そばもん(山本おさむ)

ことしの5月頃だったと思いますが、
ビッグコミックスピリッツに掲載されていた「美味しんぼ」が話題になっていたとことがありました。
 
福島県を訪問した登場人物たちの鼻血の表現です。
 
ちなみに、私は原発事故後に福島県を訪問しても鼻血が出た記憶はありませんが、
一泊二日程度で、制限区域から遠い地域を訪れただけの人間がもっともらしいことを言うのもどうかと思いますし、
その「福島の真実編」シリーズの完結後に読み込んだ後で意見を書こうか、と思っていました。
 
が、その完結分の搭載号は売り切れで入手できませんでした。
 
その頃、前後して、同じ小学館から出ているビッグコミックを見る機会がありました。
 
で、同じように福島の放射性物質などの問題を扱っていた、山本おさむ氏の「そばもん」を読むことになります。
 
氏のマンガとは、青春ものの「ぼくたちの疾走」からのつきあいで、重複障害児を扱った「どんぐりの家」(の途中)ぐらいまでは、けっこう読んでいました。
 
その後、さまざまな事情や、あるいは偶然から、疎遠になっていたのですが・・・
 
この「そばもん」では、福島県の人々が安全な食品を出荷しようと努力していることが、会津地方の人々などの口から、語られます。
土壌の汚染が作物に移行する割合は科学的に少ないこと、それをさらに抑制する工夫がされていること、
また、「検出限界」などの言葉も、ていねいに説明されています
 
そして、その後で、そば職人である主人公は、こう言います。
 


放射能ゼロでなきゃ気が済まない人には笑われるかも知れないが・・・
食べる理由はもうひとつ・・・
おれはこの町の人たちのそばに対する取り組みをずっと見てきた。
そばに関わる者のひとりとして尊敬してるし、
数値にはできないが信頼している。

だから最後はこの人たちを信じてありがたくいただくのさ。


 
主人公たちほど現地での取り組みを詳しく知っていたわけではありませんが、
私も現地の人々への信頼があって食べているのは同じです。
 
そして、それを他人に押しつけようとするつもりがないのも、主人公や、作中の「ミス山都」と呼ばれる女性と同じです。
 
すべてを読んでいるわけではない「美味しんぼ」と比較するわけではありません。
ただ、この「そばもん」の表現の方が、私の感覚には合う。そう思います。
 
本日付けで発売された「そばもん」15巻には、この「山都偏・前編」までが収録されています。