介護保険部会(23.11.15)雑感

平成23年11月15日「第40回社会保障審議会 介護保険部会」議事録より
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001wath.html

例によって、議論の本筋に関係なく、引用者が関心のある箇所のみ、勝手に太字にしながら引用しています。

○木間委員
 要支援者の利用者負担の二つの論点につきましては、昨年、部会で発言いたしました調査結果から申し上げます。
 一つは、日本福祉大学の近藤克則先生たちが行った調査でありますが、要介護認定を受けていない3万人近くの高齢者を4年間追跡した結果についてです。低所得層は死亡率も要介護認定率も高いことが明らかとなっています。要支援者の利用者負担を引き上げれば、特に低所得層は利用を控え、介護度は重度化し、死亡率は高まるおそれがあるのではないでしょうか。
 二つ目の調査は、地域保健研究会が約300人の要支援1、2の介護予防訪問介護の利用者を対象として、家事の遂行能力を2年間、追跡調査した結果についてです。2年間で介護度が改善した人の改善要因の一つは、生活支援と生活機能向上サービスメニューを前向きに実施したことでありました。自立支援型のサービス機能を高める予防給付の取り組みをすることが重要と言えます。
 利用者負担の見直しを求める意見がありますが、利用者も含め、高齢者は1号保険者として保険料を負担しています。負担の公平化は、公平な保険料負担によってなされるべきです。一定以上の所得者の利用負担でありますが、番号制度の活用分野は確定していませんが、公的年金だけが捕捉されるのであれば、320万円という額は非常に限られた人たちであると思います。介護保険制度の枠を超え、年金制度とかかわることですが、税務当局が番号制度の活用分野の中で民間保険会社に受給者の共通番号の提供を求めるようになれば、民間年金の収入も捕捉できるようになります。そうすれば、320万円を超える人たちは増えます。この点と3号被保険者問題について申し上げます。
 現在、3号被保険者は、勤め人の夫、あるいは妻の扶養を受けていれば、保険料を負担せずに基礎年金を受給できるという不公平があります。共働きの女性や独身の女性は、しっかりしておりまして、民間年金に加入している人はかなりいます。その結果、320万円を超えて2割負担になった場合、3号被保険者に関する不公平は更に拡大します。例えば3号被保険者の妻が要介護、夫が元気な高所得者というケースは、妻の収入が基礎年金のみであれば、夫の収入に関係なく、1割負担になります。更に、3号受給者については、将来、年金2分割となれば、夫の年金額が320万円以下に下がり、高額所得者であっても夫の利用者負担は1割適用になります。一定以上の所得者の利用者負担を議論するなら、このような不公平についても議論すべきであります。

「低所得層は死亡率も要介護認定率も高い」という調査結果については、医療の利用状況などを見たい気がしますが、要支援者の利用者負担を引き上げることが重度化を招く恐れがあるという推測については同感です。

所得捕捉に際して、民間保険や、国民年金の3号問題が関連することについては、実は私も認識していませんでした。

○小島参考人
 なお、第1号保険料の賦課の関係ですが、現在、所得の捉え方が住民税の課税標準とは一致してございません。例えばマイホームを売った場合には、所得税や住民税は控除されるのですが、介護保険料の課税標準になっている部分は控除されない。そんな関係から、一時的にかなり高負担を強いられるという方がいらっしゃり、県に審査請求などが寄せられているという実態がございますので、ここは住民税の課税標準に統一していただきたい。

一般の方にはわかりにくい話かもしれませが、
たとえば公共事業に協力して土地の買収や建物の移転に応じた場合、土地代金や移転補償金の収入について、所得税や住民税は軽減する制度(所得から控除するなど)があります。

ですが、介護保険料に限らず、そういう控除をする前の所得額で金額を決定する社会制度が多いのです。
(つまり、所得税や住民税よりも負担感が強くなります。)
そうなった理由はあるのですが、やはり、住民税などに考え方を合わせる方が望ましいと思います。

○橋本委員
 結論的に申し上げれば、ケアマネジメントに利用者負担をつけることは反対であります。その理由でありますが、私は、ケアマネジメントの問題は、要支援の方と要介護の方で違うケアマネジャーがつくことが非常に問題だと思っております。ケアマネジメント、そしてケアマネジャーというのは、仕組みでもありますけれども、同時に、地域の中で介護を中心とした生活課題を抱えた方のそばに寄り添って専門的な支援をしながらずっと継続的に見てあげる人がいるということが大事な機能なのです。
 そのような意味で言えば、御承知のように、今、予防のケアプランは地域包括支援センターで立てる仕組みになっておりますが、これは非常に問題だと私は思っております。介護支援事業所に委託ができるとかその収入が地域包括支援センターの経営に役立っているというような言い方があるわけであります。これは利用者の側から見れば、大変に違うと思います。また、委託ができるということでも、この委託費の問題もあって、なかなか居宅介護支援事業者は委託を受けません。そんなことで、結局、利用者が、要支援と要介護ではケアマネジャーがかわるということで非常に困っているという現実、これは考えなければいけないと思います。
 そういう意味で、ケアマネジメントを考えるときに、専門性だとか、実施機関の問題等もあるわけでありますが、ちょっと違う視点で考えると、今回の議論も地域包括ケア推進ということが大変大きなテーマになっております。その地域包括ケアを進める際に、やはり基幹的な、中心的な機能になるのは、私は、地域包括支援センターだと思っております。
 すでに資料も示されておられるわけでありますが、地域包括支援センターの仕事、業務が介護予防のケアプラン、ケアマネジメントに割かれている部分が非常に多くて、本来的に地域包括ケアを進める地域支援でありますとか、それから、後で申し上げたいと思いますが、虐待のことでありますとか、それから地域のケアマネジメントの支援等の機能が十分に機能し切れてないということを考え、また利用者の側からすれば、要するに重要なのはケアマネジャーなのです。同一のケアマネジャーが継続して利用者を見ていかれるような仕組みをつくっていくことが、生活に介護問題で課題を抱える方の一番大事なサービスだと思っております。
 そういう意味で、ケアプランは予防のケアプラン、要介護のケアプラン含めて居宅介護支援事業所でつくる仕組みとするべきだと思います。そして、それによって地域包括支援センターの機能強化につながり、地域の中で、地域包括ケア、地域の中のさまざまな介護に係る支援が強化されます。御承知と思いますが、地域包括支援センターがかかわる問題というのは多問題ケースが多くて、必ずしも介護問題だけにとどまらない、本当にその地域の中でソーシャルワークの機能を発揮していくものであります。その意味で、地域包括ケアの本当に支えになる機関、これを大事にできるということにつながると思っています。

これは、厳密には「ケアマネジメントの利用者負担に反対する理由」からは、ずれているようにも思います。

ですが、要支援の方と要介護の方で違うケアマネジャーがつくことが非常に問題というのは、まさにそのとおりで、特にコメントすることはありません。

少なくともケアマネジメントに関しては、平成17年度以前の制度を基本にするべきと考えます。