家族介護とGDPと税収

「要介護2」以下を介護保険から除外しようという財政側の動きについて、ゲストブックに書いた人がいたので。
以前から考えていた、(下手な)たとえ話を書いてみます。


在宅要介護者で、少額の年金受給者であるA子さん。仮に要介護2とします。
A子さんの子ども。男女どちらでもかまいませんが、仮に娘・B子さんが同居しているとします。

B子さんがフルタイムで働き、A子さんが在宅介護サービスを受けているとすると、
B子さんの労働はGDPに反映されます。
B子さんの給与所得には国税所得税)、地方税(個人住民税)が課税されます。
社会保険料(厚生年金、健康保険など)も源泉徴収されます。
一方、A子さんが介護サービスを利用する分だけは、介護保険料を上げたり、
国や地方の財政の負担を増やす影響があります。

A子さんが介護保険サービスを利用せず(あるいは今後の制度変更等によって利用できず)、
B子さんが就業せずに家族介護しているとすると、B子さんの働きはGDPに反映されません。
B子さんの所得から税や社会保険料などを徴収することもできません。
B子さんの夫・C男さんが働いて生計を維持しているとすると、
A子さんやB子さんがC男さんの扶養控除の対象になるでしょうから、
少なくともB子さんの控除分だけは税収が減ります。

(A子さんについては、B子さんがフルタイムで働いていた場合にも、B子さんかC男さんかどちらかの控除対象にはなっていたと考えられます。また、お子さんがあったとしても、扶養等の理屈上は変わりません。)

社会全体の費用を考える場合、どちらが得なのでしょうか。
要介護2以下を介護保険から除外すれば財政的に楽になる、という単純なものではありません。

ついでにいえば、B子さんが就業しなかったとしたら、その分だけは労働力が不足します。
ということは、その分だけ企業の人件費コストも増加することになります。

B子さんが、仮に家族介護ではなくボランティアとして他人の介護に携わっていたとしても、理屈上はあまり変わりません。
また、フルタイムではない勤務形態も考えられますが、B子さんの総労働可能量のうちの何割が家族介護に向けられたか、という観点で、量的な変化が生じるだけです。質的には同じモデルで考えてよいと思います。

あと、B子さんの精神的負担とか生きがいとか、給料日にちょっとケーキでも買って帰ろうか、という気になった場合のささやかな経済効果とかもありますが・・・

私は、軽度者(要介護2を「軽度」とするかどうかは別にして)を強制的に家族介護の世界に戻すよりも、現在の介護保険制度の枠組みを使って少しずつ問題点を改良していく方が、社会全体の費用としては得になると考えています。