら、誰でもこれぐらいのことはしてほしい。
鳩山由紀夫氏や、鈴木宗男氏が首相だったら無理ですが。
多大な努力、というか勇気と決断力があったとすれば、ゼレンスキー大統領でしょう。
彼を批判する声があるのは知っていますが、少なくとも今の状況の中で極東の島国まで実際に足を運ぶ決断をしたことは評価されてもいいと思います。

ということで、サミットは成功といえますが、だからといって次の国政選挙で自民党の表が必ず増えるというほどの功績があったわけではない、と考えます。

 

(つづく)