医療・介護の余力ある地域

では、前記事で触れた「日本創成会議・首都圏問題検討分科会 提言」
「東京圏高齢化危機回避戦略」記者会見資料より、見ていきます。
http://www.policycouncil.jp/

まず、全国344の二次医療圏を、以下の3つに区分。
「大都市型」=人口が100万人以上または人口密度が2000人/平方km以上
「地方都市型」=人口が20万人以上または人口10-20万人かつ人口密度200人/平方km以上
「過疎地域型」=その他

その二次医療圏ごとに、医療・介護の余力を、
「一人当たり急性期医療密度」×「2040年介護ベット準備率」各7レベルのマトリックスで評価しています。

急性期医療密度レベル定義
レベル7(1.5以上):かなり余裕がある
レベル6(1.2以上1.5未満):充実している
レベル5(0.8以上1.2未満):全国平均レベル
レベル4(0.6以上0.8未満):少ない
レベル3(0.4以上0.6未満):かなり少ない
レベル2(0.2以上0.4未満):大幅に少ない
レベル1(0.2未満) ※レベル1と2は統合

2040年介護ベット準備率レベル定義 (引用者注:「ベット」となっているのは原文のママ)
2015年の介護ベット準備率の全国平均を基準とした場合、
レベル7:2040年の需要に対しプラス30%以上
レベル6:2040年の需要に対しプラス10%以上プラス30%未満
レベル5:2040年の需要に対しマイナス10%以上プラス10%未満
レベル4:2040年の需要に対しマイナス30%以上マイナス10%未満
レベル3:2040年の需要に対しマイナス60%以上マイナス30%未満
レベル2:2040年の需要に対しマイナス100%以上マイナス60%未満
レベル1:2040年の需要に対しマイナス100%未満

それで評価した結果、

 東京圏からの移住を検討する場合、高齢になってからの生活の利便性を考えると、「大都市(札幌、仙台、広島、北九州、福岡)」や「三大都市圏以外の地方型二次医療圏に属する地方都市」が候補となる。その上で、医療余力レベルが6~7、かつ介護余力レベルが4~7の都市を、医療・介護から見て移住の受け入れ余力のある地域と考えた。
 一般に医療施設の新たな建設は難しいが、介護施設は医療施設よりは建設が容易である。これを考慮し、医療余力レベルが6~7、かつ介護余力レベルが3の地方都市を、準地域として加えた。

とされています。それを地図に落とした資料が次の資料です。

イメージ 1

う~ん、首都圏で介護が不足するのはわかるとして、この緑や黄色の地域を移住先候補とするのは、どうなんでしょうねえ。

たとえば、京都府福知山市を中心としたあたりが候補になっていますが、近畿2府4件を見た場合、介護不足とされている地域がけっこう多いんですよね。

イメージ 2

これは、上の図の一部を私(どるくす)が加工したものです(付け加えたのは近畿2府4件分だけです)。
赤が介護レベル2以下、ピンクが介護レベル3。
滋賀県京都府大阪府にかけて、首都圏と同じように介護不足とされています。
その近辺、兵庫県奈良県にもそれほど余裕がない地域が目につきます。
滋賀県和歌山県のそれぞれ一部ですが、医療に不安がある地域もあります。

仮に、首都圏から福知山や和歌山に大量移住、というようなことになると、
これら関西の人々の受け皿が失われる恐れがあります。

他にもツッコミどころはあります。たとえば、

>一般に医療施設の新たな建設は難しいが、介護施設は医療施設よりは建設が容易である。

というのは間違いとはいえないのでしょうが、
「首都圏の介護のために地方で介護施設を整備してね」と言われているとしたら、
その金や労力は誰が出すのか、という声が出そうです。

また、介護難民、とまでいわれる状況なら、「生活の利便性」などを考える余裕があるのか。
遠い地域の大都市圏、地方都市圏に手を出さずに、相対的に近い過疎地域を(主に首都圏の資金で)開発して移り住む方が、生活文化的(食文化や気候など)にも妥当ではないのか、という感じがします。

(つづきます)