ジークアクス感想1

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が終わりました。

本作について何か語ろうとすると、どうしてもネタバレ的になるので、ご注意願います(もっとも、たいしたことは書けません、たぶん)。

 

シャアがガンダムに乗る世界線

本作では、シャア・アズナブルが自らサイド7に潜入し、地球連邦軍が秘密開発した新型モビルスーツ(MS)・ガンダムを接収。
その母艦のペガサス級強襲揚陸艦(『機動戦士ガンダム』=ファーストガンダム(以下「ファースト」)では「ホワイトベース」)も鹵獲したという世界線です。

したがって、アムロ、ハヤト、カイ、ブライト、ミライらは出てきません。セイラは、「本名」のアルテイシアとして重要な役割を演じることになりますが、登場シーンはわずかです。

連邦軍のファースト関係で名前が挙がるのは、ワッケイン、モスク・ハン博士、テム・レイアムロの父)、戦死したパオロ艦長ぐらいでしょうか。

ジオンでは、シャア以外に、シャリア・ブルが重要人物。
キシリア、ギレン、ドレン、マリガン、マ・クベ、デニム、シムス、ガイア、オルテガフラナガンらも登場しますが、ガルマは退役済、ドズルは戦死、デキンは(たぶん)ギレンに殺害され、登場しません。

ファーストは、宇宙世紀(UC)79年~80年の物語で、ザビ家の主要メンバー亡き後に、ジオン共和国と連邦の間で休戦協定が結ばれますが、本作ではジオン公国が連邦に勝利した5年後、UC85年のサイド6が主要舞台です。
ファースト関連では、カムラン(ミライの婚約者だった人)がサイド6のけっこう偉い人になっていて、ペルガミノ(ファーストで艦艇修理用の浮きドックで稼いでいた)が大統領となっています。

そのサイド6にあるスペースコロニーのひとつがイズマ・コロニーで、本作の主人公、アマテ・ユズリハ(マチュ)が住んでいます。
日本語が公用語のようで、街なかの表示、広告、スマホ画面などには日本語が普通に使われています。
難民が多い地区では、中国語などアジア系の言語も使われている模様です。

そういう違いはありますが、ファーストを知る人間としては、懐かしい描写は多数ありました。
MSはガンダム、ザク、ギャンなど。ただ、世界線が異なるせいか、微妙に外見が違ったり、ガンダムから得た技術を基に製作されたゲルググ(の名を持つMS)が連邦の量産MSのGMに似ていたり、ということはあります。

セリフやシーンなどでは、「ファースト」以外のガンダム作品や、非ガンダム作品のオマージュも見受けられました。
オープニングで米津玄師メロディーの中、主人公のバックで走り続けるMSは、「エヴァンゲリオン」に似ているように私には見えました。

まあ、そういうことを含めて、全体として楽しめた作品です。ファーストを知らない人が見てどう感じたかは、正確なところはわかりませんが。

 

主人公への感情移入

主人公・マチュについて、感情移入できない、など否定的な意見を見かけることがあります。
私自身は、他のガンダム作品の主役級に比べれば、抵抗が少ない方だったと思います。
たとえば、「水星の魔女」のスレッタや、同作品の他の主要人物よりは理解しやすい(ただし、スレッタは生育歴の問題もあるし、そもそも「水星」と「ジークアクス」との作品としての優劣には関係ない)と思います。
「Ζ」のカミーユも、どちらかといえば。「ΖΖ」のジュドーは、アムロよりは好きかもしれません。

主役級ではないけど、わけわからない理由(個人的感想です)で無断出撃して味方を窮地に陥れたり、敵方の主要キャラに惹かれて寝返ったりする人物もありますが、そういう人物よりは、マチュはずっとマシで肯定しやすい。
難民に対する偏見が見えないのも好印象ですが、これは現実の私たちの世界線の状況が影響しているかもしれません。

なお、理解はできるけれど肯定できるか、という点では、ニャアンの方が議論を呼ぶかもしれません。
マチュ、シュウジとの三角関係に起因する行動はともかくとして、キシリアの命令(あるいは洗脳?)により、ア・バオア・クーを破壊し、多くの軍人軍属の生命が失われる現象(ゼクノヴァ)の引き金を引いた。
これが、ジオン公国の内戦とはいえ、戦争犯罪にあたるか、ということ。

ア・バオア・クーは軍事要塞であり、おそらく純粋の民間人は(ほぼ)いなかったであろうこと、
地球の近くに転移されているが、大きな破片が地球上に落ちたという描写がなかったこと、
キシリアの命令により行われたこと、
この行為によりどのような結果が生じるか、正確には知らされていなかった可能性があること、
等により、ニャアン個人を有罪に導くのは難しいのではないでしょうか(「難しい」というのは「不可能」と同義ではありませんが)。

彼女を有罪にするなら、連邦との戦争初期に、コロニーに毒ガスを注入して民間人ごと大量殺害したジオン軍の実行部隊、その後のコロニー落としの実行部隊など、もっとヤバいことをした将兵も戦犯としなければならなくなります(してもいいのですが)。

まあ、ウクライナで少女や幼女をレイプしたロシア兵などは、個人でも裁かれるべきではありますが、ニャアンはそういうのとは違うかな、と。

 

(つづく)