新型コロナウイルス・24時間以内の火葬

本日、佐藤正久氏がフジテレビ系の「日曜報道 THE PRIME」で、新型コロナウイルス感染症で亡くなった方の遺体は24時間以内に火葬しなければならない、という趣旨の発言をしていました。

誤解が生じやすいところですが、実は、必ずしも24時間以内に火葬しなければならないわけではありません。

 

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新型コロナウイルスに関するQ&A(関連業種の方向け)
令和2年4月2日時点版
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou.html

3 遺体等を取り扱う方へ

問1 新型コロナウイルスにより亡くなられた方の遺体は、24時間以内に火葬しなければならないのですか。

新型コロナウイルスにより亡くなられた方の遺体は、24時間以内に火葬することができるとされており、必須ではありません感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第30条第3項、新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令第3条)。感染拡大防止対策上の支障等がない場合には、通常の葬儀の実施など、できる限り遺族の意向等を尊重した取扱をする必要があります。

(参考)
新型インフルエンザ等対策ガイドライン」(平成25年6月26日(平成30年6月21日一部改定)新型インフルエンザ等及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議)における「X 埋火葬の円滑な実施に関するガイドライン」の「第1章 始めに」(P209)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/keikaku/pdf/h300621gl_guideline.pdf

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「感染拡大防止対策上の支障等がない場合」というのも難しい判断だろうなと思いますが、もちろん、火葬に従事する方も大変で、その次のQ&Aにはこう書かれています。

 

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問2 新型コロナウイルスにより亡くなった方の遺体の搬送作業や火葬作業に従事する者が留意すべき事項はありますか。

 遺体の搬送や火葬場における火葬に際しては、遺体からの感染を防ぐため、遺体について全体を覆う非透過性納体袋に収容・密封することが望ましいです。遺体を非透過性納体袋に収容・密封後に、納体袋の表面を消毒してください。遺族等の意向にも配意しつつ、極力そのままの状態で火葬するよう努めてください。
 また、遺体の搬送に際し、遺体が非透過性納体袋に収容、密封されている限りにおいては、特別の感染防止策は不要であり、遺体の搬送を遺族等が行うことも差し支えありません。
 他方、継続的に遺体の搬送作業及び火葬作業に従事する者にあっては、必ず手袋を着用し、血液・体液・分泌物(汗を除く。)・排泄物などが顔に飛散するおそれのある場合には、不織布製マスク、眼の防護(フェイスシールド又はゴーグル)を使用してください。衣服への汚染を避けるため、ディスポーザブルの長袖ガウンの着用が望ましいです。また、これらの器具が汚染された場合には、単回使用のものは適切に廃棄し、再利用するものは適切な消毒を行ってください。
 火葬に先立ち、遺族等が遺体に直接触れることを希望する場合には、遺族等に手袋等の着用をお願いしてください。
 万が一、遺体の体液等で汚染された場合など、消毒を行う必要が生じた場合には、消毒に用いる薬品は、0.05~0.5%(500~5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭*、または30分間浸漬、アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)で清拭、または30分間浸漬とし、消毒法は、消毒薬を十分に浸した布又はペーパータオル等で当該箇所を満遍なく拭く方法が望まれます。消毒剤の噴霧は不完全な消毒やウイルスの舞い上がりを招く可能性があり、推奨しません。また、可燃性のある消毒薬を使用する場合については火気のある場所で行わないようにしてください。
手指衛生は、感染防止策の基本であり、遺体に接触、あるいは消毒措置を講じた際等には、手袋を外した後に流水・石鹸による手洗い又は速乾性擦式消毒用アルコール製剤による手指衛生を実施してください。

*血液などの汚染に対しては0.5%(5,000ppm),また明らかな血液汚染がない場合には0.05%(500ppm)を用いる。なお,血液などの汚染に対しては,ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒も有効である。

(参考)
新型インフルエンザ等対策ガイドライン」(平成25年6月26日(平成30年6月21日一部改定)新型インフルエンザ等及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議)における「Ⅹ 埋火葬の円滑な実施に関するガイドライン」の第2章の4.の「(4)搬送作業及び火葬作業に従事する者の感染防止策に係る留意事項」(P212)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/keikaku/pdf/h300621gl_guideline.pdf

感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き」(*エボラ出血熱参照)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000417412.pdf

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で、令和2年3月30日付け厚生労働省健康局結核感染症課/医薬・生活衛生局生活衛生課の事務連絡(各 都道府県/保健所設置市/特別区 衛生主管部(局) 宛)では、

 

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 新型コロナウイルスにより亡くなられた方及びその疑いがある方(検査中の方など)の遺体の引渡しの取扱いについて、医療機関等は、遺体が新型コロナウイルス感染症の病原体に汚染され又は汚染された疑いのある場合、感染拡大防止の観点から、遺体の搬送作業及び火葬作業に従事する者にその旨の伝達の徹底をお願いします。
 なお、その際は、伝える相手を必要最低限とするなどプライバシー保護にも十分配慮して下さい。
https://www.mhlw.go.jp/content/000616142.pdf

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とされています。

ちなみに、24時間以内に火葬してはいけないという原則は、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓地埋葬法)第3条で、

 

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 埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。
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という規定によるものです。

この「他の法令に別段の定」というのが、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症予防法)第30条第3項の


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 一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体は、二十四時間以内に火葬し、又は埋葬することができる。
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という規定で、今は新型コロナウイルス感染症にも適用できるようになっています。

 

こんなややこしい取扱いが、早く必要なくなりますように。