梅雨とチベット高原

順序はともかく、東海以西が梅雨に入りました。
正確には、「梅雨入りしたとみられる」ですが。

 

先日、NHKの某番組をぼーっと見てたら、
「日本に梅雨があるのはチベット高気圧があるから」
と聞いてしまって、あれ、と思ってしまいました。

確認したら、
チベット高原があるから」
でした。
なるほど、その理屈ならわかる(番組特有の多少の誇張はあるとして)。

 

以下、番組内での説明にこだわらず、個人的に適当にまとめたので、特に細部は信用しすぎないようにしていただいて・・・

端的には、海陸風みたいなのが始まり。
陸は温まりやすく冷えやすい。
海は温まりにくく冷えにくい。

ということで、チベット高原などアジアの大陸部が温まり、インド洋など周囲の海洋が相対的に冷たいので、海から陸方向に南よりの湿った風が吹き込みます。
地球は東向きに自転しているので、「コリオリの力」という「右方向にずれる見かけ上の力」が働き、東の方(中国南部や日本列島付近)まで風の影響が出ます。

 


上図はあくまでイメージです。

図の緑の縞の矢印は上空のジェット気流で、でもチベット高原はそれよりも高いので、亜熱帯ジェット気流は梅雨時には南北に分かれて、オホーツク海付近で合流します。
別の寒帯ジェット気流という流れもその手前ぐらいで亜熱帯ジェット気流の北流と合流します。
合流したこれらの空気は行き場がなくなって下降し、冷たい海面で冷やされ、冷たく湿った高気圧になります(オホーツク海高気圧)。

南の小笠原諸島付近では、赤道付近で熱せられて上昇した空気が北に流れて降りてきて(ハドレー循環)暖かく湿った高気圧となります(小笠原高気圧)。

小笠原気団(小笠原高気圧)とオホーツク海気団(オホーツク海高気圧)の間の梅雨前線あたりに日本列島がある感じです。
中国寄りには長江気団(長江が揚子江と呼ばれていた頃の名残りで「揚子江気団」と呼ぶ人もいます)があって、移動性高気圧を日本列島に送り出したりしていますが、この暖かく乾いた空気と、南側の湿った空気との間にも梅雨前線ができます。

NHKの某番組では、冷たく乾いた空気と暖かく湿った空気との間に梅雨前線ができる、みたいな表現があったような気がしますが、「冷たく乾いた空気」というのはオホーツク海高気圧と長江気団とをごっちゃにして扱っているような気もします。
(まあ、長江気団も南側の二つに比べたら冷たいといえないこともないのですが。)

それはそれとして。

最初に書いた「チベット高気圧」と聞き違えた件について。
チベット高原が温められて上昇気流が発生するなら、そこは低気圧のはず、と思ったんですよね。
だから、その低気圧に、インド洋などから湿った風が吹き込む、と。

それは、それほど間違っていないようです、たぶん。
で、チベット高気圧というものがあるとすれば(あるのですが)、かなり上空、おそらくジェット気流なんかよりもさらに高い、成層圏との境界付近まで達するような位置にあるようです。
チベット付近では、上は高気圧、下は低気圧。

 


ただし、チベット高気圧はチベット付近にだけあるのではなく、西は北アフリカ、東は日本列島付近まで広がることもあるようで。

 

夏、小笠原高気圧の上にチベット高気圧が張り出して、とんでもない猛暑になったことがあったでしょう?
あのときがそういう感じだった、のかもしれません。
今夏はなるべくおとなしくしていただきたいものですが。