訪問看護のリハビリは居宅外でも可能か

第146回社会保障審議会介護給付費分科会の資料3
理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の協会が提出した資料の中に、
「訪問リハビリテーションの実施は居宅内外で認められているが、訪問看護は実施場所が居宅内に限定されている。」
という一文があります。

訪問看護の中には理学療法士(PT)等が行うサービスも含まれるわけで、タヌキの置物さんが
訪問看護の訪問リハは、居宅内に限定されている。」という記事を書かれています。
https://blogs.yahoo.co.jp/tanukinookimono1006/19366755.html

その分科会資料の中で、介護保険法第8条関係を根拠にして訪問看護のリハビリは居宅外不可」とされていたようなので、ついつい(タヌキの置物さんの迷惑を省みず)コメントを付けてしまったのですが、それについてはそちらのブログをご覧ください。

さて、訪問看護のPT等のリハビリでは、本当に自宅外のサービス提供は算定できないのでしょうか?

まず、訪問リハビリについては、報酬告示の留意事項通知で、算定可能と思わせる記述があります。

<平成12年老企第36号>
(1)算定の基準について
 [4] 居宅からの一連のサービス行為として、買い物やバス等の公共交通機関への乗降などの行為に関する訪問リハビリテーションを提供するに当たっては、訪問リハビリテーション計画にその目的、頻度等を記録するものとする。

http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/15/hr.html

訪問看護は、といえば、実は複数の自治体で(条件付きにしても)「算定可能」とする見解が出されています。
たとえば、東京都の平成29年度集団指導資料(指定(介護予防)訪問看護関係)

56 屋外でのリハビリテーションについて
○訪問系サービスは要介護者の居宅において行われるもので、居宅以外で行われるものは原則として算定できない。ただし、下記の要件を満たす場合のみ、例外的に算定が可能。
(1)自立支援として生活機能の維持向上を図ることを目的とすること
(2)主治医の具体的指示等、医学的判断に基づくものであること
(3)適切なケアマネジメントのもとで作成された訪問看護計画に位置づけられている

【根拠法令】
平成12年老企第36号通知 第二の1 通則
(6)訪問サービスの行われる利用者の居宅について
 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーションは、介護保険法(平成9年法律第123号)第8条の定義上、要介護者の居宅において行われるものとされており、要介護者の居宅以外で行われるものは算定できない。
 例えば、訪問介護の通院・外出介助については、利用者の居宅から乗降場までの移動、バス等の公共交通機関への乗降、移送中の気分の確認、(場合により)院内の移動等の介助などは要介護者の居宅以外で行われるが、これは居宅において行われる目的地(病院等)に行くための準備を含む一連のサービス行為とみなし得るためである。
 居宅以外において行われるバス等の公共交通機関への乗降、院内の移動等の介助などのサービス行為だけをもってして訪問介護として算定することはできない。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/jigyosha/shudan/shudan.files/houmonkango.text.pdf

たしかに、訪問介護は(居宅から一連のサービス行為など)条件を満たせば算定可能であることが通知に明記されています。
訪問介護での例示ではありますが、「通則」ですから、その上の方に訪問リハビリなどと並べて書いてある訪問看護が不可、と読むのは無理があります。
(訪問入浴も並んではいますが、サービスの性格上、外出には結びつかないので無関係。)

まあ、「居宅」の定義というのは難しいところがあって、たとえば私が某所に書いた駄文です。

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4 「居宅」の定義上の問題
 散歩の支援は介護保険では認められない、とする意見のうち、理屈としてもっとも有力なのは、「訪問介護は居宅におけるサービスだから」というものではないかと思う。
 たしかに、介護保険法第8条第2項では、訪問介護
「・・・その者の居宅において・・・行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって、厚生労働省令で定めるもの・・・をいう。」
と定義されている。
 厳密に文言どおりに解釈すれば、居宅の外で行われる散歩は、これには当たらない、と考えるのが自然であろう。
 ただ、この論法でいくと、訪問リハビリにも「居宅において」という文言があるから、訪問介護同様、散歩の支援を行うこともできなくなる。仮に、屋内(あるいは敷地内)でも外出散歩同様の効果が期待できるような豪邸であれば可能かもしれないが。
 さらに厳密には、訪問介護で通院や買い物、選挙等の外出支援を行うことも困難となる。
 これらの外出は、現在のところ、サービスの起点や終点が居宅であれば、居宅サービスとして位置付けることが可能とされている。しかしながら、ちょっと日本語の意味がわかる人間であれば、起点・終点が居宅だからその間のサービスも居宅サービスだ、という主張に無理があることは理解できるであろう。いくら、一連の行為、という理屈を付けたとしても、である。まして、通院等乗降介助は、帰宅まで一連というわけではないし、通常の身体介護による通院介助も、少なくとも診察室に入っている時間は中抜けが原則であるから、一連とは言い難い。これなら、見守りも含めてヘルパーの支援が常時必要な散歩介助の方が、家を出てから帰るまで「一連」という理屈付けはしやすい。
 理論的には、外出介助を訪問介護から外してしまう選択も可能かもしれないが、そうなると、在宅生活の継続が困難になる高齢者は多数出現するであろう。少なくとも何らかの通院介助は日常生活上に不可欠である。「選挙(投票)は対象外」というのも、国や自治体の立場上、民主主義国家では絶対に言ってはいけない言葉だということも、まともな公務員なら理解しているはずである。
 この問題を完全に解消するためには、たとえば「日常生活上必要な外出を含む。」というような文言を、「居宅において」付近のどこかに括弧書きで挿入する方法が考えられる。
 そうなると、散歩も問題なく訪問介護に位置付けることが可能になる。
 「いや、散歩は日常生活上必要ではない」という意見も出るかもしれない。
 しかし、それは必要性の程度問題とも考えられ、散歩が必要な場合があることは簡単に否定できるものではない。
(念のため。私は、「どのような場合でも散歩は認められるべき」という主張はしていない。)
 たしかに、排泄や食事などの介護と異なり、散歩をしなくてもその日の(あるいはその月の)生命は維持できるかもしれない。しかしながら、それは必要性の量的な違いであって、散歩の必要性自体を否定するものではないのである。

http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/ura/shousuu.html#3