虐待通報と個人情報

耳を疑った報道がありました。
 

虐待防止の情報提供は“問題なし”

(12月8日 11時23分 NHK)
医療機関児童虐待のおそれに気付いても個人情報の保護などが壁となって自治体への情報提供が進んでいないことから、厚生労働省は、虐待を防ぐためであれば個人情報を提供しても法令違反には当たらないという見解を初めてまとめ、全国の関係機関に通知しました。
 
児童虐待を早期に見つけ出すため、児童相談所と市町村は、医療機関に対して子どもや両親を診察した際、虐待につながるおそれがあると判断した場合、情報を提供するよう求めています。
しかし、去年1月、大阪・住之江区で生後3か月の男の子を虐待して死亡させたとして父親が起訴された事件では、男の子が骨折して入院した病院が虐待のおそれに気付いたものの、市に通告していませんでした。
専門家からは、個人情報の保護や守秘義務の問題から医療機関が情報提供をためらうケースが多いと指摘されています。
このため、厚生労働省は、虐待を防ぐためであれば医療機関が診療で得た情報を自治体に提供しても個人情報の保護や守秘義務についての法令違反に当たらないとする見解を初めてまとめ、全国の関係機関に通知しました。
厚生労働省は「医療機関自治体が積極的に情報共有を進め、虐待にできるだけ早く気付く態勢を整えてほしい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121208/k10014047521000.html
 
この報道の何が問題かというと、
「法令違反には当たらないという見解を初めてまとめ」 というところです。
 
虐待の通報が違法とはならないということについては、国は何度も通知しています。
まともな医療機関なら、常識として理解しているはずです。
たとえば、一部抜粋ですが、


医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドラインの一部改正について(通知)
(平成22年9月17日 医政発0917第2号/薬食発0917第5号/老発0917第1号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医政局長・厚生労働省医薬食品局長・厚生労働省老健局長通知)

(別添2)
医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン
(平成16年12月24日に出され、何度か改正されています。)

III 医療・介護関係事業者の義務等
(2)利用目的による制限の例外
 医療・介護関係事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで法第15条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないが(法第16条第1項)、同条第3項に掲げる場合については、本人の同意を得る必要はない。具体的な例としては以下のとおりである。
 [1]法令に基づく場合
  医療法に基づく立入検査、介護保険法に基づく不正受給者に係る市町村への通知、児童虐待の防止等に関する法律に基づく児童虐待に係る通告等、法令に基づいて個人情報を利用する場合であり、医療・介護関係事業者の通常の業務で想定される主な事例は別表3のとおりである。

別表3 医療・介護関連事業者の通常の業務で想定される主な事例(法令に基づく場合)
医療機関等の場合)
○法令上、医療機関等(医療従事者を含む)が行うべき義務として明記されているもの
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者による児童相談所等への通告児童虐待の防止等に関する法律第6条)
・要保護児童を発見した者による児童相談所等への通告児童福祉法第25条)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=tsuchi&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=1681

ついでに言えば、個人情報保護法児童虐待保護法の施行前から、たとえば次のような通知がありまして、法令の趣旨を理解しているマトモな医療機関なら児童相談所などと連携して、子どもたちの命を救っていました。


児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」
(平成9年6月20日 児発第434号 各都道府県知事、指定都市市長あて厚生省児童家庭局長通知)
・・・医師や弁護士等、刑法第一三四条の規定により正当な理由がないのにその業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を漏らすことが禁じられている者や、地方公務員や民生委員など刑法以外の法令上いわゆる守秘義務が定められている者についても、法
(注)第二五条に定める通告義務があり、通告を受けた児童相談所等の職員に守秘義務があること等に鑑みれば、通告することは秘密漏示や守秘義務違反に当たるものではないので、その旨周知徹底を図られたい。なお、通告を受けた児童相談所等の職員においては、通告者と虐待等を行っている者の関係等を踏まえ、守秘義務の遵守を含め情報源の秘匿等に十分配慮して対応するよう指導されたい。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=tsuchi&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=9811

(引用者注:法=児童福祉法
 
個人情報保護法については、こちらの記事もあります。