特別養子縁組の年齢上限

特別養子縁組、6歳以上も対象検討 背景に虐待増加

朝日新聞デジタル 7/14(金) 5:30配信)

 生みの親が育てられない子どもと育ての親が戸籍上の実の親子となる特別養子縁組について、政府は対象年齢をいまの6歳未満から引き上げる検討を始める。虐待などで親元で暮らせない子どもが、一人でも多く家庭的な環境で育つことができるようにする狙いだ。法務省が月内にも有識者の研究会を立ち上げる。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00000013-asahi-pol

以下、記事より抜粋(またはちょっとだけ加工)。

特別養子縁組の成立件数は増加傾向(2005年305件→2015年544件)。
児童相談所が14~15年度に特別養子縁組を検討すべきだと判断した288件のうち、年齢要件が理由で成立しなかったケースが16%の46件あった。
厚生労働省有識者検討会は6月、対象年齢引き上げを求める報告書を公表。
 (1)普通養子縁組で15歳以上は本人の意思が尊重されることを踏まえて「15歳未満」
 (2)子どもの社会的養護などについて定めた児童福祉法の対象年齢となる「18歳未満」
 を引き上げ後の年齢の案としてあげた。
・原則の6歳未満は維持し、例外の8歳未満を引き上げることも考えられるとした。
・「一般的に年齢が大きくなるほど(新しい)親子関係の形成が難しくなる」との留保もつけた。
・これを受け、対象年齢を定めた民法を所管する法務省が研究会を設置し、議論に乗り出す。


厚労省有識者検討会というのは、こちらのようですね。
特別養子縁組制度の利用促進の在り方について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000169541.html


民法特別養子縁組について定めているのは第817条の2から第817条の11までです。
・子と実方の血族との親族関係を終了する特別な養子縁組。(第817条の2、第817条の9)
・要件を満たすときに、養親となる者の請求により、家庭裁判所が成立させることができる。(第817条の2)
・父母による監護が著しく困難又は不適当であること、その他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに成立させる。(第817条の7)
・養親となる者の条件
 配偶者があること。(第817条の3第1項)
 夫婦の両方が養親となること。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出子(普通養子縁組でない子)の養親になる場合はこの限りでない。(第817条の3第2項)
 25歳以上であること(ただし、夫婦の一方が25歳以上なら、他方が20歳以上で可)。(第817条の4)
・実父母の同意が必要。ただし、父母が意思を表示することができない場合、又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合はこの限りでない。
家庭裁判所は、特に必要な場合には、特別養子縁組の離縁を行い、実父母等との親族関係を回復することができる。(第817条の10)
 (養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること+実父母が相当の監護をできること、の両方に該当する場合)

で、子の年齢要件について。
特別養子縁組の請求時に6歳未満であること。
・ただし、請求時の8歳未満であって、6歳未満から引き続き養親となる者に監護されている場合はこの限りでない。(第817条の5)

どういうことかというと、たとえば5歳で児童相談所を通じて里親委託となった子が、7歳になったときに、里親である夫婦が家庭裁判所特別養子縁組の成立を請求するような場合です。
なお、特別養子縁組を成立させるには6か月以上の期間監護した状況を考慮しなければならないこととされているので(第817条の8)、子と出会っていきなり家裁に請求することはできません。


さて、この6歳(又は8歳)の壁。
なかなか悩ましいところではありますが、今ほど児童虐待が多くなかった時代でも、もう少し緩和した方がいいかな、という想いはありました。

請求のあった全ケースについて一律OK、というのは問題あるかもしれませんが、
6歳(または8歳)を過ぎていても家裁が特別に認める余地を残す、というのはいかがでしょうか。