太陽光が原発より安価に(経産省)

太陽光が原発抑え発電コスト最安に 経産省2030年試算
西日本新聞 2021/7/13 6:00 (2021/7/13 18:00 更新)

 経済産業省は12日、2030年時点の電源別の発電コストについて新たな試算結果を公表した。1キロワット時当たりの費用は、太陽光(事業用)が8円台前半~11円台後半で最も安くなり、これまで最安とされた原子力を下回った。太陽光は普及が進んでパネルなどの価格低下が予想される一方、原子力は安全対策費用などでコストが増加すると見込んだ。

 試算は6年ぶり。15年の前回同様、30年時点で新たな発電施設を建設、運転した場合に想定されるコストとして計算した。太陽光の発電コストが原子力を下回るとの試算を同省が示したのは初めてで、試算結果は改定作業中の政策指針「エネルギー基本計画」の電源構成に反映される。

 太陽光(事業用)は15年試算で1キロワット時当たり12・7~15・6円だったが、国際機関の予測などで今後も設備費の低下が見込まれることから、4円超下がった。再生可能エネルギーの風力もコスト低下を見込み、陸上風力は前回より4円超安い9円台後半~17円台前半、洋上風力は4~8円ほど安い26円台前半とした。

 原子力は前回試算では10・3円以上とされていたが、今回は11円台後半以上と見込んだ。テロ対策施設の建設など新たな安全対策費用が原発1基当たり1369億円増えるほか、使用済み核燃料の再処理事業への拠出金などが増加する。

 太陽光や風力のコスト低下は再生エネ拡大に追い風となるが、発電量の変動に対応するため、電力供給の調整が必要になる。経産省は今回、太陽光や風力が全発電量の20%を占めた場合、こうした調整費用に年間1兆900億円かかるとする試算も公表した。

 一方、原子力の発電コストについても、費用が適切に反映されていないとの指摘がある。龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は、事故リスク費用の算定根拠となっている東京電力福島第1原発事故の被害額が今後も増える可能性に触れ「原発のコストは不確実な面が多く、後から膨らむ可能性がある」としている。
(石田剛)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/769380/

 


前回(2015年04月27日の経産省公表)までのように「原子力が最安」などと馬鹿なことを言ってないだけマシになった、という見方もありますが・・・

そもそも、前回が、原子力に不利な要素を除外した、欠陥試算でした。

記事中にもある、原発事故の被害額の増大の可能性はもちろんですが、原発燃料である放射性廃棄物の処分方法が確定されておらず、その処分費用が含まれていない試算で「10・3円以上」とか「11円台後半以上」と数字を出しても意味ないでしょう。

「うちの所有地にどうぞ」って言って、原野でも山林でも提供してくれるような奇特な方は、電力会社経営陣や自民党関係者にもないですよね?

 

なお、「太陽光が一番」と断言する立場には私は立っておりません、今のところ。
(全ての太陽光発電業者が、というわけではありませんが、太陽光パネルを置くために切り開いた山林などで、豪雨時の保水力の低下が危惧されるようなケースがないか、気になるところです。)

原発のコストが(経産省などが主張するより)ずっと高いのは間違いないところだとは思いますが。


<参考>
まだ「原発が安い」って言ってる人々(前回試算関連記事)
https://jukeizukoubou.blog.fc2.com/blog-entry-1876.html

 

発電コスト・大島試算
https://jukeizukoubou.blog.fc2.com/blog-entry-677.html

(以下、↑の一部再掲)

1999年12月に発表された最新値では原子力が5.9 円/kWhとされ最も安い電源とされているが、この要因は、一定の理想的モデルプラントを想定し、原子力に相対的に有利な条件をおいて計算を行っているからではないかと推測される。とりわけ水力発電単価が13.6円/kWhとされている点は、計算方法の違いを考慮しても疑問を抱かざるを得ない。

また水力、火力、原子力の3つの電源を比較する上で重要なことは、原子力にはいまだにコスト算入されていないものがあることである。それは具体的には各種の放射性廃棄物処分費用であり、とりわけ高レベル放射性廃棄物については未知数なものが多い。また廃炉費用については解体費としては引当金というかたちで費用算入されているものの、解体にともなって発生する放射性廃棄物の処分費用については原価に算入されていない。これらのいわゆるバックエンド対策費は今後原子力の経済性を悪化させることになろう。これに加えて国家財政からの莫大な資金投入を加えるならば、3つの電源中、原子力は社会的にみて最もコストの高いものと考えられる。