フローとストック・前編

平成23年11月30日 社会保障審議会介護保険部会
社会保障・税一体改革における介護分野の制度見直しに関するこれまでの議論の整理」より
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001wnbh.html

(1号保険料の低所得者保険料軽減強化)
○ 事務局からは、現行の1号保険料が所得段階別に原則として6段階設定となっているが、今後の高齢化の進行に伴う保険料水準の上昇及び消費税率の引上げに伴う低所得者対策強化の要請を踏まえ、現行の給付費に対する50%の公費負担に加えて公費を投入することにより、低所得者への配慮を強化する必要があること、その際には、所得だけでなく財産等の状況も踏まえ、より負担能力が低いと認められるものについて、基準額に乗じる割合を更に引き下げるという考え方が示された。

○ これに対し、財産等を考慮して保険料水準を設定することについて懸念が示されたものの、低所得者に対して保険料の軽減強化を行うことについては、全般的に肯定的な意見であった。なお、実施に当たっては、国の責任と財源で基準の設定等を行うべきとの意見や、公費負担については国と地方の両者で対応すべきとの意見があった。

(補足給付における資産等の勘案)
○ 事務局からは、世代内(特に高齢世代内)での公平の確保、所得再分配機能の強化の観点から、在宅や居住系サービス利用の場合は自己負担となる居住費について、施設入所の場合には補足給付により助成を受ける一方、その結果保有する居住用財産や預貯金が保全される現在の仕組みを見直すことについて見直しが必要ではないかとの問題提起があった。

○ これに対しては、社会保険制度内で財産を取り扱うことや低所得者対策を行うこと、居住用財産を流動化してフローの負担に充てられないこと、財産等を把握することが実務的に困難であることに対する懸念や意見が示されたものの、若い人よりも高齢者の方が財産保有は多いこと、今後生産年齢人口が減少していく中で財産に着目した負担を重視していく必要があること、今後社会保障・税共通番号の導入により、現在は名寄せが困難である金融財産についての把握も行いやすくなる可能性があることなどの立場から、補足給付における財産の勘案について肯定的な意見が多かった。

○ リバース・モーゲージなど居住用財産の流動化の試みや、諸外国において採用されている死後精算制度などを含めて、今後、財産の勘案の具体的な仕組みづくりに向けた、実務的な検討を早急に開始すべきである。


「・・・仕組みを見直すことについて見直しが必要ではないか」
というのは、日本語としておかしいと思いますが、
保険料軽減にしても、施設居住費の補足給付にしても、資産にも着目するという意見が出てくること自体は理解できます。

フローとストックの問題。

前にも似たようなことを書いたことがありますが、

A)年金収入が月20万円で預貯金が30万円という人
B)年金収入は月6万円だが預貯金が3,000万円という人

どちらが経済的に余裕があるか、比較は難しいところです。
年収の差が約200万円なので、単純計算では、15年以上受給できるか(長生きできるか)というあたりが分岐点といえるかもしれません。

ただ、介護・医療に限らず、社会制度の負担は、個人や世帯の課税状況によって決まる場合が多く、その意味ではBに比べてAが割を食っているという見方は、可能ではあります。


ただし。

私がざっと考えるだけでも、3つぐらいは論点がありそうです。
1)社会の理解が得られる制度か
2)弊害が大きくないか
3)技術的に可能か
これらについて、審議会委員や国の事務局(背後の財務省?)は、本当に検討しているのでしょうか?

(次の記事で考えてみます。)