要支援問題の議事録つまみ食い

2013年12月20日 第54回社会保障審議会介護保険部会 議事録より
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000035120.html


○勝田委員
・・・今回の介護保険法の改正については、当事者団体としては、認知症ケアの立場からも賛成することはできません。何よりも要支援1、2の通所介護訪問介護を介護給付から地域支援事業へ移行することです。まず、認知症ケアは地域支援事業に移すことは適切ではありません。認知症が重度化し、費用が増大します。

 次に、受け皿についてです。中央社保協が11月から12月に行った緊急調査では、全国515の保険者が回答していますが、その中で162の保険者、31.4%になりますが、不可能としました。理由は、国が想定している団体がない。財政やマンパワー不足がある。事務負担の増加により対応できないとしています。また、9月から11月に行われた民医連調査によると、767事例のうち、もしサービスが移行した場合、介護度が上がる60.8%、生活全般について家事にさまざまな支障が出る63.4%、状態・病態が悪化する、コミュニケーションの機会が減る62.3%となっています。

 また、移行に伴う給付抑制でできる費用は、年間1,450億円と言われています。一方、復興特別法人税は13年度末に前倒し廃止が決まりました。税額8,000億円は、一般財源から手当てされるそうです。これは、税金の使い方が問題なのではないでしょうか。ますますふえる認知症の人、多くの介護中の家族、介護を担う人々、市町村など多くの人々に不安が広がっています。在宅介護の中で、どうしても避けられない認知症の人の徘回による事故が目立っています。きょうもこちらに添付していますが、JR事故のように、その責任が家族に押しつけられようとしています。もし移行されれば、このような事故も多発するのではないかと懸念しています。

 認知症があっても安心して暮らせる社会こそ、誰もが安心して暮らせる社会です。その立場から、今回出された意見案には反対します。


○桝田委員
・・・例えば、特別養護老人ホームで機能訓練指導員さん、理学療法士さんを採用して加算を取る。その場合には、常勤専従という枠が入っています。ですから、ほかの職務をしてはだめですよということになりますので、特別養護老人ホームだけじゃなくて、介護保険事業者共通だと思うのです。その事業所が地域の中で、例えば介護予防をしようと。それは、皆さんに来ていただいて、専門職の方が予防教室を開いていく。でも、厳密に言いますと、常勤専従の要件から言うと違うことを職務としてしまうことが起こってまいります。そこで、それは加算請求の違反行為になりますよという指摘をされると、したくてもできないことが起こってまいります。

 地域支援、地域づくりを行っていく上で、専門職のかかわりというものは非常に重要でございます。その職務の中でその地域に活動できるような、介護保険法上もそういうものに対しては、職務の一環としてみなすという形をつくっていただいて、市町村が地域支援事業をやるよ、ボランティアがやるよというのではなくて、介護保険の事業者、あらゆる団体全てがそれにかかわれるような形をつくっていかないと、地域によってはすごく差が出てくると言われています。その差をつくらないためにも、そういう専門職みずからが頑張っていく部分で足かせとならないような後押しをお願いしたいと思います。


○平川委員
・・・新しい総合支援事業については、2号保険料が財源とされているにもかかわらず、2号の被保険者の権利性が明確ではありません。1号にとっても個人給付でなくなるということで、それによってさまざまな問題が生じることについては、これまでも指摘させていただいていることであります。地方自治体の財源によっては、地域格差が大きくなるということや、運営基準や人員基準を柔軟に設定できることによって、利用者にとってサービスの供給や質が低下する懸念があるということ。それによって、さらに介護職員の処遇低下につながっていくという懸念については、残念ながら完全に払拭できていない状況であります。

 「そうならないように」ということで記載されておりますけれども、指摘している懸念が、制度の仕組みとして担保されていないということについては、再度指摘させていただきたいと考えているところでございます。


○井上委員
・・・しかし一方、予防給付のところでかなりいろいろな方が不安である、地域に移すのは不安である、ガイドラインが必要である、桝田委員からも専門職を置くべきである、という意見が出ました。これは、全くそうだと思うのです。と申しますのは、予防が地域のボランティアなりでやれるとすれば、専門職って一体何なのでしょうか。先ほども結城委員からも出ましたが、専門職を一生懸命鍛えて、つくり上げています。意見書では地域で重点的に予防をやろうと、予防は非常に重要であるという文言が出てきますけれども、そこに専門職をきちんと配置しないというのは、全くおかしいと思います。

 勝田委員のほうからも予防ほど認知症の者にとっては大事である、とあります。これは、認知症だけではないと思うのです。一般の人だって重度化しないためには、専門職がきちんと予防しなければいけない。専門職がやって、初めて重度化を防ぎ将来の持続可能な介護保険につながるという意識を持っておりますが、意見書は予防に対する専門性への意識が非常に薄いと思います。その意味で、この意見書はその辺のところを私は危惧しております。


○内田委員
・・・今、井上委員からも出ましたけれども、'''介護予防というのは一番専門性を求められますし、それから相当頭脳を使わないと介護する側もできないことですのに、ボランティアという無資格の方たちだけで実際に支えていくのかということになると、それは大変不安です。}}}研修をきちんとしていただくこととともに、専門職をつけていただく、専門職の目があるということをしていただきたいと思います。

 それで、これらの事業につきましては検証が必要だと思うのですが、出てくるのは、うまくいっていますというお話だけで、うまくいかないところの話はなかったりするので、その辺はきちんと調査なさって、ぜひとも報告していただきたいなと思います。


○勝田委員
・・・最近、現場では要介護から要支援へ2段階も3段階も下がるということが頻繁に起きています。認知症で自立度2以上が要介護1になると決められているにもかかわらず、現場では要支援になっているという現実がたくさん見受けられます。また、要介護3以上の特養入所と、論議された途端にですが、現場では既に要介護4以上でないとだめとか、要介護5以上でないと入所できない。自制というのでしょうか、そういうものが既に働いていると聞いています。

 そして、皆さんもたくさん意見をいただきましたが、ますますふえる認知症を本当に初期でとめる、初期で重度化させないということです。この要支援1、2を地域支援事業に任せていいのかどうか。財務省の試算では、これがうまくいけば、要介護1、2までも地域支援事業にと、既に五、六年前に試案が出されています。そういうことも含めて、私たちは介護の社会化を願って、ずっと発言してきましたが、そのことも念頭に置きながら、ぜひ私たち当事者の思いを酌んでいただけるよう、最後にお願いします。

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ひさびさ、要支援の切り離し問題(今のところは訪問介護通所介護だけということになっていますが)についての審議会議事録です。

例によって、引用者の趣味により一部だけ抜き出し、恣意的に文字強調しています(笑)

それはそれとして、はっきり「反対」と述べている勝田委員はもちろん、
他の委員からもけっこう危惧の声が出されていた、というのはよくわかります。

「予防給付の見直し全般については、概ね意見の一致を見た。」
などと恥ずかしげもなく書いている人はいるようですが・・・・・・