軽度者にこそプロの目を

しつこくてすみません(笑)

介護保険の要支援など軽度の人へのサービスを見直して、ボランティアなど市町村事業に移行させようという動きについて、別の角度から考えてみます。

つまり、軽度の人にこそ、専門職の支援は必要ではないか、ということです。

たとえば、
平成12年3月17日付け老計第10号・厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知
訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」に例示されているサービスですが、
http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/hourei/12rke010.html

<身体介護>
1-0 サービス準備・記録等
1-1 排泄・食事介助
1-2 清拭・入浴、身体整容
1-3 体位変換、移動・移乗介助、外出介助
1-4 起床及び就寝介助
1-5 服薬介助
1-6 自立生活支援のための見守り的援助

<生活援助>
2-0 サービス準備等
2-1 掃除
2-2 洗濯
2-3 ベッドメイク
2-4 衣類の整理・被服の補修
2-5 一般的な調理、配下膳
2-6 買い物・薬の受け取り

この中で、ボランティアなど一般の方々にお願いするのが一番難しいものは何でしょうか?

人によって得手不得手はありますし、いろいろ考え方はできるでしょうが、私は、

1-6 自立生活支援のための見守り的援助

(自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)

だと思います。

ちなみに、次の候補を挙げるとすれば、

1-1 排泄・食事介助
の中の
1-1-3 特段の専門的配慮をもって行う調理
ではないかと。


「自立生活支援のための見守り的援助」については、平成15年介護報酬Q&Aで次のように説明されています(改行や太字強調は引用者が行いました)。

 身体介護として区分される「自立生活支援のための見守り的援助」とは自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守りをいう。単なる見守り・声かけは含まない。

 例えば、掃除,洗濯,調理などの日常生活の援助に関連する行為であっても、

・利用者と一緒に手助けしながら調理を行うとともに、安全確認の声かけや疲労の確認をする
・洗濯物を一緒に干したりたたんだりすることにより自立支援を促すとともに、転倒防止予防などのための見守り・声かけを行う
・痴呆性の高齢者の方と一緒に冷蔵庫の中の整理などを行うことにより生活歴の喚起を促す
・車イスの移動介助を行って店に行き,本人が自ら品物を選べるように援助する

という、利用者の日常生活動作能力(ADL)や意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援のためのサービス行為は身体介護に区分される。
 掃除、洗濯、調理をしながら単に見守り・声かけを行う場合は生活援助に区分される。
 また、利用者の身体に直接接触しない、見守りや声かけ中心のサービス行為であっても、

・入浴,更衣などの見守りで、必要に応じた介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認を行う
・ベッドの出入り時など自立を促すための声かけなど、声かけや見守り中心で必要な時だけ介助を行う
・移動時、転倒しないようにそばについて歩き、介護は必要時だけで、事故がないように常に見守る

という介助サービスは自立支援、ADL向上の観点から身体介護に区分される。そうした要件に該当しない単なる見守り・声かけは訪問介護として算定できない。

まさに介護保険の理念、特に介護保険法第2条あたりを具現化した行為だと思います。
介護保険法第2条の意味するところについては、こちらのブログもご覧ください。)
http://blogs.yahoo.co.jp/well_nishi5/37721859.html

ただ、これを(失礼ながら)「善意だけは負けません」というような一般の方に理解していただくのは、なかなか大変なことではないでしょうか。
まして、プロのヘルパーやケアマネでさえ「できることは自分でした方がいいですよ」という助言を受け入れてもらえないような要支援高齢者がサービスの相手方だったとしたら。

つまり、軽度者にこそ、プロの目、プロの助言が必要なのです。

一方、重度の方は、といえば、もちろんプロの支援は必要です。
ただ、支援の必要量の総量が増える中で、ボランティアにできることも増えます。
すなわち、ボランティアを活かす機会は、重度者の介護の場にこそある、という見方も可能かと。

なお、本記事は、(国の提案について)こういう見方もある、という提示です。
ですから、「自立生活支援のための見守り的援助」について深く理解し実践可能なボランティアを養成する動きがあれば、それに反対するものではありません。
また、生活(家事)援助部分についてのボランティアや近隣の方々の好意の活用を否定するわけではありません。

ただ、たとえば日常品の買い物であれば、
「ついでに買ってきますね。何がいいですか?」
と本人に聞くばかりでなく、ときには、
「スーパーマーケットまで車を出すので一緒に乗っていきませんか?」
と本人の外出や商品選択意欲を促すような支援をしていただければ望ましい、ということなのです。

はたして、国はここまで考えているのでしょうかねえ。