介護保険の目的、わかってる?

2016年4月22日 第57回社会保障審議会介護保険部会 議事録
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000129917.html

武久委員 まず、介護保険というのは要介護状態の改善と予防のために行われるということははっきりしているわけです。一方で、要介護状態をよくしたり、予防しながら費用を減らすというのは二律背反的なことでありまして、費用さえ減らせば要介護は悪くなって、結果的に最後のほうに重介護になって要医療度になる。(以下略)


武久氏の発言の主旨はともかくとして。

介護保険は「要介護状態の改善と予防のために行われる」ものなのですか?


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介護保険法 第一章 総則

(目的)
第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

介護保険
第二条 介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。

2 前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。

3 第一項の保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。

4 第一項の保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。

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要介護者等が

尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、

必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うためのものだと思っているのですが。

だから、要介護状態が改善する可能性が低い、予防にもならない、たとえば末期ガン患者の看取り期に必要な支援も、介護保険制度で対応しても差し支えないのです。

介護保険法第2条第2項の
「要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない」
というのは、目的ではなく、むしろ手段、というか、第1条で規定する目的達成のために留意すべき事項、とでも考えた方がよいでしょう。

まあ、審議会委員にもいろいろな発言がありますから、武久氏の発言だけがレベルが低い、というわけではないと思いますが。
(適切な発言も、もちろんあります。)