雑感・安保法案

いわゆる安全保障法案が参議院本会議で可決され、成立しました。

与野党をめぐる状況は、いろいろツッコミどころがあり・・・ありすぎますが、雑感的に、思いつくままに。


まず、どのような法案、どのような経緯であれ、議長役の人間に対して物理的に攻撃するのは、ほぼ論外。
その行動を取った政党の方、子どもたちが学級会や生徒会で真似してもかまいませんか?

不当な採決、不当な議会運営なら、何をしてもよいのですか?

問題のある法律を阻止できなかったのなら、その問題を「言論で」訴えて、次回以降の選挙で国民の支持を集めて、改正あるいは廃止しようとするのが「民主」政治というもの。
違憲確認訴訟の動きもあるようですが、抽象的な案件では門前払いされる確率が高いと思います。海外派遣される自衛官やその家族からの訴えなら別ですが。)


それから、与党、というより内閣。
あれだけの法案を一括で提出して審議するのは、やはり無理があります。
あの中には、「当然必要」「まあ理解できないこともない」「ちょっと疑問」「はっきり反対」など、ひとりの国民であっても賛否が分かれる部分があるでしょう。
(もちろん、全部賛成、全部反対、という国民も。)

私個人の意見を別にして、たとえば、平和安全法制整備法のこの部分。

(防衛出動)
第七十六条 内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第九条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
 一 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態
 二 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
2 (略)


維新の党の対案では、この第76条第1項第1号・第2号は、このようになっています。

 一 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態(次号に掲げるものを除く。)
 二 条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃(我が国に対する外部からの武力攻撃を除く。)が発生し、これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至つた事態

上の政府案では抽象的表現ですが、対案では「日米安保条約で日本の防衛にあたっている米軍への攻撃だから、日本に対する攻撃と認められる可能性は相当に高いわなあ」と思う人が少なくないだろうと思います。
(維新への好き嫌いとか、これが適当か、という観点とはちょっと別。)

そこで、これよりも国民の理解が得られやすいであろうグレーゾーンの対応とか、理解されにくい上の政府案とかを分けて並べていくと、どの党がどこまで賛成か、反対か、というのが国民にとってもわかりやすくなります。


甲案:A党、B党、C党、D党が賛成、E党が反対

乙案:A党、B党、C党が賛成、D党、E党が反対

丙案:A党、B党が賛成、C党、D党、E党が反対


・・・みたいな感じですね。

こうすると、政府提出法案の、少なくとも「全てを強行採決した」とは言われないはず。
今回みたいな一括対応だと、全てに賛成か反対か、全てが違憲か合憲か、というような踏み絵にならざるを得ないので。

あと、対外的なことをいえば、なるべく多くの議員が賛成できるような内容にしておいた方が、日本を攻撃することを視野に入れている国があるとすれば、いくらかでも抑止力には繋がるかな、とも思います。

まあ、どの政治家も、それほどは賢くないので、仕方がないのかもしれません。


蛇足ですが、この記事では、集団的自衛権違憲か合憲か、みたいなことには直接触れていません。
この問題は、たとえば日米安保条約違憲か、みたいな議論に繋がったりして、私ごときでは収拾がつかなくなるかもしれないので。

本当は、9条における自衛隊の位置付けを明確にして(どのような表現にするかは国民の判断)、ついでに「党議拘束憲法違反」ということも明確にした方が、国会の議論も実のあるものになるかもしれません。