必ず維持改善されるわけではない

老人ホームで83歳殺害容疑=浴槽に顔、元職員逮捕-警視庁

 東京都中野区の老人ホームで居住者の男性=当時(83)=が死亡する事件があり、警視庁捜査1課は14日、殺人容疑で、同施設で介護士として勤務していた元職員皆川久容疑者(25)=杉並区方南=を逮捕した。「間違いありません」と容疑を認めているという。

 逮捕容疑は8月22日未明、中野区白鷺の介護付き有料老人ホーム「ニチイホーム鷺ノ宮」の浴室で、湯を張った浴槽内に居住者の藤沢皖さんの口や鼻をつけるなどして窒息死させた疑い。
 捜査1課によると、皆川容疑者は当時1人で藤沢さんの入浴介助をしていた。任意の調べで、ナースコールが鳴り、目を離したら溺れていたと説明。しかしナースコールが押された形跡はなく、遺体の首に絞められた痕があったことから事件の可能性があるとみて捜査していた。
 皆川容疑者は藤沢さんが排せつの失敗で何度も布団をよごすなどしたため、「殺してやろうと思った」と説明。入浴前に首を絞めたことを認めている。日常的な虐待はなかったという。藤沢さんは認知症に加え体の動きが不自由になるパーキンソン病を患っていた。
 施設を運営する会社は取材に対し、「聞き取りの結果、職員による暴行の事実は確認できなかった」としていた。
 同社は「二度とこのような事態を発生させないよう、社員教育の徹底、安全管理体制の強化を図る」とのコメントを出した。
時事ドットコムニュース 2017/11/14-12:07)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017111400095&g=soc


ちょっと前の報道です。
ずっと気になっていたのですが、考えがまとまらなかったので、今の記事立てになりました。
(今でも十分にはまとまっていないかもしれません。)

パーキンソン病認知症の方でなくても、衣類や寝具などを何度も汚すことはあります。
本人が意図しなくても、結果として介護に携わる人(施設職員でなくても家族とか)が何度も何度も更衣や入浴・清拭や清掃や洗濯などに従事しなければならないことがあります。

先日まで記事にしていた社会保障審議会などの議論や資料でも「自立支援」などが重視されている傾向がありますが、周囲や本人が努力すれば必ずよくなる(あるいは維持できる)というものではありません。

介護の手間を軽減するような手段の向上(機器、機具、手法など)はありますが、人間本人の老化というようなものは、歯止めをかけられず、あるいはその速度を緩やかにすることすら思うにまかせないことがあります。

排泄の世話が完了したと思ったその直後に次の排泄失敗が起きる。

海辺で積み上げた砂の城が次の波で跡形もなく崩れるような思いを、要介護高齢者に関わる人々や、介護を受ける高齢者本人が味わっています。

崩されても崩されても砂を積み上げていくこと、清潔を維持して乾いた衣類や寝具などを提供していくこと、客観的な心身の状況から見たら改善されないままいずれは死に至ること、それを無駄だと思うか、その間に少しでも人間的な生活を送れていると感じていれば意義があると思うか、考え方によって辛さに差があるでしょう。

この有料老人ホームの元職員を弁護するつもりは全くありませんが、
施設介護にせよ、家族介護にせよ、努力すれば必ずよくなるという思いがあるとすれば、
それは報われない場合もあるということを十分に認識しておいた方がよいだろうと思います。
(もちろん、報われる場合もあります。)


<参考・関連記事>

軽度にならなければ効果なし、ではない
https://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32357804.html


のうちの
「要介護度の変化ばかりに着目しては、改善が見込めない重度者らの排除につながりかねない。」
(読売新聞H29.11.8社説)