河内長野市の外部調査委員会答申

生活保護費不正支出事件について(答申)
平成26年6月30日
河内長野市生活保護費不正支出事件外部調査委員会
http://www.city.kawachinagano.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/31/saisyuutousin%20%20260630.pdf

第2章 本件事件の経緯、背景その他事実関係の解明に関すること(諮問事項(1))について

第4 本件の原因及び問題点

1 システム担当と経理事務担当の兼務の問題
(1)まず、本件の原因として一番に上げられるのが、システム担当、特に無制限のアクセス権限を付与されたシステム担当と経理事務担当の兼務である。
(あまりに当然のことが書いてあるので略)

3 人員配置の問題
(1)ケースワーカーの人員不足の問題
ケースワーカーの年度別保護件数及び配置人員等の状況は、以下の表のとおりである。ほぼ毎年、ケースワーカーの人員不足が指摘され、人事配置上の要望も出されて改善されつつあった。
 しかし、新任や兼務担当者に配慮したため、新任や兼務担当者を除くケースワーカー実員数に対する担当保護件数は、下記のとおり、おおむね110件~120件であった。
 ベテランケースワーカーの1名は、平成21年度で155件、平成22年度で157件を担当していた。
 
イメージ 1
 
 法令上は、標準として、80件に1人のケースワーカーを配置するべきであるとされていることからすると、計数的にケースワーカーの負担が重かったといえる。
 また、査察指導員についてもケースワーカー7名に対し1名を配置することとされていたが、平成18年度以降ケースワーカーが増員されても、査察指導員は増員されず、平成22年度に至って1名増員された。査察指導員の職務が激務であったことは、平成11年4月から平成20年9月まで主幹兼査察指導員をしていた職員が、精神的な体調を崩し病気休暇を取得せざるをえなくなり、平成11年4月からケースワーカーをしていた経験豊富な職員に対して、平成20年10月から主幹兼査察指導員を発令して引き継がせたが、前任者と同様に精神的な体調を崩し病気休暇を取得せざるをえなくなったことに表れている。
 2代続いて主幹兼査察指導員が精神的な体調を崩して病気休暇を取得せざるを得なかったことは、異常であり、個人の問題と言うより、生活福祉課の管理体制に構造的な問題があることを示しており、査察指導員の職務が激務であったことも本件の原因になったと思われる。

(2)生活福祉課の配属期間の長期化と激務の問題
 本件元職員は、生活福祉課に平成13年10月から同23年3月まで9年6月間配属されていたが、生活福祉課では10年前後続けて配属となっている職員も多いが、各ケースワーカーは、基準を上回るケースを担当するとともに対応に苦慮する処遇困難な受給者等を抱え、自分の業務を処理するだけで汲々としていた。
 また、当時の主幹兼査察指導員の中には、多忙なあまり、本件元職員を職務に熱心で、仕事ができるとして評価し、本来査察指導員が行うべき生活保護システム上の保護決定の決裁入力を代わりに行わせることも行われていた。
 部長兼福祉事務所長及び生活福祉課長において、このような多忙な状況を改善するため、ケースワーカーや査察指導員の増員を要求するものの、要求どおりの増員が受け入れられなくても、ケースワーカーや査察指導員の負担を軽減する組織的な対応や効果的な措置は採られていなかった。
 そのため、「やっかいな」経理事務担当やシステム担当を率先して担ってくれる本件元職員を頼ることはあっても、その職務の適正さまで関心を持たず、放任する雰囲気を醸成していたことも本件の原因であったと言える。

第4章 再発防止策の提言に関すること(諮問事項(2))について

第2 当委員会の提言
3 生活福祉課の人事への工夫
(1)生活福祉課においては、新規採用者の配属が行われているが、通信教育による社会福祉主事資格の取得に約1年を要すること、受給者との人間関係の構築や対応に数年程度の経験を要することなど、ケースワーカーの職務の特殊性から、他部門よりも配属年数が長期化するのもやむを得ないところと考えられるが、しかし、配属後10年を経過しても異動がない者も少なからずいた。このような配属年数の長さは、配属された職員の士気を損なうだけでなく、他部門からの異動の意欲を削ぐおそれがあり、有能な人材の確保にも支障を来すものと考えられる。
 平成18年10月作成の「河内長野市人材育成基本方針」によると、「自己申告制度による本人の意向や職務経験、所属における在職年数(新規採用については3~5年、その後は概ね5年)等を考慮し、適材適所の人事配置に努め」、「人事異動は、職員一人ひとりの潜在的な能力を引き出し、それを最大限に発揮する場を提供する機会であることから、今後においても、職員の意欲や能力、職務経験等を十分に活用できるような制度づくりを行うとともに人材育成の観点から計画的な人事配置を行っていく」(IV.人材育成の現状と課題 1.人事管理 (2)人材活用)と人材育成基本方針が定められているが、この方針に従った計画的、定期的な人事異動を行う必要がある。
 計画的、定期的な配置換えをすることにより、職員の気持ちもリフレッシュされること、前任者の仕事を引き継いだ際、前任者の仕事のチェックも可能となり、不正はもとより過誤も発見対処することも期待できる。

(2)生活保護制度は、資産がなく、扶養者もおらず、他の法制度による支援等も得られず、生活困窮な者に対し、最後のセーフティネットとして適用されることから、生活福祉課は、これらを調査して判断する高度の専門性が必要であり、しかも対象者の死活を決しかねない重大な責任がある。そのため、配置される職員は、有能な人材が求められる。しかし、残念ながら、生活福祉課への配置を希望する職員は乏しいようである。
 そこで、職員に対するインセンティブを高めるため、長期的には、生活福祉課への配置が人事考課上有利に働くような人事評価を検討することも一つのあり方と思われる。この点の検討を願いたい。

6 快適な執務環境
 生活福祉課では、受給者が増加し、査察指導員やケースワーカーの配属が増えて狭隘な執務環境となっていたが、平成26年4月に狭隘な執務環境については改善がなされた。今後も引き続き職員の執務効率が上がる執務環境に配慮し、その士気の維持、高揚を図る必要がある。


 
つまみ食いで、関心の強いところだけ抜き出し、勝手に強調しています。
ともかくも、このような答申をネット上で公表された市の決断については評価したいと思っています。
前記事で触れた片山氏や、多くの方が保護費の不正などの問題に取り組んではあられるようですが、
ケースワーカーやSVなど人員の問題を強調しているのは、私ぐらいなのかなあ・・・