発電コスト・大島試算

経団連トップは頭が悪い?」の記事で、原発も含めた発電コストに触れましたが、
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/29357228.html

原発等の発電コストについては、立命館大学教授・大島堅一氏の論文が、平成12年に発表されています。

高崎経済大学経済学会 学術論集 第43巻第1号
http://www1.tcue.ac.jp/home1/k-gakkai/ronsyuu/ronsyuukeisai/43_1.html
有価証券報告書総覧に基づく発電単価の推計」より抜粋。
(原文はPDF。文字の強調等は、引用者が行っています。)



まず9電力平均について述べると、1970年代から1990年代半ば近くまで水力は最も発電単価が低く推移してきた。この点、従来通産省によって発表されてきた発電単価とは全く異なる傾向がみられる。


水力が発電単価を上昇させてきた基本的要因は1970年代には40~50%あった設備利用率が1980年、90年代と時代を経るにしたがって低下し、90年代後半には20%台前半に落ち込んだことによる。この主な原因は揚水発電所が急増し、一般水力でも上回る設備量になったことである

一般水力の設備利用率は40~50%台を維持しているが、揚水発電は5%程度しかない。このことが、水力全体の設備利用率をひきさげ、結果的に水力の発電単価を上昇させた。他方、同時期の原子力の設備利用率は1970年代の50%台から1980年代には70%台、1990年代後半になると80%台と極端に高くなっている。火力は1990年代後半は40%台前半で推移している。原子力の単価が近年急激に減少し、単価が最も安くなっているのは、原子力を優先的に利用し他の電源を用いていないことによると考えてよい。

以上の結果をまとめるならば、原子力は必ずしも最も安い電源であると言うことはできず、揚水発電の増大や設備利用率等の条件によって大きく変化しているということができる。

重要なのは、原子力の単価が下がっているか、そもそも安い電力会社は、水力や火力の設備利用率が低い水準にとどまっているということである。このことは、すなわち、発電所を順調に稼働させることが可能な時期については発電単価は安くなるが、そのような条件が無くなれば発電単価が上昇することを意味している。今後、原子力発電の高経年化により、設備利用率に何らかの影響がでれば、現在良好なパフォーマンスを示している電力会社についても発電単価を低く抑えることができるかどうかは未知数である。

本稿での試算結果から判断すると、原子力発電は通産省の発表のように常に安い電源というわけではなく、むしろ必ずしも良好なパフォーマンスを示す電源ではないことが明らかになった。1999年12月に発表された最新値では原子力が5.9 円/kWhとされ最も安い電源とされているが、この要因は、一定の理想的モデルプラントを想定し、原子力に相対的に有利な条件をおいて計算を行っているからではないかと推測される。とりわけ水力発電単価が13.6円/kWhとされている点は、計算方法の違いを考慮しても疑問を抱かざるを得ない

また水力、火力、原子力の3つの電源を比較する上で重要なことは、原子力にはいまだにコスト算入されていないものがあることである。それは具体的には各種の放射性廃棄物処分費用であり、とりわけ高レベル放射性廃棄物については未知数なものが多い。また廃炉費用については解体費としては引当金というかたちで費用算入されているものの、解体にともなって発生する放射性廃棄物の処分費用については原価に算入されていない。これらのいわゆるバックエンド対策費は今後原子力の経済性を悪化させることになろう。これに加えて国家財政からの莫大な資金投入を加えるならば、3つの電源中、原子力は社会的にみて最もコストの高いものと考えられる。



試算については未確定の要素が多く、評価は難しいとは思いますが、平成12年という時期にすでに発表されていたということに先見性を感じます。


内容が難しいな、と思われる方には、こちらのブログに、大島氏のインタビューが紹介されていますので、よろしかったらどうぞ。
「まんがイラスト ぼうごなつこのページ」
http://bogonatsuko.blog45.fc2.com/blog-entry-967.html